今週のメルマガ前半部の紹介です。
保険金不正請求問題をはじめ、街路樹の違法伐採、パワハラ、水増し修理など、その後も続々と不祥事発覚中の中古車販売業最大手ビッグモーターですが、とりあえず(来年再来年入社の)新卒採用を見送ることに決めたとのこと。
【参考リンク】ビッグモーター 来年と再来年春の新卒採用活動を停止
以前から述べているように、終身雇用を建前とする大手日本企業では、入り口の新卒採用が唯一の雇用調整手段です。
そこを見れば会社の状況はなんとなくわかるものなんですね。
新卒採用を見送る時、その企業は何を考えているのか。そして将来何が起こるのか。いい機会なのでまとめておきましょう。
日本企業にとって新卒採用は重要な意味がある
きっと多くの人は、新卒採用についてこう考えているはず。
「経営環境が悪化した時は減らして、景気が良くなったらその分増やせばいいだけだろう」
確かに、昔からジョブ型(職務給)でやっている企業の人事なんかはそれに近い感覚です。「人を採る」というアクションに文字通りの意味しかないからです。
でも、年功序列型でそれなりに規模の大きな組織だと、事はそう単純ではありません。
そういう組織の新卒採用というのは「新人を採る」ことにくわえて、年功序列という精緻な機械を止まることなく動かし続けるというミッションが含まれているからです。
たとえば、幹部候補選抜の重要な節目である課長選抜の候補が「〇〇年から5年間までの入社者とする」というような区切りを設けている企業の場合。
その期間に2年間新人を採っていない年があると、課長候補が全然足りてない状態になってしまうわけです。課長以外の主任とか部長選抜に際しても、全部おなじような不都合が起きるわけです。
だって、勤続年数で人の価値を評価する年功序列ですから。
【参考リンク】「40代前半がいない」人手不足を嘆く旭化成社長の発言に就職氷河期世代の不満爆発
さらに言えば、人材育成という点でも影響は無視できません。日本企業は現場に放り込んで先輩の横で仕事を覚えさせるOJTが主流ですが、人が入ってこないとその流れも途切れてしまうわけです。
たとえば今の建設業は業界全体が30~40代が異常にすくなく、業界全体で技能継承に失敗しているという意見もあるほどです。
まあ要するに、景気に合わせて1割ほど上下に動かすのはしょうがないですけど、3割以上減らしたりすると確実に将来に禍根を残すということです。
そしてそれは「年功序列が維持できなくなる」とか「人材が育成できていない」という形となって必ずあらわれるということです。
そう考えると、2年連続での新卒採用凍結を決めたビッグ社は、そんな将来のことなんかより今を生き残ることに必死だということは明らかでしょう。それなりの経営危機を迎えていると言っていいと思います。
ただし。すでに内定持ってますという学生も早く逃げるべきかと言われれば、とりあえずそこまでの心配はないだろうというのが筆者のスタンスです。
同社の現状は10カウントで言えばせいぜいカウント5か6くらい。本当にピンチ(カウント9くらい)の会社なら「内定取り消し」をかけてくるはずだからです。
内定取り消しというのは実質的に雇用契約が成立した後のクビみたいなものですから、禁じ手中の禁じ手、訴えられたらまず勝てないものなんですね。
それをまだ出していないということは、同社はまだまだ戦える、復活の手ごたえはあると(少なくとも経営陣は)考えている証拠でしょう。
余談ですが、たまに新卒採用の内定取り消しを出した企業が叩かれてたりしますが、筆者は上記の理由から、むしろ学生が入社前に危ない会社からリリースされて良かったんじゃないかと考えています。
そういう会社は悪徳というより、どっちかというと「我々は艦と運命を共にするが、若い諸君は生き残って再起を図ってほしい」くらいのスタンスでしょう。
以降、
企業のアクションでわかる経営危機の度合いと未来
ビッグモーターおよび同社内定ホルダーへのアドバイス
※詳細はメルマガにて(夜間飛行)
Q:「円のレートがずっと高かった90年代も給料は安かった?」
→A:「97年頃に一瞬上向いただけですね」
Q:「非常に魅力的だが有期雇用への転職はアリ?」
→A:「普通は有期雇用の方が高くなるはず。なので自分なら……」
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・夜間飛行(金曜配信予定)
保険金不正請求問題をはじめ、街路樹の違法伐採、パワハラ、水増し修理など、その後も続々と不祥事発覚中の中古車販売業最大手ビッグモーターですが、とりあえず(来年再来年入社の)新卒採用を見送ることに決めたとのこと。
【参考リンク】ビッグモーター 来年と再来年春の新卒採用活動を停止
以前から述べているように、終身雇用を建前とする大手日本企業では、入り口の新卒採用が唯一の雇用調整手段です。
そこを見れば会社の状況はなんとなくわかるものなんですね。
新卒採用を見送る時、その企業は何を考えているのか。そして将来何が起こるのか。いい機会なのでまとめておきましょう。
日本企業にとって新卒採用は重要な意味がある
きっと多くの人は、新卒採用についてこう考えているはず。
「経営環境が悪化した時は減らして、景気が良くなったらその分増やせばいいだけだろう」
確かに、昔からジョブ型(職務給)でやっている企業の人事なんかはそれに近い感覚です。「人を採る」というアクションに文字通りの意味しかないからです。
でも、年功序列型でそれなりに規模の大きな組織だと、事はそう単純ではありません。
そういう組織の新卒採用というのは「新人を採る」ことにくわえて、年功序列という精緻な機械を止まることなく動かし続けるというミッションが含まれているからです。
たとえば、幹部候補選抜の重要な節目である課長選抜の候補が「〇〇年から5年間までの入社者とする」というような区切りを設けている企業の場合。
その期間に2年間新人を採っていない年があると、課長候補が全然足りてない状態になってしまうわけです。課長以外の主任とか部長選抜に際しても、全部おなじような不都合が起きるわけです。
だって、勤続年数で人の価値を評価する年功序列ですから。
【参考リンク】「40代前半がいない」人手不足を嘆く旭化成社長の発言に就職氷河期世代の不満爆発
さらに言えば、人材育成という点でも影響は無視できません。日本企業は現場に放り込んで先輩の横で仕事を覚えさせるOJTが主流ですが、人が入ってこないとその流れも途切れてしまうわけです。
たとえば今の建設業は業界全体が30~40代が異常にすくなく、業界全体で技能継承に失敗しているという意見もあるほどです。
まあ要するに、景気に合わせて1割ほど上下に動かすのはしょうがないですけど、3割以上減らしたりすると確実に将来に禍根を残すということです。
そしてそれは「年功序列が維持できなくなる」とか「人材が育成できていない」という形となって必ずあらわれるということです。
そう考えると、2年連続での新卒採用凍結を決めたビッグ社は、そんな将来のことなんかより今を生き残ることに必死だということは明らかでしょう。それなりの経営危機を迎えていると言っていいと思います。
ただし。すでに内定持ってますという学生も早く逃げるべきかと言われれば、とりあえずそこまでの心配はないだろうというのが筆者のスタンスです。
同社の現状は10カウントで言えばせいぜいカウント5か6くらい。本当にピンチ(カウント9くらい)の会社なら「内定取り消し」をかけてくるはずだからです。
内定取り消しというのは実質的に雇用契約が成立した後のクビみたいなものですから、禁じ手中の禁じ手、訴えられたらまず勝てないものなんですね。
それをまだ出していないということは、同社はまだまだ戦える、復活の手ごたえはあると(少なくとも経営陣は)考えている証拠でしょう。
余談ですが、たまに新卒採用の内定取り消しを出した企業が叩かれてたりしますが、筆者は上記の理由から、むしろ学生が入社前に危ない会社からリリースされて良かったんじゃないかと考えています。
そういう会社は悪徳というより、どっちかというと「我々は艦と運命を共にするが、若い諸君は生き残って再起を図ってほしい」くらいのスタンスでしょう。
以降、
企業のアクションでわかる経営危機の度合いと未来
ビッグモーターおよび同社内定ホルダーへのアドバイス
※詳細はメルマガにて(夜間飛行)
Q:「円のレートがずっと高かった90年代も給料は安かった?」
→A:「97年頃に一瞬上向いただけですね」
Q:「非常に魅力的だが有期雇用への転職はアリ?」
→A:「普通は有期雇用の方が高くなるはず。なので自分なら……」
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