今週のメルマガ前半部の紹介です。

どうも。減税派の城繁幸です。
先週、経団連会長がインタビューで「消費税を含めた増税論議から逃げるな」と提言し、話題となりました。



【参考リンク】増税議論、逃げるな 経団連会長がめざす社会像


まあ普通のビジネスパーソンからすれば当たり前すぎる内容なんですが、SNS上での上記インタビューに対するコメントを見ると反発の声も多い印象です。特に“減税派”を名乗るグループの反発が目につきますね。

彼らが頑なに消費税を嫌がる理由とはなんでしょうか。また、サラリーマンは彼らとどういった距離感で接するべきなんでしょうか。

いい機会なのでまとめておきましょう。


「増税さえ許さなければ政府は勝手に無駄を減らす」論は周回遅れの議論


筆者自身は上記の通り、どちらかというと小さな政府支持なので広い意味では減税派です。

ただ、最近目にするようになった「とにかくあらゆる増税に反対さえすれば、政府は無駄を削減して結果的に小さな政府が実現するのだ」という主張には強い違和感を覚えます。

減税って無駄を削減した結果として実現するものであって、逆が成り立つわけではないからです。
そもそも、そういうこと言う人は組織というものが全然わかってないですね。

大企業もそうですが、政府が非効率なのは全体を把握している人がおらず、それぞれの省庁、部署がそれぞれの見える範囲で活動しているからです。

だから、たとえばAIにすべてのデータをつっこんで最も効率的な予算の使い方を決めてもらい、国民が無条件でそれに従うのであればテキパキ無駄も削減され小さな政府になるんでしょう。

でも、現状のまま生身の人間にやらせても、それぞれがとりあえず目に付くところ、削りやすいところから手を付けるしかないわけです。

たとえば非正規公務員を薄給で使い倒すほど金が無い一方で、わけのわからないNPOに金をばらまいている状況が併存しているのはそういう理由からですね。

確かにお金は余っている(ところもある)のかもしれないですが、政府を飢えさせただけでそれが上手く解消される保証なんてまったくないわけです。

そういう意味では、政府というのは「無駄をなくせ」と命令しても、そのしわ寄せがどこに行くのかやってみるまでわからないブラックボックスみたいなものなんですね。

では、日本というブラックボックスに「とにかく増税せずに無駄をなくせ」という指示だけ与えたらどういう結果になるのか。

プライマリーバランスの黒字化を先送りし続け、債務残高がGDP比250%になるまで毎年大赤字を垂れ流し続けている日本は、政府を飢えさせる実験を続けてきたようなものですから。

というわけで答え合わせ。まずは、みんな大注目の社会保障給付はこんな感じです。


【参考リンク】社会保障費、40年度6割増の190兆円


ちなみに、上記試算は2018年のものですが、今年既に20年近く前倒しでGDP比25%に到達しています。「飢えさせれば減る」どころかむしろ増えるスピードが加速していることになります。



ついでに言うと、もう一つ増えているものもあります。それはサラリーマンが天引きされる社会保険料です。


【参考リンク】社会保険料率30%時代 過去最高、現役の負担余地少なく


要するに、日本というブラックボックスに「税金上げるな、無駄なくせ」という指示だけ与えると、高齢者の社会保障給付は減るどころかむしろ増える一方で、サラリーマンの手取りは猛烈に減るというオチなわけです。

言い換えるなら、日本は「サラリーマンの手取り=無駄」と判断していることになります。

「俺や俺の家族の生活費が無駄とはなんだ!」と怒る人も多そうですが、しょうがないじゃないですか。それがこの30年間の結果なんですから。

我々にできることはその残酷な現実を踏まえた上で適切にふるまうことだけです。ではどうすべきかと言えば、公平な負担を要求し、「税は財源じゃない」だの「増税さえ潰せば無駄は減る」だのといった妄言とは距離を置くことですね。

消費税は高齢者も無職も自営業も公平に負担するわけで、当然ながらもっとも有力な選択肢として議論のテーブルに乗せるべきでしょう。

あ、ちなみにこれは筆者だけが言ってる話ではなくて、ある程度リテラシーのあるビジネスパーソンなら基本の“き”だと思います。

それは連合が一貫して消費税にもインボイスにも前向きな姿勢であることからも明らかでしょう。


【参考リンク】連合会長「消費減税すべきとの考え方ない」


【参考リンク】連合・芳野会長、インボイス「着実に導入すべき」


少なくともプレイヤーとして現実の負担議論に参加している彼らの中には「すべての増税に反対しとけば無駄は減る」という考えは1%も無いということです。

さて、ここで一つ疑問が残ります。

上記のような現実を無視しつつ、今さら周回遅れの「増税さえ潰せば無駄は減る」論を主張している人達って何なんでしょうか。

シンプルに考えるなら「この30年、ほぼ一貫して社会保険料だけが上がり続けた」というオチがまんざらでもないと感じている人達でしょう。

そう、社会保険料を天引きされる立場におらず、恐らく消費税くらいしか負担していない人達です。

ここではさらしませんけど、興味ある人はtwitterのプロフに「減税派」とか書いてる人を検索してみてください。

前回紹介した「匿名、仕事の話は一切しない、社会保険料の『し』の字も出さずに平日昼間から政府にタカる話ばかりしている」ようなどうしようもないのがいっぱい釣れるはずです。

まあ(品があるかないかは別にして)彼らがそういう主張をすること自体は合理的ではありますね。自分たちの負担は抑えたまま、自分の親は世界一手厚い社会保障を仕送りゼロ円でも受けさせられるわけですから。

でも「サラリーマンで減税派です」みたいな人はどうなんでしょう。そもそも、経団連と連合に逆張りして「SNS上にしかいない主に匿名さんのグループ」に合流する感覚が筆者には全く理解できませんけどね。

というわけで、堅気のサラリーマンは減税派とは距離を置きつつ、公平な負担の実現を正当な権利として要求し続けましょう。

消費税の引き下げはむしろ社会保険料引き上げ圧力になるので断固反対を、むしろ消費税増税とセットで高すぎる社会保険料の引き下げを要求するのが筋でしょう。

そう、それはまさに経団連会長の言わんとする「消費税を含めた増税論議から逃げるな」そのものなんですね。

なーんて書くと「消費税増税を容認すれば社会保障の見直しは永遠に実現しないじゃないか!」なんていう人達もいそうですが、そういう人達には「消費税引き上げに反対したって社会保障の見直しなんて実現しなかったし、社会保険料はするする上がったじゃないか」と反論してあげてください。

繰り返しますが、状況に応じて消費税引き上げを選択し、社会全体で負担することで自分たちの負担を抑制しようとするのは、サラリーマンの当然の権利です。

無職や自営業や(経費調整しまくって所得抑えてる)中小の経営者が本来負うべき負担まで背負う余裕は、もうサラリーマンにはありませんから。






以降、
「処理水放出と同じで、限界に達するまで放置すべき」論もやっぱりサラリーマンは同調すべきではない
日本の社会保障がここまでガバガバになったのは高齢者に負担感が無かったから







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Q:「役員を目指さない技術系サラリーマンが中間管理職になる意義は??」
→A:「管理職とヒラの立ち位置が急速に見直されつつあるのは事実です」



Q:「事務職でAI普及後も安泰な仕事とは?」
→A:「とりあえず漫然とこなしているだけの仕事はアウトでしょう」






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