留学生のエンジニア採用が低調であるとの調査結果。
新刊でも触れていることなので、簡単にフォロー。

留学生、特にアジアからの留学生受け入れについては、国も重要性を認識して
いろいろと支援策をとっている。高等教育の質は、競争と多様性によって磨かれることは
この分野におけるアメリカの一人勝ちの状況を見れば明らかだからだ。
グローバリゼーションの進む中、高等教育の重要性はますばかりだ。

と、ここまではいい。問題はここからで、当の日本企業の側がいまひとつ採用に乗り気
ではないのだ。大きく分けて、理由は2点。

まず、留学生と企業の労働観の違いが大きい。
日本企業、特に製造業は保守的な傾向が強く、今でも終身雇用至上主義な風土を
残している企業が少なくない。要するに、新卒で学校推薦で入社して、30年以上
滅私奉公して、最後は「わが生涯に一片の悔いなし」と言ってくれるような
若者が理想なわけだ。
当然、そんな変態は日本人にしかいないので、そういった企業は留学生を敬遠
する傾向がある。

そしてもう一つの理由は、いつも言っている“年齢”問題。
韓国以外のアジア諸国にはそもそも年功序列と言う発想がないので、いくつかの大学を
遍歴したり、あるいは一時的に企業で働いたりして、博士課程なのだけど30歳
なんて人が結構いる。

「学ぶことそれ自体に年齢は関係ない」というのは世界的常識なのだが、ここ日本
は年功序列というまったく別の価値観が支配する国。人間の価値は年齢で決まるのだ。
「終身雇用までは求めない、若い間だけ頑張ってくれればいい」という寛大な企業でも、
さすがに30近い学生を採ることにはアレルギーを感じてしまう。

まあ、要するに受け入れ側の企業内の流動化を図らずに、いくら高等教育、専門教育
の拡充を叫んでも、効果は限定的ということだ。
日本人の高学歴者がフリーターをやっている現実も、根っこは同じである。


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