厚生年金に加入させてもらえるようになったらトクなの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
総選挙で「減税による現役世代の手取り増」を掲げる国民民主党が躍進したことで、負担に関する議論が白熱していますね。

そんな中、厚労省が矢継ぎ早に様々な社会保障改革プランを打ち出してきています。













ほんとどうしちゃったんですかね?特に最後の「パートの社会保険料、会社が肩代わり」なんてヤケクソになってるようにしかみえませんが(苦笑)

まあそれはともかく、やはり一番インパクト大なのは「106万円の壁撤廃」でしょう。週20時間以上働くすべての労働者が厚生年金保険料の天引きが義務付けられることになるためです。

厚生年金の大拡大でこれから何が起こるのか。そして、それが意味するものとは何なのか。いい機会なのでまとめておきましょう。


事業主負担というカラクリ


既に筆者を含めたいろいろな識者が指摘しているように、社会保険料の事業主負担(会社の負担)なるものは幻想で実際にはすべて労働者本人の負担です。

なので本当に厚生年金の対象者が拡大されれば、週20時間以上働くすべての労働者に、新たに18.3%の負担が生まれることになります。





とはいえ実際の負担の現れ方は様々で、だいたい以下のパターンになると思われます。


・全然賃上げがされない会社が増える

筆者が常々言っているように、会社は社会保険料などすべてのコスト込みで人件費を考えています。

大雑把に言うと、普通の正社員なら会社と本人負担分の社会保険料を人件費から払い、残ったお金を本人に支給するイメージです。

だからぶっちゃけ本人負担だろうが会社負担だろうがどっちでもよくて、上記の「パートの社会保険料、会社が肩代わり」という案も、人件費からさっぴかれる分のラベルが“会社負担”となるだけのこと。しょせんは本人負担でしかないということですね。

というわけでパートやアルバイトの人が厚生年金に加入させられると、本人負担分の約10%が天引きされるのは当然ですが、会社負担分はどうするのかという話になります。

会社負担分も人件費から出すという原則からすれば「会社負担分だけ賃下げするから」と言って賃下げするしかないですが、さすがにそれはハードルが高いでしょう。

というわけで一時的に会社の負担は増加することになります。

でも今はインフレなのでさほど心配はいりません。ほっておいても人件費のパイが増えていく企業が大半でしょう。その中で賃上げを抑制しつつ、会社負担分を吸収していくことになると思います。

結果、物価はどんどん上がっていくのに、なぜか全然賃上げされない職場が続出するでしょう。


・ブラック化する職場が増える

会社が一時的にでも負担してくれればまだマシですが、そんな余裕のない会社はどうするか。

たぶんブラック化するでしょう。これまで5人で回していた職場を3人でまわさせる。サビ残や経費の自腹化を通じたコストカット等で、会社負担の増加を吸収するわけですね。

「こんな職場で働けるか!」といって転職すると、今度は最初から「社会保険料の会社負担分を転嫁済みの賃金の求人」がずらりと並んでお出迎えしてくれます。

なので正社員同様、逃げ場のない社会保険料地獄が始まることになるでしょう。

ところで、上記のトレンド、どこかで見覚えがあるぞという人は少なくないはず。

何年経っても微々たる賃上げしかされない職場。社会の幅広い業種に拡大するブラック企業。

そう、それはまさに失われた30年、就職氷河期世代が世に出たころの時代そのものですね。


実はあの時代も、消費税は長く据え置かれる一方で、厚生年金をはじめとする社会保険料はほぼ一貫して増加し続けた時代なんですね。


04-16-14













【参考リンク】厚労省サイトより



つまり企業が賃金を抑制することで一生懸命に社保の負担増を吸収していたわけです。あれと同じことがこれから起こるのかもしれません。

もちろん社会全体が就職氷河期みたいになるなんてことはないです。新たに厚生年金に加入させられるのは全体の一部ですから。

でも対象となる家計は、氷河期よりもっときつくなるんじゃないでしょうか。デフレの当時と違い、インフレの現在、企業は賃金すえおくだけで簡単に本人に転嫁出来ちゃいますからね。

さて、国民民主党は今回の選挙で“賃金デフレ”なるものを克服することを政策のコアに掲げていました。金融緩和一辺倒だったアベノミクスよりも、賃金を正面に据えてきた点は評価できます。

でも上述のように、安易な社会保険料の労使への押し付けがその原因の一つであるわけで、まさか同党は本件には賛成ではないですよね?

賛成の立場だったとしたら、実は手取りを増やすなんてポーズでやってるだけと言われても仕方がない気がしますね。






以降、
連合が適用拡大を支持するワケ
実際の職場で起きること、そして生き残るのは








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Q:「ジョブ型では職種間の異動は原則行われないのでしょうか?」
→A:「原則行われません」



Q:「ヒートアップしている兵庫県知事選、どちらを支持しますか?」
→A:「筆者は中立ですが、あえて言うのであれば……」







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公立校の方が私立進学校より優秀なの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、SNS上でこんな投稿がバズっているのを見かけました。



高校は重要かつ公立校出身者の評価が高いという点は筆者も同意見です。実は昔から人事担当の間ではそうした声は一定数ありますね。

特に理系は地方公立校の評価がおしなべて高い印象があります。

そういえば10年くらい前に某週刊誌から「有名進学校の方が有利って聞いたんですが」という取材があって、「いやそんなこと言ってる人会ったことないですね。逆に地方の公立校出身者の方が評価高いって人ならいますけど」って言ったらボツにされたことありましたね。

カチンときたので勝手に添削してやりましたが(苦笑)

【参考リンク】「やっぱり有名進学校出身の同級生には勝てないなあ」と思ったときに読む話

では、日本企業は公立校出身者のどこを“評価”しているんでしょうか。そして、その風潮は今後も続いていくのでしょうか。

いい機会なのでまとめたいと思います。


JTCが公立校出身者を好むわけ


昔からそうですが、進学校というのはそれぞれがターゲットとする大学受験をゴールとし、最も効率的なカリキュラムを提供しています。

東大や早慶、医学部受験といったゴールに向け、最大限効率化されたツールが揃えられているわけです。

だいたい一年くらい前倒しで学習し、進研模試みたいな一般の共通テストでは1学年上(人によっては2年上も)のテストを受験する学校も多いですね。

普通の公立校の生徒で全国模試受けて偏差値70くらいあったのになぜか東大も早慶もダメでした、みたいなのはこれが原因です。

また有名進学校でなくても都市部在住であれば、それぞれの受験ニーズに対応した塾や予備校という選択肢がいくらでも利用できます。

一方、これが地方公立校だと選択肢なんて日々の授業をこつこつやる以外にほぼないわけです。

東大とか医学部行きたかったら自分で赤本でも買って独学でやる以外にありません。教師に聞いたってそんな問題解けっこないですから。

そういう意味では、学校の成績だけで入学できる学校推薦枠は地方公立校の生徒にとっては非常に重要なルートだったりします。

一方、採用する側の日本企業の現場はどういった環境でしょうか。

メンバーシップ型雇用の日本企業では、採用時点では具体的な配属先は確定しておらず、配属後もローテーションで複数の職を経験する可能性が高いです。

日々の業務も会社都合で上から与えられたものをその都度こなしていくことが求められます。

重要なのは「会社から与えられた業務はなんでもどこででも何時まででもやる」という徹底した受けの姿勢ですね。だから“総合職”っていうんですよ。なんでもやるから。

一々「こんな仕事に意味あるの?」とか「自分の理想とするキャリアとは全然関係ないじゃん」なんて疑問を持っちゃいけないんです。

では、さきの2つの育成ルートで育ってきた人材、どちらがメンバーシップ型の組織にフィットするでしょうか。

最も合理的なプロセスを最短ルートで駆け抜けてきた進学校でしょうか。もちろんそういうタイプが活きる場面もあるでしょう。

でも多くの人事担当は、どこに配属されてどんな仕事を与えられても嫌な顔一つせずにこつこつこなしてくれるのは「授業で教えられた授業をコツコツこなしてそこそこの成績をとってきたバランス型の人材だ」と考えるでしょう。

そういうタイプが多いのが、地方で地域の秀才が集まる公立校ということですね。

要するに、公立校の一見すると非効率で何のためにあるのかわからないようなカリキュラムは、あれはあれで日本型雇用とマッチしているということです。

「古文漢文なんて受験でも生きていくうえでも必要ないぜ!」っていうのはそうかもですが、会社の中には古文漢文並みに意味不明な仕事がいっぱいありますから。






以降、
日本企業の採用基準の変遷
これから企業に評価される人材






※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「採用担当で異業種への転職を検討中です」
→A:「キャリアの今後を考えるといいタイミングでしょう」



Q:「働きながら大学院入学はアリ?」
→A:「上司が言うくらいだからなにがしかの意味はあるんでしょう」





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社会保障ってホントに削っても大丈夫なの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日9日に衆議院が解散され、既に選挙戦がスタートしています。

そんな中、一部野党の公約に「社会保障制度、社会保険料の見直し」がようやく登場したこともあり、SNS上では社会保障制度の見直しを求める声がかつてないほどに強まっています。





SNS上では

社会保障制度改革に積極的な維新、国民民主党
vs
高齢者の票にしか関心がない自民・公明、立民、共産れいわ

といった対立軸が鮮明化し、既存の与野党の線引きがぼやけている印象すらありますね。

一方で地上波の党首討論で「裏金問題」とか延々やってるのみると、社会保障問題を取り上げたくないためだけに自民他とメディアがアリバイ作りしているようにしか見えません(苦笑)

裏金問題ってあれ本気で重要だと思ってる人なんているんですかね?筆者は会ったことありませんけど。

あと大声で追及してた側の大石あきこに(自民以上の額の)“裏金問題”が発覚しても野党もメディアもスルーって、なんかのギャグですか?


【参考リンク】「自民の不記載みたいにしないで」れいわ大石晃子氏「納税せず一緒」指摘の橋下徹氏に反論


そんな中、筆者自身も社会保障の切り下げを主張したところ予想以上の反響がありました。




中には批判的なレスもあるのは当然ですけど、読んでみると「ああこういう人達はこういう勘違いをしてるんだな」と色々と思うところがあったので、今回はまとめて取り上げたいと思います。

どんな思考回路の人がどういう間違いを犯すのか。それって実はキャリアデザインにも通じる話だからです。


社会保障を見直す→もう生きていけない!と発狂する人たちに共通する思考回路


レスを見るとわかるんですが、社会保障制度の見直しに批判的な人というのはだいたい以下の4パターンですね。


1.社会保険料の会社負担分が理解できない

「自分は社会保険料を月10万円天引きされてるけど、それがゼロになってもとても親の面倒は見られないです」

みたいな人ですね。いえ、あなたが実際に負担している社保はその2倍の20万円/月です。

会社はあなたにかかっているコストのすべてを人件費から払うためです。天引きしすぎるとサラリーマンが怒るから、厚労省がその半分に“事業主負担”というラベルを張らせているだけです。


2.毎月の給料としか比較できない

「介護施設に親を入れようと思ったら月50万円はかかります。給料じゃ無理です」みたいな人。

20代から社会保険料は30%、健康保険にかぎってもおよそ10%程度天引きされ続けている点を考えましょう。正社員の生涯賃金が3億円とすると超大雑把に言って3千万円。

そしてそれらは徴収されなければ変な中抜きされることも無いですし、自分で運用も可能です。
全部米株に突っ込めとは言いませんけどインデックス投資やら何やらに分散で積立投資すれば普通に2,3割の益は出るでしょう。

数年分の施設利用料くらい普通にねん出できると思うのは筆者だけでしょうか。

ついでに言えば、親の側もまさか「持ち家も資産もゼロ」なんてことはないでしょうし。なんたって日本の金融資産の4割を握っている世代ですから。


【参考リンク】老後資産「80歳過ぎても1割しか減ってない」実態。なぜ高齢者は資産を取り崩さないのか

百歩譲って「こちとら宵越しの銭は持たねぇ」みたいな毒親だったら縁切って無視してください。自分の生活を犠牲にしてまで親を扶養する義務はありませんから。

余談ですけど中には「自分の月の手取りはたった○○万円だぞ!それでとても親の面倒なんてみれない!」みたいな上記1,2番のハイブリッドもいましたね(苦笑)


3.過去の成功体験でマウント取ってくる人

「自分は年収1千万円以上あったサラリーマンだったけど、介護保険があって助かりました」みたいな人。

君みたいなのがそれまで保険料払ってないのに突然介護保険なんて作って使い倒したらそりゃ下の世代が割を食うのは当然でしょう。

それって要するに「自分は介護保険制度が出来たおかげで楽に食い逃げできました。ごっつぁんです!」って言ってるだけでしょう。論外。


4.「社会保障制度の持続可能性」という観点が無い

あと不思議なのは、筆者は「社会保障制度の廃止」なんて一言も言ってないんですね。っていうかたぶんそんなこと言ってる人なんていないはず。

でもなぜか上記のような人たちは「社会保障制度がないと全部自費で~」と思考回路がとんじゃうんですよ。

だから全然話がかみ合わない。

筆者のようなスタンスの人間が言っているのは、今のままだと社会保障制度は持続できないから今改革しましょうねということなんです。

逆に言うとそれすら拒否するんだったら本当に20年後くらいには、リセットしなきゃならなくなりますよという話です。

そしてそれこそ、まさに皆さんの言う「毎月ウン十万円を自腹で負担しないといけない状況」に近いでしょう。

まあ正直に言うと、上記のような人たちの半分以上は「社会保険料を大して払っておらず、サラリーマンが天引きされている保険料に寄生している人たち」でしょう。

高齢者の給付を減らされたり窓口負担を上げられると、自分が支えないといけなくなるから。あるいは社保→消費税に置き換えられると自分も負担しなければならなくなるから。

「自身の負担が減る」というメリットがまったく想像できないことが、彼らの論理が飛躍する理由でしょう。

何でそういう人達だと言い切れるかというと、筆者はリアルでそういう自営業の人たちを大勢知っているからです。

なかなか表には出てきませんけど、たまに尻尾を出す人もいますね。たとえばこんな人とか↓



【参考リンク】日弁連会長ら16人、指針に違反か 厚生年金未加入問題


そういう人達というのは、このまま現行制度を引っ張れるだけ引っ張って逃げ切りたいわけですよ。その後に備えて資産形成も行っているでしょう。

でも普通のサラリーマンは無理ですよね。だって3割天引きされ続けているわけですから。

だから、上記のような反論をぶつけてくる人たちの中に混じっているであろう、本当にサラリーマンやってる人には言いたいですね。

まずは冷静になろうと。そして制度を持続可能にする、負担を社会全体で公平にするための議論をスタートさせようと。

じつはそれこそが「社会保障の無い、100%自腹の世界」が出現することを防ぐ唯一の道だったりします。






以降、
「解雇規制緩和でみんな年収300万円の非正規になる」という人達との奇妙な共通点
今回の選挙で社会保障はどう変わるか








※詳細はメルマガにて(夜間飛行)






Q:「転職後、すぐに辞めても大丈夫ですか?」
→A:「構いませんが、その分、次は慎重に行ってください」



Q:「40代で昇給ゼロだった自分は転職すべき?」
→A:「まあ残ってもいいことはなさそうですね」




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なぜあの会社って副業を全面解禁したの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。

メガバンクの一角、三井住友銀行が全従業員に副業を解禁するとの報道がありました。


【参考リンク】三井住友銀行が副業解禁へ…全従業員3万人対象、個人事業・雇用契約も可能


IT系新興企業ならいざ知らず、JTCの中でもお堅い印象の強いメガバンクが「例外なしの副業解禁」というのはかなりのインパクトです。

業種問わず多くの日本企業が注目するでしょうし、追随する会社もあらわれるでしょう。

ただ、SNS上での反応を見ると、少なからぬ人がこういう反応を見せています。
「副業なんてやるエネルギーがあるなら、本業で成果を上げるべき」

また、経営層の中にはこんな疑問の声もあるようです。
「副業なんて解禁すれば、従業員の愛社精神は落ちるし全力で働く人も減るはず」

果たして、企業が副業を解禁することにどんな意味があるんでしょうか。


副業する人、しない人



まず「副業なんてやるエネルギーがあるなら、本業で成果を上げるべき」という意見について。

これは正論ですね。合理的に考えれば誰でも異論はないはず。

例えばプロ野球の選手が「生活費の足しにしようと思って副業始めました」なんて言ったら「副業の前に野球で成果出せよ」とみんなつっこむでしょう。

ただし、それはプロ野球の場合、成果さえ出せば報われるシステムがあるから。

日本企業の場合は前提条件が大きく異なってきます。

前回述べたように、年功序列制度では40歳以降は上がり目が無くなり、消化試合モードに突入する人が多数派だからですね。

【参考リンク】政府の規制のせいで日本人ってバリバリ働かなくなったの?と思ったときに読む話

本業で消化試合モードになってしまった従業員にとって、実は副業というのは、リスクを抑えつつ収入を上積みできる唯一の手段だったりします。

では「副業なんて解禁すれば、従業員の愛社精神は落ちるし全力で働く人も減るはず」という意見はどうか。

そもそも、日本企業の従業員が愛社精神が高いとか帰属意識が強いというのは幻想です。昔から日本人は会社も仕事も嫌いで、職場の人間関係にも不満を抱えたまま働いています。

【参考リンク】どうして日本人って仕事が嫌いなのに転職や自己研鑽に消極的なの?と思ったときに読む話

理由はシンプルで、配属先も仕事内容も自分で選ばず会社に一任する仕組みであり、なおかつ終身雇用ベースで転職しないからです。

まあこれからジョブ型で徐々に変わっていくんでしょうけど、少なくとも30歳以上の人は新卒一括採用で会社名見て就職しているはず。

そこでたまたま配属された職場でたまたま与えられた仕事が「天職でした!」という人なんて1割もいないでしょう。

で、そこでたまたまめぐりあわせになった上司や同僚が「今では家族みたいなもんです!」っていう人なんて1%もいないでしょう(苦笑)

でも新卒カード使って入社した以上は、定年まで我慢するしかないわけです。上記リンク先の惨憺たる数字は、今でもそういう働き方を選択する日本人がけして少数派ではないことを示しています。

あと全力で働かなくなるというのも杞憂で、そもそも40代以降も出世コースに乗れているようなエリートは副業なんて見向きもしません。

前途洋々たる20代若手もまあ普通はやらないでしょう。

副業を全社に解禁しても、おそらく実際に手掛けるのは40代以上で既にキャリアハイに到達し、かつ体力を持て余している中高年がほとんどだと思われます。

個人的には役職定年で一線を外れた50代がメインストリームになりそうな予感がしますね。

彼らはもともと大して愛社精神も帰属意識もないし、本業で全力を出し切るどころか余力を持て余している状態なので、副業に手を出そうが何の問題もないわけです。

そういう視点に立てば、副業の一律解禁というのは従業員にとってはもちろん歓迎すべきことであるとともに、巷間言われているような会社にとってのマイナス要素も特に無いアプローチだというのが筆者の見立てです。






以降、
会社から見た「従業員に副業させるメリット」とは
個人の副業との付き合い方






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Q:「解雇規制緩和より、転職市場の流動化を先に実現することは可能でしょうか?」
→A:「ジョブ型にすればある程度は流動化しますが……」



Q:「配偶者のキャリアを考えると転勤したくないのですが」
→A:「まあ人手不足なので交渉はしてみるべきでしょう」




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政府の規制のせいで日本人ってバリバリ働かなくなったの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。

近年、日本の経営者から「もっと働きたい人は好きなだけ働けるようにもっと規制緩和してほしい」という声が出ています。


【参考リンク】「日本人滅びる」論争、柳井氏発言に賛否 前沢氏、三木谷氏らが見解


以前はエイベックスの松浦さんも同様のことを言っていた記憶があります。

これ、顔出しで問題提起する人以外にもすごく多いです。経営者の半分くらいはそう考えているような印象もあります。

ただ、人事制度というアングルから眺めると、また別の風景も見えてきます。

はたして規制緩和すれば日本人はまた高度成長期のようにバリバリ働くようになるのか。そもそも、日本人のやる気をそいでいるものとはなんなのか。

いい機会なのでまとめておきましょう。


経営者が「規制のせいで社員が自由に働けない」と考えるメカニズム

結論から言えば、後述するように規制がホワイトカラー的な働き方を阻害しているというのは事実です。むしろ真面目に効率的に働くほど損をする仕組みになってしまっています。

ただ、現実問題としては人事制度の欠陥の影響の方が非常に大きいというのが筆者のスタンスです。

これまでもたびたび言及してきましたが、日本企業の年功序列制度では、出世競争はだいたい40歳前後で終了します。

そこから部長→本部長みたいに出世競争が続く人ももちろんいますが、それは非常に少数派で、大半の人間は打ち止め。

頑張っても頑張らなくても大して給料が変わらないことが常態化します。ちなみに筆者はその状況を“消化試合”と呼んでいます。今の中日-ヤクルト戦みたいなもんです。

この状況は数字にもはっきりと出ていて、40~44歳は全体でも最も伸び率が低く、大手にいたっては35~55歳は実はマイナスだったりします(23年度調査)。



【参考リンク】変わる働き方、賃金配分に変化 大企業の中堅社員が減少


こういう状況になるとバリバリ働く人は少数ですね。大半の人間は「最低限言われたことだけをやり、新しいことに挑戦はしない」ようになるものです。人間だもの。

大手日本企業の平均年齢はどこも40代が普通です。つまり、会社によっては過半数の人間が消化試合モードで言われたことだけやっている状態なわけです。

すると、ちょっと普通ではありえないようなことが頻発するようになります。

たとえばある会社にそこそこ大きな商談を持っていってもなんだかよくわからない理由でたらいまわしにされた挙句に返信が来なくなる→後から持ち込まれた会社の社長がそれを知ってブチギレ、みたいな話はよく聞きます(苦笑)

業務プロセスに問題が?担当のケアレスミス?そういう見方も出来るんでしょうが、本質は部署単位で消化試合やってるところが複数あるという点でしょう。

じゃあ処方箋としてはどうすべきか。

これはもう単純に「40歳以降は頑張ったってなんにも報われないだろう」という報酬制度を抜本的に見直す以外にないんですね。

具体的には年功賃金からジョブ型に見直す、賞与の成果分を大きく引き上げる等etc……

要するに、年齢問わずバリバリ働けば働くだけ報われる制度を導入することです。

そういう意味では、近年増えつつある「ジョブ型に移行する企業」は、ちゃんとポイントを押さえていると言えます。

「役職定年を廃し、役割に応じて個別に処遇を決めます」という企業も対象は限定的ながら正しい方向を向いていると言えるでしょう。



【参考リンク】「役職定年」を廃止する日本企業が増えた理由


ただし。そうした改革は非常に手間がかかって面倒なのも事実です。特に率先して旗を振らないといけないはずの管理部門からすると、ともすれば先送りしがちになる課題だったりします(まあそういう意味では人事部門そのものも“消化試合”の呪いにかかっているのかも)。

で、そういうタイミングで、先ほどみたいにブチ切れた社長が怒鳴り込んできたらどうなるか。

「なんで最近の社員は昔みたいにバリバリ働かないんだ」
「はい、実はみんな40過ぎると消化試合でやる気なくなってるんすよ。ホントはジョブ化して何歳からでも挑戦できる風土に変えてかないといけないんですけど、めんどくさくて(苦笑)」

なんて口が裂けても言えません。そこで、たいていはこんな感じでお茶を濁すわけです。

「いえ、今は働き方改革だなんだとうるさい時世でして、みな昔のようには働けないのですよ」

結果、規制に怒りの矛先を向けてしまっている経営者は結構多い印象があります。

とここまで読んでもよくわからないという人は、頭の中で自身の職場をイメージしてみてください。

「ボス!規制なんて無視して俺にもっともっと働かせてください!」って言ってる熱血社員と、

「もうさ、新しいことはいいから、ちゃっちゃっとルーチンワークだけこなして帰ろうよ」と考えてる中高年、どっちが多いですかね?

ちなみに筆者は、前者は会ったこと無いですが後者は数えきれないほど知ってますね。

繰り返しますが、筆者も現状の日本は規制があまりにも多すぎて企業の経済活動を阻害しているなとは感じています。特に解雇規制、労働時間に関する規制など。

ただ企業サイドがやることやってない点も多々あって、ことに「40代以降の社員の消化試合問題」は、とりあえず自社でなんとかすべき問題だろうというのが筆者のスタンスです。





以降、
仮に氏の言うように政府が規制だけ外したらどうなるか
従業員がどん欲に成果を追求する組織




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Q:「学歴ロンダリングって意味あるんでしょうか」
→A:「理系なら腹くくって勝負、文系なら肩書+αくらいと割り切りましょう」


Q:「2つの内定、どちらにいくべき??」
→A:「刺激が足りないと思ったら思い切って環境を変えるのも手です」



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3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代


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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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