無題


援護射撃その2

朝日のWebで、大竹先生が再び雇用問題について語っている。
僕からは何も付け加えることは無い。労働再規制の無意味、正社員の流動化。
そして、文中のどこにも資本階級なんてでてきやしない。
当たり前だ、そんなものはもう存在しないのだから。

朝日新聞もこと雇用についてはきわめてまっとうな感覚を持ち合わせている。
毎日が暴走しているのとは実に対照的。

規制バカの厚労省や、詭弁を弄するしか能の無い御用学者は
刮目して一読すべきだろう。

経営刷新で還暦越え

16日、日立の新社長が発表されたが、なんと69歳である。
外資の人がびっくりしていたが、僕も驚いた。
普通、大赤字の後はトヨタみたいに若返りを図るものだが、余裕で還暦越えてますね。
まあ日立らしいといえばそうか。

副社長⇒子会社トップ⇒本体復帰 と言う流れはあまりないので、恐らく
�@何かとてつもない特殊能力があり、それが必要とされた
�A汚れ役をやるためのショートリリーフ

といった理由のはず。タイミング的には�A、理由はリストラだろう。
リストラ(大手の場合は事業売却や早期退職)は経営者にとって経歴の傷であり、
自分の任期中は避けようとする人が多い。
良く言えば「雇用死守」なのだろうが、はっきりいえば「爆弾リレー」である。
いずれにせよ“最後のご奉公”といったところか。

ストライキが流行らなくなったわけ

TBSがストライキしたらしい。気づかなかった…あんまりテレビ見ないしな。

それにしても、ストライキとは今時珍しい。
ストライキが流行らなくなったのはちゃんと理由があって、Voice4月号にも書いたように
日本型雇用では労使が一体化するためだ。

大雑把に言えば、経営者も内部昇格のサラリーマンにすぎず、コストカッターというよりは
バランサー(仕切り屋)であること、そして終身雇用下では、バランサーの下す経営判断は
たいていの労組にとっても合理的であることが理由だ。

こういう関係はよく言えば労使協調、悪く言えばなぁなぁであり、彼らは共にインサイダー
としてアウトサイダー(新卒、非正規雇用、下請けなど)を排除しようとする傾向がある。
その結果が氷河期世代であり、非正規雇用の拡大であり、大手と中小の格差である。
ちなみに経団連なんて、そういう仕切り屋の集まりに過ぎないわけだ。

これは、何も僕だけが言っている話ではない。当の労組自身も認めている事実だ。
「会社は従業員のものだ」というロジックは、ホリエモンに買収されそうになった際、
フジの労組と左派と経営陣が主張したものだ(ちなみにトップの日枝氏は労組書記長出身)。
こういう点からも、「編集と経営は別」だとか「派遣切りは経営のみの責任」という
ロジックがいかに虫のいい言い訳であるか、よくわかるだろう。

ところで、TBSのストライキである。
広告費が下がったから人件費も下がらないといけないわけで、設備投資を抑えるわけにも
いかないだろうから、いったいなにを削ればいいのだろう?
ああ、そうか、下請け(以下略)

森永卓郎という生き方

最近、なぜかあちこちで「モリタクの二枚舌」について質問されるので、
簡単にまとめておきたい。

昔からそうだが、この人は登場するメディアによって言ってることが180度変わる。
サンプロやテレビタックル等の地上波では「正社員の賃下げなんてもってのほか」
と言っているものの、日経BPだと「正社員の既得権にメスを入れろ」という
当たり前の正論をこっそりと吐く。

彼はいつも「経営者報酬は倍に増えた、だから労働者は貧しくなったんですよ」
という階級闘争史観的ロジックを口にするが、もちろん今時こんなバカ丸出しの珍説
を本気で言っているわけではない。日本の経営者報酬が激安であること、そして
そんなもん削ったって何の解決にもならないことくらい、しっかり理解している。

ちなみに倍に増えたといっても、
�@単に00年前後の不況時と比べた結果にすぎない、
�A株式持合いが崩れ、一定の経営責任が要求されるようになった(その結果、
役員退職慰労金のような曖昧なものを廃止して報酬に上乗せする上場企業が増えている)
といった事情からだ。

余談だが、いまだにこういう意見を信じてるのは、左翼の中でも相当頭の悪い人
だけなので、若い人は相手をしちゃダメだ。

他にもまだまだあるのだが、要するに森永さんという人は、メディアごとに、視聴者
読者の多数が喜ぶものを見抜き、提供しているに過ぎないわけだ。
日経でこっそり既得権問題に触れたのは、
少なくとも日刊ゲンダイや毎日新聞よりは日経読者の知的水準が高く
「100%経営者が悪い」的な論法では相手にされないと見抜いたからだろう。
氏のことを「一貫性がない」と言う経済学者もいるが、そもそも本人は一貫させる
意志など最初から持っちゃいないはずだ。

一方、使う側のメディアにとっては、モリタクはとても使い勝手の良い人ではある。
バラエティから政治討論まで何でもソツなくこなしてくれ、しかもメインの視聴層
である中高年を喜ばせてくれるのだから。彼が“経済学者の代表”として
メディアジャックしていけるのは、これが理由だ。
“正論”しか言わない学者は、正論であるがゆえに既存メディアの真ん中に
出てくることは今後もないだろう。

そういう意味では、モリタクはきわめて優秀なビジネスマンだ。
顧客のニーズを見抜き、営業トークを巧みに使い分け、顧客満足度を高めて連日の
ようにメディアに登場する。そして知名度を引っさげて執筆、講演を手広く行い、
彼が批判するトヨタの経営陣などよりずっと豊かな収入を得ているのだから。
だが、彼は断じて学者ではない。

とまあいろいろ書いてみたが、彼に悪気は無いのかもしれない。
事実、カメラの回っていない場でのモリタクは、気さくなどこにでもいるオッサン
である。
「オレは単純に視聴者が求めるものを提供してあげてるだけだ。一々かたいこと言うな」
くらいに思ってるはずだ。
だが、彼の展開するポジショントークは確実に改革を遅らせ、既得権を温存してしまう。
我々の世代にとってはとうてい看過できるものではないし、
特に立場の弱い非正規 雇用労働者はこのまま行けば十数年後、
地獄を見ることになるだろう。


貧困ビジネスという言葉が話題となっているが、日本社会に与える負の貢献度で言うなら、
僕は森永卓郎こそ最凶の貧困ビジネスマンだと思っている。
この男が嬉しそうに語るインチキ経済学によって、どれだけ世論が歪められたことか。

テレビで彼の温和な笑顔を見るたび、僕はいつもある諺を思い出すのだ。
「地獄への道は善意で舗装されている」
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7割は課長にさえなれません


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3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代


若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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