なんであの人って詐欺の広告塔に使われてるの?と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、警視庁公式アカウントのある投稿が話題となりました。




SNS上で有名人の名前をかたり詐欺サイトに誘導するアレですね。

話題になった理由は、その広告塔として勝手に名前出されている被害者(?)の面々が微妙で、「えーこの人の名前で誘導するの??」的なインパクトがあったからでしょう。

でも個人的には「なるほどそうきたか。詐欺グループ、なかなかやるではないか」という印象ですね(苦笑)

なぜこのセレクションが絶妙なんでしょうか。そして、なぜ警視庁のアカウントは「ホンモノ」と銘打ったんでしょうか。

いい機会なのでまとめておきましょう。実は個人のキャリアと深い関係のある話だったりします。


魔法のスイッチがあると考える人ほど、うまい話に引っかかる


世の中には、少なくない数の他責思考の人たちが存在します。

「もっと頑張って上を目指そう」と考えるのではなく「俺がパッとしないのは〇〇のせいだ」と短絡的に考えてしまう困ったちゃんですね。

世界最悪の財政事情の我が国において「自分の生活が苦しいのは政府のバラマキが足りないからだ」と考えるバラマキ派などはその典型でしょう。

そんな非現実的な願望を正当化するためには、どこかで論理の飛躍が必要となります。バラマキに制約がある=自分の人生はこれ以上は上向かないってことですから。

政府には自由自在に経済成長させられたり、無限にお金を生み出せる魔法のスイッチがあるんじゃないかな、でないと自分は一生底辺確定だからあってもらわないと困る、いやあるに違いない!

というわけですね。バラマキ派の場合は「日本政府はいくらでも円を刷って配れる」というMMTが魔法のスイッチということになります。


で、ここからが本題なんですけど、そういう人って当たり前ですが「投資すれば絶対儲かるうまい話がありますよ」っていうのにメチャクチャ引っかかりやすいんですよ。

だってもともと“魔法のスイッチ”を素で信じちゃうような頭だから。

「政府が自由自在にお金印刷できて経済成長させられるんなら、絶対儲かるうまい話もあるだろうな」

とぱくっと食いついちゃうわけです。なんたって自分で努力する気ゼロですし。

つまり、バラマキ派というのは投資詐欺のカモとしてとても効率が良い集団であって、その広告塔としてはやはり普段バラマキ派から小銭巻き上げて食ってるような人を使うのが合理的だということですね。


たとえば普段から規制緩和や自由競争といったバカには耳に痛い話ばかりしているホリエモンを広告塔にしたって、氏のファンはまず釣れないわけですよ。

でも「政府の借金は国民の資産!」とか言ってる奴に「絶対儲かる話ありますよ」って言わせたら、結構釣れると思いますよ。だって普段言ってることと同じだから。


少なくとも詐欺グループの連中は、以上のような構図をばっちり理解した上でやってるわけです。MMT信者よりよほど頭いいと思いますね(苦笑)

余談ですが、この「魔法のスイッチで他責思考のバカを釣る」というメソッドを理解し実装しているのは、詐欺グループだけではありません。先日、宮城県知事選で現職と大接戦を演じた参政党も同じことやってますね。

「国債発行による積極財政」を掲げる参政党は極右でありながらも、極左のれいわ支持層から大きな支持を得ることに成功しています。

「あの手の連中がどういうエサに食いつくか」ということをばっちり理解しているわけです。




さて、ここで一瞬だけ、自身が警視庁の詐欺対策の担当になったと想像してみてください。ネット詐欺撲滅のため、公式アカウントで啓発するのが仕事です。

とりあえずよく使われている著名人からコメントも取りました。
「国民の皆さん、騙されないでね。本物からのメッセージを今から流すから」
あとはSNSに投稿するだけです。

が、ふとある疑問を抱くはず。

「……でも、そもそもこの人たちっていったい何の“本物”なんだろう」

エコノミストでも経済学者でもない、主張と言えば「あなた方は悪くない、悪いのは魔法のスイッチを使わない政府です」といってアホから小銭を巻き上げるだけ……やってること同じじゃね?

そういう人を仮にも警視庁公式アカウントで“本物”って言っちゃっていいのか……よし、ここはあえて分かる人にだけ伝わるようにしておこう。

というわけで「ホンモノからのメッセージ」というおちょくってるのか持ち上げてるのかわからないメッセージの背景には、担当者のこうした心理的葛藤があったんじゃないか、というのが筆者の見方です。


※本件は特定の誰かをアレするものではなくあくまで一般論です。

※どうも「リベ大学長」という人は情弱ビジネス系の人ではないみたいです。他と一緒くたにされていることに同情します。






以降、
バラマキ派、リフレ派、減税派「魔法のスイッチはあります」
魔法のスイッチは無いが、人は努力すればたいていのものは手に入る






※詳細はメルマガにて(夜間飛行)






Q:「初の転職に際して注意すべき点は?」
→A:「必ず未経験の業務を任されます。そしてそこで真価が問われます」



Q:「50歳手前での転職に満足した理由」
→A:「本コラムに通じる内容ですね」





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残業規制を緩和したら過労死が増えるって本当?と思った時に読む話

次号のメルマガ前半部の紹介です。
いろいろとフットワークの軽い高市政権ですが、「働き方改革の見直し」にも着手するようです。



【参考リンク】高市早苗首相、労働時間規制の緩和検討を指示 厚生労働相らに


さっそくネット上では「さすが高市さん!猛烈社員こそが日本に必要!」とする賛成派と「過労死を容認するのか!」とする反対派がしのぎを削っています。

ただ、個人的には総理が何をどう見直したいのかがイマイチよくわからないので、現時点では何とも言えないですね。

そもそも働き方関連法案は5年経過後に見直しの議論をすることが決まっていたので、極端な話、手続き的にそれをやっているだけという可能性もありますし。

ともあれ、ここで俯瞰的に議論を整理しておくのは有意義でしょう。

働き方改革を経て日本企業の現場はどうなっているのか。手直しするべきはどこなのか。良い機会なのでまとめておきたいと思います。


残業は終身雇用の屋台骨


まず、基本中の基本事項をおさえておきましょう。それは「残業こそが終身雇用制度を支える屋台骨」だという事実です。

普通の国であれば、仕事が増えてくれば新たに人を採用して対応します。当然、仕事が減ったら余剰人員をクビにします。

ところが日本は終身雇用で原則解雇はできないため、かわりに残業の増減を通じて雇用調整するわけです。

新たに人を採用するのは、長期的に見て仕事が安定的に増え続けるような確信が持てるときだけですね。

それ以外の定期的な繁忙期は従業員みんなでいっぱい残業、暇になったら定時で退社というのが、昭和から続く日本企業の伝統的な働き方なんです。

ちなみに就職氷河期世代ですが、あれは企業が団塊世代やバブル世代を雇いすぎちゃった状態で、不良債権も抱え込んで長期的な見通しがまったくたてられない状況が重なった結果発生したものですね。

小泉・竹中改革は不良債権処理で氷河期を終わらせた功績こそあれ、格差拡大の戦犯などと非難されるいわれはないですね。

むしろ「上の世代の雇用を死守しろ」と叫んで回っていた左派こそ氷河期世代の仇でしょう。


話を残業に戻しますが、日本独特の人事制度であるメンバーシップ制というのは、この残業システムを上手く機能させるOSみたいなものなんですね。

繁忙期にみんなでわーっと取り組んで仕事を回すには、ジョブ型のようにあらかじめ業務範囲を明確化するのではなく、その都度余っている仕事を手の空いた人間に割り振れる方が好都合ですから。

だから日本企業では総合職という名前でなんでもやれる高ポテンシャルな人材を長年求めてきたわけです。

業務範囲が曖昧で、仕事の裁量もほとんどないというメンバーシップ制の特徴は、残業で雇用調整するというシステムにリンクしたものだったんですね。


では、過労死が発生するメカニズムとは。

業務範囲が曖昧で、手の空いた人に割り振るというスタイルだと、どうしても特定の人間に負荷が集中してしまう傾向があるんですね。

真面目でテキパキ仕事してる人と、日中はチンタラやってる人は数字上は同じ残業時間でも、かかっている負荷は全然違うはずですから。

でも間接部門からするとそのあたりの違いはほとんど見えないんですね。これは業務範囲が曖昧であるが故の弊害だと言えるでしょう。


さらに言えば、終身雇用そのものも負の影響大です。

終身雇用制度というのは、経営者でも株主でもない一従業員の人生を、会社に丸ごと投資させるような物です。体にロープ巻いて船のマストに縛り付けたまま働かせるようなものなんですね。

「ぶっ倒れそうだけど、逃げたりしちゃだめだ、自分がなんとかしないと」と考える真面目なサラリーマンは、けして珍しい存在ではありません。

特に、過労死では有名企業の若手社員のケースが目立ちますが、あれも根っこにあるものは同じですね。人生で一度しか使えない新卒カードを使ってせっかく入社した有名企業を、目先の仕事がきついからと逃げ出すわけにはいきませんから。

JTCで働いた経験の無い人からすると、超高給取りでもない普通のサラリーマンが死ぬまで働く感覚はまったく理解できないでしょう。

いろいろ叩かれてましたけど、こういうのは正直な感想だと思います。





実際、「Karoshi」ってそのまま英語になってますからね。それをあらわす言葉が諸外国にはない、日本独自の現象だったからです。


まとめると、残業こそが終身雇用を支える屋台骨であり、業務範囲が曖昧で裁量の少ないメンバーシップ制はそれをうまく機能させるためのOSのようなものである。

そして、終身雇用制度であるがゆえに、末端の従業員ですら組織のために身命を賭して働くことになり、「きつかったら逃げる」という本来なら労働者最強の武器が使いづらい、ということです。



では、改革はどうあるべきか。

まず、雇用調整の手段を残業ではなく雇用の数に置き換えることに異論のある人はいないでしょう。よって、残業時間に抜け穴無しの上限をつけ、その代わりに解雇規制を緩和することが必要となります。規制を緩和するか死守するかじゃなく、規制強化と規制緩和がセットで必要となるわけです。

OSもアップデートが必要ですね。過労死の温床のメンバーシップ制から、世界標準のジョブ型へシフトする必要がありますが、これは既に大々的に移行が始まっているのでお上がどうこうする必要はないでしょう。

ただ、業務範囲の明確化されたジョブ型になれば、裁量もセットで委譲できますから、ホワイトカラーについては「労働時間規制を緩和し、働いた時間ではなく成果で評価する」ホワイトカラーエグゼンプション(WE)を思い切って適用拡大すべきでしょう。※

要するに、解雇規制緩和と残業上限の徹底。同時に(裁量は業務範囲の明確化とセットで)ホワイトカラーエグゼンプションの思い切って拡大し、労働時間管理そのものは規制緩和する。

図でいうと1番が本来の働き方改革の目指す目的地ということになります。


hatarakikata













※「チンタラ働いた方が残業代を稼げる」という現在の制度では労働の質は上がりません。個人が裁量を持ち、成果を追求することでそれは実現します。

とはいえ、何らかの形で労働時間の管理そのものは残すべきだというのが筆者のスタンスです。


安倍政権の“働き方改革”における唯一の敗者は労働者



少しだけ時計の針を戻してみましょう。

安倍政権は当初はアベノミクスと並行して、解雇規制緩和をはじめとする雇用分野での規制緩和を模索していました。アベノミクス3番目の矢です(もうみんな忘れてると思いますけど)。

ちゃんと働き方改革の目的地である1番を目指そうとはしていたんですね。

ところが、連合や野党の強硬な反対で解雇規制緩和は早々にとん挫します。

さらには、社会的にクローズアップされた労災などもあって労働時間規制は緩和どころか逆に強化されることになりました。

図でいうと1番を目指していたはずが、なぜか3番に落ち着いてしまったということです。労働の質を見直すことなく、力技で残業時間だけ無理やり抑え込ませた形です。

これが安倍政権下における“働き方改革”ということになります。


と書くと「残業が抑制されたんならいいじゃないか」と思う人もいるかもしれません。実はこの状況というのは労働者側からすると最悪の結果なんですよ。

というのも、それまでさんざん「成果なんてイヤだ、働いた時間に応じて支払え」とWEに反対し続けてきたのは他ならぬ労組ですから。

分かりやすく言うと、現在の3番の状況というのはこんな感じです。


経営「働き方改革で残業は原則月45時間までね。残業代大幅にカット出来て助かったわ。過労死無くすためだからしょうがないよね」

労組「え?……浮いた分、何らかの形で還元とかは?」

経営「成果じゃなく働いた時間で払えって言ってたの君らでしょ」

労組「……」


残業というのは、特に「出世競争が既に終わっていたり、特に評価されているわけでもない普通の会社員」にとっては、ある意味自分で給料を調整できる唯一の武器だったわけですよ。

そりゃ人件費は有限なんだから皆が残業したらその分昇給や賞与が削られてとんとんにはなりますけど、とりあえず個人が使える目先の武器としては貴重なものだったわけです。

で、それが合法的に制限されたと。

そうそう、昨年に「学生がスキマバイトするイメージのあるタイミーの利用者が、実は40代以上が47%、正社員属性が21%らしい」というのが話題になりましたね。


【参考リンク】いい年してタイミーで時間の切り売りしてる大人ってバカなの?と思ったときに読む話



あれって多分、残業代カットされて苦しくなった中高年の正社員がいっぱい利用してるんじゃないですかね。

いやーそりゃきついですよ。退社してから全然縁もゆかりもない現場で毎回体張って日銭稼ぐのは。下手したら20代のバイトに「オッサン何やってんだよ」とか言われるわけでしょ?

今までだったら日中チンタラするだけでその2倍くらいは貰えてたわけで。

そりゃ労働時間の規制緩和に期待する人も多いでしょう。



【参考リンク】労働時間規制の緩和、賛成64%・反対24%


さて、勘の良い人なら、ある疑問を抱いたはず。
「でも残業は終身雇用の屋台骨なんでしょ?残業が抑制されたら困るのは経営も同じでは?」

実は意外とそうでもないんですよ。経営側が頭を使わなくても現場が何とか回してくれるから。なぜかというと、従業員は会社という船のマストに自らをロープで縛り付けたままだから。

「残業減らせ」と言われたら「はいそうですか」とさっさと退社する人もいるんでしょうが、平均的なサラリーマンなら昼休みを削ったり最悪仕事を持ち帰ったりしてでも、自身の担当業務を仕上げようとするでしょう。

プロジェクトがコケて困るのは自分自身ですから。

数年で退任する経営陣なんかよりも、実は一従業員の方が会社の10年先20年先を真剣に考えていたりするのが終身雇用制度なんですね。

だから、まあ一応は可愛い従業員のために労働時間規制を緩和してほしいとは思いつつも、ちょっとでも世論に叩かれそうになったらひっこめる程度には、経営側はこの問題にさして関心はないですね。



【参考リンク】経団連、「働きたい改革」を撤回 来春闘、首相発言への批判に配慮


それから言うまでもないですけど、この「昼休み削ったり持ち帰ってでも仕事をこなそうとする人」こそ、過労死のリスクのある人です。

だから残業規制というのは過労死を減らすメリットはほとんどないし、むしろ管理部門からすると数字で見えにくくなるデメリットすらあると個人的には考えています。

連合も働き方改革で過労死は減ってないという認識なので、問題はそこじゃないという認識はとりあえず持ってるんでしょう。


【参考リンク】労働規制の緩和検討を批判「過労死減ってない」 鹿児島で連合会長





以降、
規制緩和派賛成派が正しく、左派の批判が完全に間違いとも言い切れないわけ
高市政権の“規制緩和”はどこを目指すのか





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Q:「働かないおばの対処法について」
→A:「ダメもとで人事にお願いするしかないですね」



Q:「会社の都合で現在の職に就いたのにジョブ型で評価されないのは納得できません」
→A:「まあ横並びを辞めるっていうのはそういうことなんですよね」






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ワークライフバランスって捨てちゃっていいものなの?と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。

自民党新総裁に就任した高市さんの「これからはワークライフバランスを捨てて頑張る」発言が話題となっています。

発言の是非はともかく、「ワークライフバランス」という言葉そのものは意外と不思議なもので、人によって違う意味だったりすることが多いですね。

たとえば(今回の高市発言に対して騒いでる人達が典型ですけど)普段から「ワークライフバランスが何より大事だ!」って叫んでる人達って、それだけライフに軸足置いてるならさぞや優雅な暮らしを送っているのだろうなと思うんですけど、実際には全然余裕の無さげな人たちばっかりなんですよ。

逆に「ワークライフバランス?興味ないっす」的な冷めたスタンスの人ほど、逆に優雅で余裕のある暮らしを送っていたりします。

熱心に求める人のもとからは去っていき、そんなの興味ないよと言う人のところにひっそりと寄り添う……いったいワークライフバランス とは何なのか。そして、人はいかにしてそれに到達できるのか。

人事制度の観点からまとめておきましょう。


ワークを突き詰めた先に充実したライフがある


最初に言っておくと、時給いくらで働いている人は、それで稼げる範囲で人生を楽しんで生きてください。これは自営業も同じです。

もっと楽しみたかったらもっと働く、現時点で十分だったらあとは楽しむ。それで十分でしょう。 
  
今回テーマとするのは、そのあたりの調整が自分一人ではなかなかできない人、組織に属して働く人達のワークライフバランス問題です。自分一人ではなかなか調整できないからこそ、切実な問題として存在するわけです。

では本題に入ります。そもそもワークライフバランスとは何か。

結論から言えば、それはワークをある程度本気で突き詰めた結果として実現可能なもので、その中身も人によるというのが筆者の考えです。


年功序列制度(及びそれの根幹であるメンバーシップ制)においては、各人の業務範囲は曖昧で裁量も極めて限定的なのが一般的です。

有給休暇がなかなか取れないとかテキパキ働いても早く帰れない等という日本企業あるあるも、すべて原因はこれです。

当然、それらの結果として、プライベートのライフを充実させる余地もかなり限定的となってしまいます。

「よし、今度から定時で帰って趣味の〇〇をしよう」と思って日中テキパキ働いても、夕方になって手が空いたら「お、手空いてんじゃん、じゃあAくんの仕事手伝ってよ」とかいきなり振られるわけです。

で、そんなことが続けば「はやく仕事終わらせたってどうせ仕事振られるだけだから、自分もチンタラ仕事しよう。その方が残業代も貰えるし」と割り切り、ライフが犠牲となるわけです。

個人的には、このメンバーシップ制特有の裁量の無さこそが、普通の日本人が「なんかワークライフバランスが悪いよなあ」と感じる強い要因になっていると思いますね。

同じくらいの年収でも、JTCとそうでない外資等で働いているビジネスパーソンを見ると、仕事と人生を合わせた人生全体の効率性がまるで違いますから。


ただし、年功序列制度といっても、成果を挙げて偉くなればそれなりの裁量も得られるし、業務範囲もある程度は固まってくるものです。

部下が出来れば自分で割り振ることが可能だし、主導権を握って調整することも出来ます。結果として、ワークライフバランスの充実を図ることも可能でしょう。

そういう観点から見ると、筆者の冒頭の発言も何となく理解できると思います。

「ワークライフバランスが大事!」と主張している人間の多くは、まだワークで成果を積んでおらず、結果としてライフの充実度が低い人たちなんですね。


一方、ワークライフバランスを実現できている(ように見える)人達について。

少なくとも、組織である程度の地位に就いたり、高い専門性を持って会社と対等以上の関係で交渉出来たりしている人間で、“夜討ち朝駆け”みたいなノリで働いている人は筆者は知りませんね。

むしろテキパキ働きつつ、趣味や家族サービスを充実させ、残業なんて大してしてないような人たちばかりですね。

なぜ彼らはそれが実現できたのかというと、それは20~30代のうちにしっかり働き成果を挙げ自身のキャリアデザインも実現したからです。

言い換えるなら、“ワークライフバランス”とは真逆の道を歩き続けた先に、それがあったということですね。





以降、
普通の人が日本企業でワークライフバランスを実現する方法
ジョブ型と年功型ではモノサシががらりと変わる点には要注意
究極的にはワークとライフは融合する






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Q:「裁量労働制(専門型)の人間にシフト勤務を命じることは可能か?」
→A:「一般論ですがアウトでしょう」



Q:「金融資産1億円でFIREするのは時期尚早?」
→A:「これからどういう人生を送りたいか次第でしょう」




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なぜ企業って文系事務職を切り捨て始めたの? と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。

数年前からしばしば指摘していたことですが、ここにきてさらに企業の黒字リストラが加速しています。



【参考リンク】三菱ケミカルが「黒字リストラ」 50歳以上対象で募集人数定めず、製造従事の社員は除外



【参考リンク】パナソニックHD、1万人削減 構造改革費用1300億円


従来は目立たなかった特徴として、明らかに事務職がターゲットとなっている点が挙げられます。

またリストラではないですが、メガバンクの新卒採用枠が減り、とりわけ私立文系枠が激減しているという分析もあります。これも同じトレンドの一端とみていいでしょう。



【参考リンク】学歴もスキルもない「私文」に年収1000万円は無理…メガバンクの新卒採用に「MARCH卒」激減で起きたこと



なぜ企業は黒字にもかかわらず従業員をリストラするのか。また事務職がターゲットとして選ばれる理由とは何か。

重要なテーマなので今回は正面から論じておきたいと思います。


相次ぐ文系事務職狩り


「企業が黒字にもかかわらずリストラする理由」はこれまでも何度か言及してきましたが、年功賃金のせいで高コストなベテラン(しかも多くが消化試合中)が多すぎるという構造的課題にくわえ、(繰り返される定年の引き上げや社会保険料負担増といった)雇用コスト自体の増加が理由です。

黒字なのに、ではなく、黒字の今だからこそ身軽になっておこうという判断でしょう。

個人的には2025年法改正による「70歳までの雇用努力義務」が一番大きいと感じています。要は「従業員を70歳まで雇用する努力をしろよ」ということですね。

これまでリストラに及び腰で先送りし続けていた企業もアレで腹をくくったように見えます。老人ホームやってるわけじゃないんだから当然でしょう。

ちなみに、形はどうあれこれまで組織のために年功を積んできたベテランを放逐するわけですから、これは組織内への「もう時代は年功序列ではない、ジョブの時代だ」という強烈なメッセージになります。

黒字リストラを実施した企業が例外なくジョブ型に移行済みなのは当然と言えるでしょう。

年功序列制度を維持しつつ年功者を追い出すリストラをやる会社は、経営陣も人事もただのアホですね(苦笑)

ではなぜ事務職がターゲットとされているのか。筆者は2点あると見ています。

まず、既に大手の製造業は2000年代に製造ラインのリストラを含む見直しをあらかた行っており、さらにしぼる余地が少ないこと。

そして、AIによる置き換えがとりあえずは間接部門で先行していることでしょう。

言い方を変えるなら、これまで氷河期世代や製造ラインを犠牲にすることで本社をはじめとするホワイトカラーの年功序列を維持してきたものの、AIの台頭でいよいろ本丸の既得権に手を付けざるを得なくなったということでしょう。

最後に、恐らく想定される質問とそれへの回答も。

「アメリカではAI氷河期がZ世代の新卒者を直撃しているのに、なぜ日本は逆に中高年の事務職狩りが行われているのか」



【参考リンク】米国の大卒、「就職氷河期」 AIが新人の仕事代替


理由はシンプルに、もともとジョブ型の米国の場合は中高年に専門性を磨いたプロが多く、日本の場合はそうでなかったということでしょう。

出世競争を終えて消化試合中の人間を「ジョブで評価する」なんて無理な話ですから。

筆者は常々「これからはキャリアデザインしてプロにならないと生き残れない」と口を酸っぱくして言っていますが、図らずもそれが実現してしまった形です。

「でも早期退職募集しても辞めて欲しい人ほどしがみつくのでは?」という疑問を持つ人もいるでしょう。

それについてはインフレが強烈な援護射撃をしてくれています。

各社とも「辞めてもらってOKな人」の賃金はこの数年間極力据え置いて既に兵糧攻めしているはずなので、少なからぬ数の“そういう人達”が手を上げることになるでしょう。

「なにがあっても定年までしがみつけ」は、デフレ期限定のセオリーで、インフレ期にはもはや通用しないということです。





以降、
中高年は転職が難しいという人が勘違いしていること
ポスト年功序列で若者は苦労する?





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Q:「1年未満での転職は悪印象でしょうか?」
→A:「従来は悪印象でしたが……」



Q:「日本に外国人労働者は必要?」
→A:「自分の生活を犠牲にしてでも外国人労働者は入れるな、と言ってる人はいませんね」






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「働かないおぢ」ってなぜ働こうとしないの?と思った時に読む話

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先日、なんということもない雑感を投稿したところ、予想外にバズってしまいちょっと驚きました。



ついたレスにも鋭いものが多かったので、適時引用しつつまとめてみたいと思います(コメント部分のみ)。

どこの会社にもいる「働かないおぢ」とはなんなのか。そしてそうならないための処方箋とは。「働かないおぢ」に通じる袋小路は、実は誰でもうっかり足を踏み入れてしまいかねない、ありふれたものだったりします。


何もしなければ、人は35歳あたりから緩やかに壊れ始める


筆者が常々言っているように、一般的な日本企業では、幹部候補選抜はだいたい40歳あたりで終了し、部長以上への出世競争が続く一部の人以外は、そこから長い長い消化試合がスタートします。

ポストはせいぜい課長かリーダー止まり。昇給も専門性の高い一部の人材以外はそこらで頭打ちになるので、頑張ってもが頑張らなくても処遇に大した差は生じません。

だったら怒られない程度に最低限必要なことをやりつつ、まったり定年までやり過ごそうぜ、というのが消化試合というわけですね。

一応40歳くらいで出世競争的には白黒つくものなんですが、まあ40歳でいきなり気づく人は稀で、実際には30代半ば~後半には本人も自分がどっちの側かは分かっていることが多いですね(そういう意味で冒頭の投稿では35歳と書いています)。

図1

図8

図7

図4



ただですね、この「最低限必要なことをやりつつ、まったり定年までやり過ごす」という消化試合スタイルというのは、実は意外とリアルで実践するのが難しいものなんですね。

図6


小説やドラマでは定番キャラですが、少なくとも何もしなかったら自然とそういう風に進化するというようなものではないです。

なぜか。まず何より、年功序列制度ではそもそも消化試合というのものは想定されておらず、そうなってしまった場合のロールモデル(=居場所)が存在しないことが大きいです。※1

「ここ一番で頼りになり皆からリスペクトされてるおぢ」なんていうのはフィクションの世界の話で、たいていは「なんか触りづらいよね」と上からも下からもスルーされているケースが大半でしょう。

それで転職でもすればいいんでしょうけど、その状態でウン十年と我慢しているうちに、人間なにかしらぶっ壊れるものなんですね(というより、むしろ壊れることでギリギリ何かを保っているようにも見えます)。

さらには業務範囲の明確なジョブ型と違い、会社都合であらゆるものを割り振られるメンバーシップ型だと、同じ“消化試合”でも業務負荷やストレスが相当に大きいことが挙げられます。

若い頃にガンガン残業したり、突然畑違いの部署に異動してゼロから仕事をおぼえたりできるのは、もちろん体力的なものもあるんでしょうけど、何より「それで将来出世や昇給などの報酬が得られるから」という期待があればこそですよね。

40歳過ぎててっぺん見えちゃってる人に同じ働き方しろという方が酷でしょう。

ちなみに、壊れるパターンも色々ありますが、一番多いのは「飲む、打つ、買う」にはまるパターンでしょう。

20代の頃は好青年だったのに、40代になってから急にキャバクラやフィリピンパブに入れ上げるようになったおぢ。※2

図3


定期預金や健康保険を解約してギャンブルに全額突っ込むおぢ。

筆者の知人にも「これからは労働じゃない、投資の時代だ」といって資産を全部株の信用取引やハイレバFXに突っ込んで溶かした元高学歴がいますが、やっぱり傍からみてるとぶっ壊れてるようにしか見えませんね。元々頭良かったはずなのに、投資と投機の区別すらつかなくなってるわけで。


そんな中でも、とりわけ壊れっぷりが激しいのが「働かないおぢ」だというのが筆者の見方です。


※1

筆者は本記事中で「おぢ」という言葉を使っていますが、筆者の経験上、40歳以降で会社で壊れるのは男性が中心だからです(女性の壊れるパターンもありますがほぼプライベートな理由から)。

これは恐らく、日本型組織においては最初から女性は基幹的な役割が期待されておらず、失望も業務ストレスも少ないためでしょう。


※2

一時期社会を騒がせた「頂き女子」ですが、明らかにこの壊れた(あるいは壊れかけた)層をターゲットに選んでいたように見えます。




以降、
40歳以降、心身の安定をキープするための3つの処方箋
「働かないおぢ」の作り方







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Q:「転職先を決める基準について教えてください」
→A:「最後は直感で大丈夫でしょう」



Q:「『雇用を守るために仕事をする』というのは日本独自のスタイルなのでは?」
→A:「大本営発表以来の日本のお家芸です」






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