教育を無償化さえすればみんな高収入エリートになれるの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。

先日、東京都が突如として高校の授業料無償化を打ち出し大きな話題となりました。
正確に言うと国の高等学校等就学支援金制度にある所得の要件を外し、東京は私立も含めて実質無償化するということですね。

いやあ、都知事選が近づくと太っ腹になりますね(苦笑)

この動きは余裕のある自治体を中心に全国に波及するでしょう。「東京はタダなのにうちの自治体はなにしてんだ」って話になりますから。



【参考リンク】小池都知事 高校授業料実質無償化 来年度から所得制限撤廃調整


また、同じタイミングで国も大学無償化政策を打ち出してきました。



【参考リンク】多子世帯の大学無償化、対象は?額は?第1子が扶養外れると対象外も


そもそも3人以上の子供がいる世帯自体が全体の3%以下で、そこに扶養の条件が付くためきわめて限定的な制度だという指摘もありますが、高校無償化を見てもわかるように、こういうのは最初の一穴からだんだん広がっていくものなんですね。

で、さっそくこういうこと言い出してる政治家もいます。





無償化というと一見するとありがたい話にも見えますが、それによって何が起こるんでしょうか。

そもそも「大学で学んだことが日々の仕事ですごく武器になってます」という人はどれくらいいるんでしょうか。いい機会なのでまとめておきましょう。


教育無償化で労働市場のミスマッチは加速する


結論から言うと、無償化というのは様々な歪みを生じさせてしまうので筆者は基本的に反対です。
これはすでにいろいろな立場の人が指摘していますね。

たとえば高校教育界隈の人たちは「私立高へ進学を促す歪み」について指摘している人が多いです。

従来、勉強が得意ではない、あるいは勉強する気が無い子供は、進学するにしても工業高校や商業高校のような手に職のつく学校に進学するのが主流でした。

でも私立にタダで行けるし入学後も資格の勉強とかやらなくても卒業できるなんてなったらどうなるでしょうか。

私立でも人気校以外の微妙なところなら専願(合格すれば必ず入学しますという約束付き)した時点で事実上の内定出すでしょうし、親も「父さん母さん、ボク、私立の〇〇高校いって勉強したいよ」って言われて悪い気はしないでしょう。無料だし。

勉強が苦手だったりやる気のない人間が緩い私立高校に3年間通っても金と時間をドブに捨てるだけなんじゃないでしょうか。

あと格差という点でも歪みは生じます。百歩譲って公立校にお金出すのは分かりますが、私立校にまで金を出す意味がまったく理解できません。

例えば筆者には私立の小学校に通う子供が二人いて、まあ高校も私立行くでしょうけど、このままだと無料になっちゃうわけですよ。いいんですかねそれって(苦笑)

いや筆者はいいですけど、単身者からみれば単なる独身税でしょう。

そして、筆者の専門である雇用においても深刻な歪みは生じます。それは「人材のミスマッチ」です。

現在、日本ではある種の人材が大量にだぶついています。それは主に「昔に文系の学校を卒業し、会社に与えられた仕事をこなしてきた文系事務職」と呼ばれる人たちです。

特にこれといった芸がなく、大学で学んだこともほとんど覚えてないよという人が大半でしょう。

フォローしておくと別に本人達が悪いのではなくて、事実として彼らはそういう働き方を要求され続け、結果として今はだぶついているということです。

ではどれくらいだぶついているのか。

厚労省の統計によれば一般事務の有効求人倍率はなんとたったの0.35です。サービス職があらかた3.0を超え、建築・土木・測量にいたっては5.69ですよ!(一般職業紹介状況 令和5年9月分より)

イメージでいうと、建設業では5つの求人に対して1人応募があるかないかなのに、事務職では1つの求人に3人入れ食いしてくるようなものです。

さて、先述の「勉強する気はなかったけどタダだから私立高校への進学を決めた子供たち」は、卒業したら何の職に就くんでしょうか。

同様に、今後大学の無償化が進んだとして、ホントは大学なんて行く気が無かったけど進学した若者たちは、どの職に進むんでしょうか。

少なくとも建設業や工場勤務、エンジニアではないでしょう。多くが文系事務職という超絶レッドオーシャンに突入することになる気がします。

「なんで文系って限定するんだ」という人もいるかもしれませんが、タダだから行っとこうというノリの人は少なくとも理系にはいかないでしょう。

「最終的に人手不足の業種に行くことになるんだからいいじゃないか」という人もいるでしょうが、だったら税金使って回り道させる必要はないでしょう。

「教養に費用対効果なんて求めるな!」って人もまれにいますね。その通り!人はなんでも学びたいものを自由に学ぶべきです! ただし、自分の金でね。

自分たちでお金出して進学するならそれで全然かまいません。常に効率よく生きるだけが人生ではないですから。

税金で負担してやってまで、そういう個人にとっても社会にとっても全くメリットのない歪みを生み出すことに何の意味があるのか、という話ですね。





以降、
「とりあえず大学に行った人たち」に何が起こっているのか
ベテランゼネラリストがやっておくべきこと






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Q:「ロスジェネ世代も役職定年からは逃れられない?」
→A:「役職定年見直しはあくまでも一律の引き下げを見直すというものですね」


Q:「トップダウンでむりやり女性管理職を増やすのはNGでしょうか?」
→A:「トップダウンでやらせれば現場は後からついてくる、という思想があるのです」






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毎日8時間働かないといけないの?と思ったときに読む話

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先日、アメリカのZ世代のある告白が世界的に話題となりました。


【参考リンク】「9時から5時まで」の働き方を疑問視するZ世代の主張にある真実

要旨:「9時から5時まで働いたらプライベートでは何もできない。こんな働き方は間違ってる」

「それくらいで音を上げるな」という批判から「いや、実は自分もそう思っていた」という共感の声まで、幅広いリアクションが世界的にわき起こっています(日本人からすると9時5時ってむしろ恵まれてるなあと思う人も多そうですけど)。

彼女の告白はスマホでショート動画見て育ったZ世代特有の単なる甘えなんでしょうか。そもそも、人は何時間働くのが正解なんでしょうか。

いい機会なのでまとめておきましょう。


「フルタイムで働くのはしんどい」と感じるのはキャリアの一丁目一番地


結論から言うと、新人が社会に出てフルタイムで毎日働くのがしんどいというのは、筆者は人として当然の感想だと思います。

筆者自身もそう感じていたし、知る限りの人間はみんなそういう意見でした。逆に「フルタイム最高!」って目輝かせてる奴がいたらそっちの方が怖いですね。

「え?これ一生続けなきゃなんないの?」という疑問は誰もが一度は抱いたものだったからこそ、世界的にバズったんでしょう。

では、みんなどうやってその疑問を乗り越えているのか。

一番多いのは「そんな疑問はきれいさっぱり忘れる」人でしょう。そういうもんだと自分に言い聞かせつつ、与えられた仕事に一生懸命取り組んでいるうちに、最初に抱いた疑問なんてすっかり頭の中から消えていることでしょう。

あとはそのままバリバリ働き続けるもよし。40代以降は手の抜き方を覚えるのもよし。

でも後述するように、何とか努力して、自分なりに疑問に対する答えを見つけている人たちもいます。

自分なりにやりがいを見つけること。自分の希望する場所で働き、希望するキャリアを身に着けること。もちろん馬車馬のように働く人もいますが、どちらかというとそういう人達は40代以降は柔軟に働けている人が多い印象があります。

若手時代に抱いた疑問に対し、各人なりの答えを出すこと。それも一つのキャリアデザインのように思いますね。

そういう意味では、筆者が冒頭のような疑問を抱く若手にアドバイスするとすればこんな感じになるでしょう。

「その疑問は恐らく正しい。でも正しいからこそ、まずはしっかり働いて会社と交渉できるだけの専門性を身に着け、疑問に対する答えを見つける地力を身に着けて欲しい」


余談ですけど、コロナの時に在宅勤務をした人たちのアンケート調査って色々な会社や組合がやっているんですが、総じて高評価なんですね。


【参考リンク】生産性本部 在宅勤務の満足度最高に 働く人の意識調査公表


どういうことかというと「通勤しなくても、フルタイムで働かなくてもどうとでもなる」という事実に多くの人が気づいたからでしょう。

若手時代に抱いた疑問を久々に思い出した人も多いんじゃないでしょうか。人生100年時代、今から答えを探しにいっても遅くはないでしょう。







以降、
若手が絶望的になるのは「先が見えないから」
人は一日何時間働くのが正しいのか







※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「組合の加入率を上げるには?」
→A:「地道に存在感を高めていくことですね」



Q:「内定者の8割に辞退されたのですが……」
→A:「大手が秋以降も引っこ抜きにまわってますね」







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柔軟な働き方でどうして業績が向上するの?と思ったときに読む話

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先日、「柔軟な働き方を認めている企業はそうでない企業より業績が4倍伸びている」との調査結果が話題となりました。


【参考リンク】柔軟な働き方、出社型企業より業績伸び4倍 米民間調査


以前から労働組合などが実施するアンケートで「従業員の満足度、効率共に向上した」といった調査はありましたが、企業横断的にこうした結果が出されるのは珍しいですね。


【参考リンク】ヤフー、“無制限リモートワーク”で新しい働き方へ


なぜ柔軟な働き方が業績向上につながるのか。そもそも柔軟な働き方とはどういったものなのか。いい機会なのでまとめておきましょう。


柔軟な働き方に必要な土台とは


そもそも柔軟な働き方の定義とは何でしょうか。「フレックス勤務や裁量労働が導入されている会社のことだ」という人もいるでしょう。

でもフレックスや裁量労働があるにはあるけどほとんど誰も利用していなかったり、“暗黙の出社時間”が決まっていて強い同調圧力があるような会社は(とくに日本企業には)いっぱいありますよね(苦笑)

少なくともフレックスや裁量労働が導入されているだけでは十分とは言えないでしょう。

では、柔軟な働き方とはなにか。筆者なら少なくとも以下の2点が土台としてきっちり整備されているかどうかで判断するでしょう。


・業務範囲の明確化

まず、自身が上司となって部下にリモートワークを指示するシチュエーションを想像してみてください。

なにはともあれ必要なことは「各人の業務範囲をきっちり明確化すること」なのは明らかでしょう。
大部屋で机を並べ同じ時間に仕事をするから、業務範囲は曖昧で済んでいるんです。

でも別な場所で時間帯もそれぞれ切り離して仕事することを認めるのなら、当然あらかじめ仕事内容を切り分け、ミッションを明らかにしておく必要があります。


・裁量の委譲

業務範囲を明確に切り分けても、働きぶりから仕事の進め方まですべて会社が管理していれば柔軟な働き方とは言えません。

「フレックスで出勤時間ずらす時は要事前申請」
とか
「在宅勤務は一週間前までに上司に申請すべし」
とかやってる会社は、柔軟な働き方とはとても言えないでしょう。

仕事する場所、時間、そして業務プロセスまで個人が自由に設定できるからこそ柔軟な働き方であるわけで、裁量を個人に委譲することも不可欠となります。


上記2点がしっかり土台として機能していれば、とりあえず緊急事態宣言のようなフルリモートにもそつなく対応できるはずです。

ただし、柔軟な働き方として長期的に業績の向上にまでつなげるのであれば、あともう一点ほしいものがあります。


・きちんとした成果評価制度

担当業務が明確化されても、リモート勤務が認められても、それだけでは個人の働き方が真に柔軟になるわけではありません。

たとえば上司であるあなたが「やっぱり実際の働きぶりを見て評価したい」とか「自分はいっぱい残業してくれる人間が好きだ」とか言ったとします。

部下たちはあなたの顔色をうかがいだし、上記制度は徐々に形骸化し、1年もたつと以前の「なんとなく職場にいないといけない同調圧力」が復活していることでしょう。

働きぶりとか残業時間といったアナログな要素ではなく、業務範囲を明確化し、それに対する成果評価をきっちり機能させる。

そこまでやって柔軟な働き方は本当の意味で実現するというのが筆者のスタンスですね。

逆に言うと「リモートワークやってみたけどかえって効率が悪くなっただけだったよ」と言ってる会社って上記のポイントにまったく手を付けてない会社とみてほぼ間違いないです。

従業員をオンラインで監視するようなソフトを導入して、場所こそ違えど同じ時間で働けるオンラインのオフィスみたいなものをこしらえて、今まで通りの働き方を維持してるだけなんですね。

そんなアホな“リモートワークごっこ”にリソース突っ込むんだったら普通に出社したほうがまだマシでしょう(苦笑)






以降、
サルでもわかる、柔軟な働き方で業績が向上する理由
日本人に今もっとも足りないものとは





※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「ドイツを再逆転するには日本は何をすべき?」
→A:「日本人の賃金を上げるにはズバリこれでしょう」



Q:「「みなし残業代」のある会社への転職は危険?」
→A:「一般にみなし残業の方がメリットは多いです」





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実質賃金が下がり続けてるんだけど今後どうなるの?と思ったときに読む話

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インフレが長期化する一方で、日本人の実質賃金の低下が続いています。


【参考リンク】8月の実質賃金 去年同月比2.5%減少 17か月連続のマイナスに

インフレになれば物価にくわえ消費税や所得税も上がるわけで、個人の負担感は半端なく上がっているはず。

岸田総理がまだ増税したわけじゃないのに“増税メガネ”みたいな変なニックネーム付けられる背景には、そういう構図があるんでしょう。

庶民から見ればインフレも増税も同じというわけですね。

なぜ日本人の賃金は下がり続けるのでしょうか。そしてどこまで下がり続けるんでしょうか。いい機会なのでまとめておきましょう。


インフレで泣く人笑う人


最近めっきりみかけなくなりましたが、10年くらい前にはこんなこと真顔で言ってる人達がいっぱいいましたね。

「悪いのはデフレ。インフレになれば賃金も上がる」

今でこそ「そんなわけないだろ!」と怒る人も多そうですが、実はこれ自体は正しいです。

というのも「賃上げしてしまうと後でなかなか下げられない」という特殊事情の強い日本では、賃上げに対して経営側は常に保守的、石橋を叩いて渡るスタンスです。

「ホントはもっと賃上げしてやりたいけど、不況になったら払いきれる自信がないから」という理由で、賃上げをためらう企業がほとんどだと思います。

でも、インフレなら話は変わります。多少上げすぎたところで数年経てばあるべき水準におちつくわけですから。

「石橋をたたいて渡る」から「少々やりすぎくらいがちょうどいい」にマインドが変わるわけです。これは大きいですね。

ただし。これには条件があって、すべての人がそういう扱いに変わるわけではありません。具体的には以下のような人材だけが対象となります。

・会社から見て非常に優秀で、ほっておくと流出しかねない人材

「本当はもっと払ってやりたいけど先のことを考えると中々賃上げできない、でもいつ転職されるかとても心配だ」と会社から心配されているようなタイプですね。

そういう人にとっては確かにインフレは賃上げの追い風になるでしょう。

一方で、それとはまったく状況の異なる人たちもいます。それはこんな人たちです。

・会社から見てそもそも給料に見合ってない人、いなくなっても全然困らない人

インフレだからって、既に給料分の仕事してない人を賃上げする意味なんてありません。いなくなっても困らない人の帰属意識を賃上げで高めようなんて誰も思いません。

むしろ普通の会社なら、インフレはいらない従業員の賃金を据え置いて実質賃金を下げられる絶好の機会だと考えるでしょう。

ひょっとすると「自分は優秀ではないがお荷物でもない普通の人間だから関係ない」と思っている人も多いかもしれません。

ただ、そういう人も自分で気付いていないだけで、環境の変化によりいつのまにか「給料に見合ってない人」になってしまっている可能性があります。

というのも企業に70歳までの雇用努力を義務付けた高年齢者雇用安定法の改正や伸び続ける社会保険料により、従業員を雇用するコストは年々伸び続けているためです。

実際には会社が賃上げしたいと考える優秀者は少数派で、大多数の労働者は(本人の能力不足、雇用コストの増大などの理由は違えど)実質賃金切り下げのターゲットとなるだろう、というのが、筆者がこれまで何度か指摘してきたことです。

17か月連続で実質賃金が低下中という事実は、現実が大筋で筆者の予測通りに動いている結果のように見えます。

余談ですが、前回は「自分以外の誰かが主役の物語はインチキだ」という話をしました。

「日銀が大活躍するという物語」に期待した人は少なからずいたようですが、ぶっちゃけそういう人って上でいうところの2番目の人でしょう。

というのも、筆者はこの数年で収入の増えたビジネスパーソンをリアルで何人も知っていますが、日銀がどうたら言ってる人は一人も知りませんから。

人生の主役は自分自身なので、自身が大活躍して成功する物語を描きましょう。結局は、それが人生を豊かにする唯一の道なんですね。





以降、
みんなが気づいていない日銀・植田総裁の恐怖のロジック
弱者ほど転職する社会に






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Q:「技術系管理職の役割とは?」
→A:「大卒修士以上で技術面まで含めたマネジメントは難しいのでは」



Q:「第3号被保険者は見直すべきでは?」
→A:「大した話じゃないのでとっとと廃止すべきでしょう」






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ホリエモン動画見てる学生ってバカなの?と思ったときに読む話

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SNSでプチバズってるつぶやきでこんなのがありました。





ツリーまでざっと読んでみた第一印象なんですけど、「最近の若者ってよくわかってるね」ってとこですか(笑)

そう、豊かになるには「自由競争で勝ち上がる」というのが唯一の答えです。一億総中流なんて冷戦下でたまたま実現しただけのバグで、あの頃が良かったなんて老人のたわごとなんで無視しましょう。

皆さんが要求すべきは徹底した規制緩和と自由競争の促進、これだけで十分です。

そもそも学生の人は小泉改革ガーなんて言われてもわからないでしょうけど、小泉政権(2001~2006年)とその時の経済ブレーンの一人だった竹中平蔵氏の時に行われたいわゆる小泉改革のせいで日本が貧乏になったんだ、という主張です。

ホリエモンは直接は関係ないんですが、同時代なので上記のような人からは新自由主義の象徴みたいにみなされてるようです。

まあ単なるアホなんですが、今どきこんなのに引っかかって「いいね」を推す人って2万人もいるんですね(笑)

20年近くたって今さら〇〇ガーと言い続ける人と、それを推す人ってどういうメンタリティをしているんでしょうか。

反面教師としてはいい素材だと思うので、まとめておきましょう。


日本人が貧乏になったのは終身雇用制度と社会保険料の高騰が大きな理由


まず、本当に小泉改革ってそんなに過激だったのかというと、メインは不良債権処理と郵政民営化くらいで、実際の規制緩和というのは実は大してやってないんですね。

特に雇用に関するものは「本丸の正社員に関する規制緩和はほとんど手付かずだった」と、当時の関係者はみな認めています。

少なくとも「あれ以来、日本は勝ち組と負け組に分断された」とか「弱肉強食になった」みたいな社会に影響を与えるようなインパクトは何もないです。

「アメリカの要望で日本を分断するためにそうさせたのだ」って言ってる人が身内にいたら病院に連れて行ってあげてください。



【参考リンク】規制改革20年「社会制度が最後の壁」 宮内義彦氏



あとよく言われるのが「人材派遣業の規制緩和」なんですが、そもそも派遣労働は雇用されて働く賃労働のせいぜい2.5%ほどで、それが多少規制緩和されたところで全体への影響なんてほぼゼロです。「派遣が増えたから日本人は貧乏になった」って言ってる人がいたら頭がおかしい人なので無視しましょう。

また規制緩和の理由も、正社員の労組が「工場を海外移転されたくないので、自分たちのかわりにリスクを負ってくれる働き手が国内で欲しい」と考えたのが最初で、90年代から官民で議論、設計されて実現したものです。

2000年代にぽっと出てきた竹中さんは全然知らない話でしょう。というかそもそも氏は金融・経済財政政策担当で厚労省はタッチしてないため、こういう文脈で名前が出てくる理由が筆者にはさっぱりわかりません。

ではなぜ日本人は貧しくなったのか。新興国にキャッチアップされる中で産業が空洞化したなどの様々な理由がありますが、国内的な要因としてはやはり「終身雇用のコストと社会保険料の高騰」が大きいです。

どういうことかというと、まず会社は大きな人件費という財布を一つ持っていて、そこから従業員にかかるコストを給料も含め全部払っていると想像してください。

定年が55→60→65歳と(年金の都合で一方的に)上げられ続けた結果、そこまで従業員を雇い続けられるよう、企業は(給料を抑えつつ)お金をいっぱい財布に残しておかねばならなくなりました。

また定年の引き上げにともない、新しい仕事についていけなかったり、やる気のなくなった中高年の数は増加し、一説では400万人とも言われています(筆者はもっと多いと考えています)。

彼らの給料も同じ財布から払っているので、全体の賃金水準はさらに押し下げられます。



【参考リンク】日本で「社内失業者」が増え続けている根本理由


そして、高齢化に伴いうなぎのぼりの社会保険料もやはりこの財布から支払われます。

注意してほしいのは、皆さんの給与明細に印刷されている本人負担の保険料はもちろん、実際は会社負担の保険料もやはり同じ財布から支払われているということです。

それって実質本人負担ですよね。で、それも加味すると、サラリーマンの社会保険料負担は30%という恐ろしいことになっているわけです。



【参考リンク】年齢別にみた所得税・社会保険料負担額のリアル


そりゃ貧しくもなるでしょう。

というわけで処方箋としては

「終身雇用のコストを下げる(=正社員の解雇のハードルを下げる)」
「社会保険料を引き下げる(=高齢者の社会保障をカットする+社会保険料を消費税に置き換える)」


ということになります。

たぶん「小泉改革ガー」って言ってる人達の妄想の中では、日本企業はアメリカ並みに年収2千万くらいもらっている正社員と、年収3百万円台でコキ使われている派遣社員が同じくらいいて、それで全体の賃金が下がってるみたいなイメージなんでしょう(でないと辻褄が合わない)。

そういうイメージを持つ人、そういうのを「いいね」しちゃう人って、少なくともマトモな会社で働いた経験はないんじゃないですかね。

実際には、派遣さんなんてほぼ目にすることはない一方で、仕事してるふりをする中高年社員と、天引きされる社会保険料だけがどんどん増え続ける職場というのが、多くの人にとってリアルなのではないでしょうか。





以降、
自分の人生が上手くいかなかったことを誰かのせいにしたい人
SNSはいくつもの物語の語り部であふれている






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Q:「40代以降にハードな実力主義の組織で働くには?」
→A:「40以降にひどい目にあうのは年功序列前提でやってきた人ですね」



Q:「女性に修羅場を経験させろ、はアリ?」
→A:「若い子は“修羅場”って言われてもわかんないと思うんですよね」







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