今週のメルマガ前半部の紹介です。
近年、日本の経営者から「もっと働きたい人は好きなだけ働けるようにもっと規制緩和してほしい」という声が出ています。
【参考リンク】「日本人滅びる」論争、柳井氏発言に賛否 前沢氏、三木谷氏らが見解
以前はエイベックスの松浦さんも同様のことを言っていた記憶があります。
これ、顔出しで問題提起する人以外にもすごく多いです。経営者の半分くらいはそう考えているような印象もあります。
ただ、人事制度というアングルから眺めると、また別の風景も見えてきます。
はたして規制緩和すれば日本人はまた高度成長期のようにバリバリ働くようになるのか。そもそも、日本人のやる気をそいでいるものとはなんなのか。
いい機会なのでまとめておきましょう。
経営者が「規制のせいで社員が自由に働けない」と考えるメカニズム
結論から言えば、後述するように規制がホワイトカラー的な働き方を阻害しているというのは事実です。むしろ真面目に効率的に働くほど損をする仕組みになってしまっています。
ただ、現実問題としては人事制度の欠陥の影響の方が非常に大きいというのが筆者のスタンスです。
これまでもたびたび言及してきましたが、日本企業の年功序列制度では、出世競争はだいたい40歳前後で終了します。
そこから部長→本部長みたいに出世競争が続く人ももちろんいますが、それは非常に少数派で、大半の人間は打ち止め。
頑張っても頑張らなくても大して給料が変わらないことが常態化します。ちなみに筆者はその状況を“消化試合”と呼んでいます。今の中日-ヤクルト戦みたいなもんです。
この状況は数字にもはっきりと出ていて、40~44歳は全体でも最も伸び率が低く、大手にいたっては35~55歳は実はマイナスだったりします(23年度調査)。
【参考リンク】変わる働き方、賃金配分に変化 大企業の中堅社員が減少
こういう状況になるとバリバリ働く人は少数ですね。大半の人間は「最低限言われたことだけをやり、新しいことに挑戦はしない」ようになるものです。人間だもの。
大手日本企業の平均年齢はどこも40代が普通です。つまり、会社によっては過半数の人間が消化試合モードで言われたことだけやっている状態なわけです。
すると、ちょっと普通ではありえないようなことが頻発するようになります。
たとえばある会社にそこそこ大きな商談を持っていってもなんだかよくわからない理由でたらいまわしにされた挙句に返信が来なくなる→後から持ち込まれた会社の社長がそれを知ってブチギレ、みたいな話はよく聞きます(苦笑)
業務プロセスに問題が?担当のケアレスミス?そういう見方も出来るんでしょうが、本質は部署単位で消化試合やってるところが複数あるという点でしょう。
じゃあ処方箋としてはどうすべきか。
これはもう単純に「40歳以降は頑張ったってなんにも報われないだろう」という報酬制度を抜本的に見直す以外にないんですね。
具体的には年功賃金からジョブ型に見直す、賞与の成果分を大きく引き上げる等etc……
要するに、年齢問わずバリバリ働けば働くだけ報われる制度を導入することです。
そういう意味では、近年増えつつある「ジョブ型に移行する企業」は、ちゃんとポイントを押さえていると言えます。
「役職定年を廃し、役割に応じて個別に処遇を決めます」という企業も対象は限定的ながら正しい方向を向いていると言えるでしょう。
【参考リンク】「役職定年」を廃止する日本企業が増えた理由
ただし。そうした改革は非常に手間がかかって面倒なのも事実です。特に率先して旗を振らないといけないはずの管理部門からすると、ともすれば先送りしがちになる課題だったりします(まあそういう意味では人事部門そのものも“消化試合”の呪いにかかっているのかも)。
で、そういうタイミングで、先ほどみたいにブチ切れた社長が怒鳴り込んできたらどうなるか。
「なんで最近の社員は昔みたいにバリバリ働かないんだ」
「はい、実はみんな40過ぎると消化試合でやる気なくなってるんすよ。ホントはジョブ化して何歳からでも挑戦できる風土に変えてかないといけないんですけど、めんどくさくて(苦笑)」
なんて口が裂けても言えません。そこで、たいていはこんな感じでお茶を濁すわけです。
「いえ、今は働き方改革だなんだとうるさい時世でして、みな昔のようには働けないのですよ」
結果、規制に怒りの矛先を向けてしまっている経営者は結構多い印象があります。
とここまで読んでもよくわからないという人は、頭の中で自身の職場をイメージしてみてください。
「ボス!規制なんて無視して俺にもっともっと働かせてください!」って言ってる熱血社員と、
「もうさ、新しいことはいいから、ちゃっちゃっとルーチンワークだけこなして帰ろうよ」と考えてる中高年、どっちが多いですかね?
ちなみに筆者は、前者は会ったこと無いですが後者は数えきれないほど知ってますね。
繰り返しますが、筆者も現状の日本は規制があまりにも多すぎて企業の経済活動を阻害しているなとは感じています。特に解雇規制、労働時間に関する規制など。
ただ企業サイドがやることやってない点も多々あって、ことに「40代以降の社員の消化試合問題」は、とりあえず自社でなんとかすべき問題だろうというのが筆者のスタンスです。
以降、
仮に氏の言うように政府が規制だけ外したらどうなるか
従業員がどん欲に成果を追求する組織
※詳細はメルマガにて(夜間飛行)
Q:「学歴ロンダリングって意味あるんでしょうか」
→A:「理系なら腹くくって勝負、文系なら肩書+αくらいと割り切りましょう」
Q:「2つの内定、どちらにいくべき??」
→A:「刺激が足りないと思ったら思い切って環境を変えるのも手です」
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・夜間飛行(金曜配信予定)
近年、日本の経営者から「もっと働きたい人は好きなだけ働けるようにもっと規制緩和してほしい」という声が出ています。
【参考リンク】「日本人滅びる」論争、柳井氏発言に賛否 前沢氏、三木谷氏らが見解
以前はエイベックスの松浦さんも同様のことを言っていた記憶があります。
これ、顔出しで問題提起する人以外にもすごく多いです。経営者の半分くらいはそう考えているような印象もあります。
ただ、人事制度というアングルから眺めると、また別の風景も見えてきます。
はたして規制緩和すれば日本人はまた高度成長期のようにバリバリ働くようになるのか。そもそも、日本人のやる気をそいでいるものとはなんなのか。
いい機会なのでまとめておきましょう。
経営者が「規制のせいで社員が自由に働けない」と考えるメカニズム
結論から言えば、後述するように規制がホワイトカラー的な働き方を阻害しているというのは事実です。むしろ真面目に効率的に働くほど損をする仕組みになってしまっています。
ただ、現実問題としては人事制度の欠陥の影響の方が非常に大きいというのが筆者のスタンスです。
これまでもたびたび言及してきましたが、日本企業の年功序列制度では、出世競争はだいたい40歳前後で終了します。
そこから部長→本部長みたいに出世競争が続く人ももちろんいますが、それは非常に少数派で、大半の人間は打ち止め。
頑張っても頑張らなくても大して給料が変わらないことが常態化します。ちなみに筆者はその状況を“消化試合”と呼んでいます。今の中日-ヤクルト戦みたいなもんです。
この状況は数字にもはっきりと出ていて、40~44歳は全体でも最も伸び率が低く、大手にいたっては35~55歳は実はマイナスだったりします(23年度調査)。
【参考リンク】変わる働き方、賃金配分に変化 大企業の中堅社員が減少
こういう状況になるとバリバリ働く人は少数ですね。大半の人間は「最低限言われたことだけをやり、新しいことに挑戦はしない」ようになるものです。人間だもの。
大手日本企業の平均年齢はどこも40代が普通です。つまり、会社によっては過半数の人間が消化試合モードで言われたことだけやっている状態なわけです。
すると、ちょっと普通ではありえないようなことが頻発するようになります。
たとえばある会社にそこそこ大きな商談を持っていってもなんだかよくわからない理由でたらいまわしにされた挙句に返信が来なくなる→後から持ち込まれた会社の社長がそれを知ってブチギレ、みたいな話はよく聞きます(苦笑)
業務プロセスに問題が?担当のケアレスミス?そういう見方も出来るんでしょうが、本質は部署単位で消化試合やってるところが複数あるという点でしょう。
じゃあ処方箋としてはどうすべきか。
これはもう単純に「40歳以降は頑張ったってなんにも報われないだろう」という報酬制度を抜本的に見直す以外にないんですね。
具体的には年功賃金からジョブ型に見直す、賞与の成果分を大きく引き上げる等etc……
要するに、年齢問わずバリバリ働けば働くだけ報われる制度を導入することです。
そういう意味では、近年増えつつある「ジョブ型に移行する企業」は、ちゃんとポイントを押さえていると言えます。
「役職定年を廃し、役割に応じて個別に処遇を決めます」という企業も対象は限定的ながら正しい方向を向いていると言えるでしょう。
【参考リンク】「役職定年」を廃止する日本企業が増えた理由
ただし。そうした改革は非常に手間がかかって面倒なのも事実です。特に率先して旗を振らないといけないはずの管理部門からすると、ともすれば先送りしがちになる課題だったりします(まあそういう意味では人事部門そのものも“消化試合”の呪いにかかっているのかも)。
で、そういうタイミングで、先ほどみたいにブチ切れた社長が怒鳴り込んできたらどうなるか。
「なんで最近の社員は昔みたいにバリバリ働かないんだ」
「はい、実はみんな40過ぎると消化試合でやる気なくなってるんすよ。ホントはジョブ化して何歳からでも挑戦できる風土に変えてかないといけないんですけど、めんどくさくて(苦笑)」
なんて口が裂けても言えません。そこで、たいていはこんな感じでお茶を濁すわけです。
「いえ、今は働き方改革だなんだとうるさい時世でして、みな昔のようには働けないのですよ」
結果、規制に怒りの矛先を向けてしまっている経営者は結構多い印象があります。
とここまで読んでもよくわからないという人は、頭の中で自身の職場をイメージしてみてください。
「ボス!規制なんて無視して俺にもっともっと働かせてください!」って言ってる熱血社員と、
「もうさ、新しいことはいいから、ちゃっちゃっとルーチンワークだけこなして帰ろうよ」と考えてる中高年、どっちが多いですかね?
ちなみに筆者は、前者は会ったこと無いですが後者は数えきれないほど知ってますね。
繰り返しますが、筆者も現状の日本は規制があまりにも多すぎて企業の経済活動を阻害しているなとは感じています。特に解雇規制、労働時間に関する規制など。
ただ企業サイドがやることやってない点も多々あって、ことに「40代以降の社員の消化試合問題」は、とりあえず自社でなんとかすべき問題だろうというのが筆者のスタンスです。
以降、
仮に氏の言うように政府が規制だけ外したらどうなるか
従業員がどん欲に成果を追求する組織
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Q:「学歴ロンダリングって意味あるんでしょうか」
→A:「理系なら腹くくって勝負、文系なら肩書+αくらいと割り切りましょう」
Q:「2つの内定、どちらにいくべき??」
→A:「刺激が足りないと思ったら思い切って環境を変えるのも手です」
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