映画「PERFECT DAYS」をキャリア観点から考える

今週のメルマガ前半部の紹介です。

「PERFECT DAYS」という映画があります。役所広司主演、ヴィム・ヴェンダース監督でカンヌで男優賞も取っているので「見た」という人も多いでしょう。



【公式サイト】「PERFECT DAYS」


筆者も昨年アマプラで視聴したんですが、平凡な主人公の日々の出来事を淡々と描くスタイル(筆者が最も苦手とするタイプ)のため「こりゃ30分持たないだろう」と思ったにもかかわらず、なぜかぐいぐい引き込まれてエンディングまで一気に見終えた記憶があります。

いや、ほんと刺さる人には刺さる映画だと思いますね!

ただ、先日、同じように「見た、そしていい映画だった」という知人と何気なく会話をしていて、あることに気づいたんですね。

本作はキャリアという観点から見ると、おそらく見た人のほとんどが抱いたであろう印象とはだいぶ違った話なのではないか。

(もちろんこういう作品に正解はなく見た人がそれぞれ解釈すればいい話なんですが)そしてエンディングまでに描かれた細かなディティール、設定をたどると、恐らくそれが作り手の置いた作品の本筋なのではないか。

というわけで、今回は本作をキャリアデザイン的に解釈してみたいと思います。視聴済みの人はもう一度記憶を掘り返してチェックしてみてください。未視聴の人には作品に触れるきっかけとなるかもしれません。


「PERFECT DAYS」とは何か


ネタばれして困る種の映画ではないので、おおまかなあらすじを紹介しておきましょう。


主人公の平山は、渋谷区内の公衆トイレの清掃人として働いている。現場に自家用車で直行直帰し、会社とは電話でしか連絡しないことから、おそらくは業務委託なのだろう。

まだ薄暗いうちに起床し、身支度を整えてから車で出勤。身支度の順序から各トイレを回るルートまで、平山の一日は細部まで決められた手順に沿ってきちんと繰り返される。

その丁寧な姿勢は仕事でもいかんなく発揮され、もう一人の若い相棒が呆れるほどに平山の作業内容は丁寧でけして手を抜くことはない。

とはいえ、そんな平山の生活にもささやかな変化は紛れ込んでくる。新たな出会いがあったり、ずっと疎遠になっていた親族と再会したり。

決められた日々を繰り返す平山と違い、周囲はある意味、そうした秩序をはみ出して生きている。行動も予測できないし感情表現も豊かだ。

平山も振り回されるし、時に感情もつられて表に出てしまう。

そして、あるささやかな(だが恐らく本人にとっては重要な)出会いの翌朝。いつものように車で出勤する平山の顔は、なぜか泣いている。その表情は何かを悲しんでいるようにも逆に笑っているようにも見える、というシーンで終幕。

多くの人は、平凡な労働者である主人公が、日々のささやかな出来事に幸せを見出そうと努力し、その日々の中で抱いた喜びと悲しみに対して感情をあらわにするのがラストシーンだ、それも含めて「PERFECT DAYS」なのだ、といった解釈だと思います。

何を隠そう、筆者も最初はそう思っていましたし。

ただ、一部の人は、平山は自身の人生に後悔を感じており、それがラストの涙の意味だと感じるそうです。家庭を作るでもなく、自分の好きなことだけをやって生きているように見えるのが理由のようです。

ところで、筆者が知人と話していてさらに別の3つ目の解釈があるのでは?と思うに至ったきっかけについて。

ラストシーンで、もし主人公がニコニコしながら「よーし今日もがんばるぞ」ってやった瞬間に映画の世界観が崩壊し、なんだかよくわからない2時間ドラマみたいなノリになってしまうだろう、という点で意見が一致したからですね。

その理由ですが、半分仕事柄でしょうけど、あの表情に至る伏線がそれまでの作品中に丁寧に描かれているように思えるからです。それらは以下のようなものです。

・日常をルーチン化することへの強いこだわり
・主人公が唯一声を荒げたシーン
・親族と絶縁状態
・むしろ他人との関係の発展を避ける姿勢
・タカシという対極の存在

これらからは全く別の人物像がうっすら浮かんで見える気がしますね。そしてそれは、ビジネスパーソンにとってもけして珍しいものではありません。






以降、
数々の伏線が意味するもの
「PERFECT DAYS」が中高年に刺さる理由






※詳細はメルマガにて(夜間飛行)






Q:「氷河期世代を援助するには何をすべき?」
→A:「はっきり言っちゃうともう最低保障年金くらいしかないですね」



Q:「AIってやばくないですか?」
→A:「小中学生は普通にAI使ってなんぼですね」





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「ジョブ型で君の賃金下げるから」と言われた時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。

オリンパス子会社が全社ジョブ型賃金制度の導入を進める過程で、中高年社員の年功賃金を相当ドラスティックに引き下げているというニュースが波紋を呼んでいます。





これを受けてか「このまま逃げ切る予定だったのにこれからどうなるんだ」みたいな質問をいくつももらいました。

あと(たぶんバブル世代に加え氷河期世代もターゲットにされているため)「氷河期世代が可哀そうすぎるだろ」みたいな声もよく聞きます。

筆者は同社の件は全く存じ上げないので具体的なコメントはできませんが、ジョブ化に伴う年功賃金の引き下げはこれから一つのトレンドになるのは確実でしょう。

なぜ企業は今更逃げ切る気満々だった世代の年功賃金をはぎ取ろうとしているんでしょうか。そして、それに対して個人はいかに対処すべきなんでしょうか。

非常に重要なテーマなので取り上げたいと思います。


ジョブ化による賃下げは避けられないわけ


筆者自身は15年位前から一貫して「日本には解雇規制緩和が必須だ」という話をし続けてきました。

公には言わないだけで、恐らく経営者や経済学者といった識者はほぼ同じ意見だと思いますね。それは先の自民党総裁選で突然、複数候補の口から「解雇規制の緩和」が公約として飛び出した事実からも明らかでしょう。

解雇規制こそが、日本人の賃金の足を引っ張り、経済の新陳代謝を阻害するボトルネックとなっているためです。

ただ、実は解雇規制の緩和は実現できれば素晴らしいことだけれども、絶対に不可欠という状況でもなくなりつつあると、筆者自身は考えています。

ジョブ化が先行することで、もらいすぎの中高年の賃金を企業から見て適正な水準に引き下げられるなら同じことだからです。

よく言われる「働かないオジサン」なる存在は、実際の働き以上にもらっているから問題なわけですよ。

実際の働きに応じた賃金に引き下げ可能ならそれは単なる「給料の安いオジサン」であって、組織にとっては無害ですから。

というわけで、同種の事例はこれから増えることになるはずです(まあいきなり新人並みに落とすのはどうかとは思いますが)。それは解雇規制緩和を選択しなかった日本社会の必然なんですね。

それなりにまとまった金額の手切れ金貰ってクビになるのと、若手並みの給料に落とされるけど雇い続けてもらえるのと、どっちが幸せかは知りませんけど。

で、おそらく世上には「解雇はもちろん年功賃金の見直しもするな、年功序列を維持させろ」みたいな無茶なこと言う人がこれから出てくると思いますが、そりゃ無理ですね。

まず優秀者が採用できません。「うちは『働かないオジサン』が年功賃金を手放さないから、新人は初任給18万のまま、優秀者の賃上げも無しです」じゃあマトモな人材は採れませんから。

「日本の分厚い中間層を守れ」みたいなことを言うアホもまだいるんですけど、平均賃金でも一人当たりGDPでも先進国から脱落しかけている国のどこに“分厚い中間層”なんているんですかね(苦笑)





というより、ことここにいたってもなお終身雇用・年功序列を両方維持すれば、日本の没落は決定的になるでしょう。

良くも悪くも、先進各国は移民無しには経済が成り立たなくなっています。それは日本も同じで、育成就労制度や特定技能制度を通じて既に実質的な移民解禁に舵を切っています。





本来であれば、政府効率化省を通じて政府職員に大ナタを振るう米国のように、常に組織を効率化して余剰人員を労働市場に放流しつつ、それでも足りない働き手を受け入れるべきでしょう。





そんな中、日本だけが600万人ともいわれる社内失業者を囲ったまま移民受け入れを続ければ何が起こるか。

日本人の賃金も経済も停滞し続ける一方、そんな国で相対的にきつい仕事に就くことの予想される移民枠には、他国と比べ相当に質、素行に問題のある労働者が来ることが予想されます。

よくX上では欧州で大暴れする移民の動画が流れてきますけど、あれのもっとパワーアップ版がそこら中でリアルで発生することになるでしょうね。

要するに、泣いても笑っても、我々は前を向いて進む以外にないということです。

とここまで読むと「日本人にそんなハードルが越えられるのか」と悲観する人も多いかもしれません。

でも心配はいりません。実は日本人は、つい100年少し前に、武士の俸禄という超強烈な既得権全廃を実現し、その後に近代化を超速で成し遂げた実績がありますから。

先祖代々受け継いできた既得権を握り、いつ日本刀もって暴れだすかわからない物騒な集団を説得して再就職させることに比べれば。中高年にたかだか20年ほどの既得権を諦めてもらうなんて造作もないでしょう。

社会が前進するには常に新陳代謝が必要であり、特に一定の学歴や職歴のある中高年は、自分たちはその新陳代謝の最前線にいるんだという矜持をもって日々働くべきだ、というのが筆者のスタンスです。




以降、
彼らはいつ、何をどうすべきだったのか
団塊世代以降、終身雇用で元を取れた人はいない説









※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「パワハラ上司はいかに対処すべき?」
→A:「偉い人が相手だと難しいですが……」



Q:「介護報酬の引き上げは正しい政策?」
→A:「成長分野に人を移して経済成長、とは明らかに矛盾しますね」




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新卒一括採用を廃止すると何が起こるの?と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
富士通が新卒一括採用を廃止するというニュースが話題となっています。


【参考リンク】富士通、新卒一括採用を廃止 職務・専門に応じ通年募集

Yahooのように数年前から新卒一括採用を見直し通年採用として中途採用と一本化する企業はありましたが、長く新卒一括採用を続けてきた大手日本企業が転換するのは史上初でしょう。

これ、恐らく日本中の大企業が注目しているはず。同社が上手く軌道にのせられれば一気に追随する企業が相次ぐと思いますね。

それほどまでに、現状の新卒一括採用に強い閉塞感を抱いている人事担当は多いですから。

なぜ、新卒一括採用は限界なのか。そしてそれを廃止することで、個人のキャリア戦略はどう変わることになるか。

いい機会なのでまとめておきましょう。


新卒採用廃止ではなく、あくまでも新卒一括採用の廃止


まず、記事に対するレスを見ているとこういうレスが散見されました。

「中途だけで採用数をまかなうのは無理。ある程度の人数をそろえたいなら新卒採用は絶対に必要」

これはその通りなんですけど、そもそも見直されるのは「新卒一括採用」であって新卒の採用そのものは今後も引き続き行われます。

それってどう違うんだ?と思う人もいるでしょうが、要するに「新卒にあらずんば人にあらず」みたいな日本企業独自の慣習を辞めますよ、という話なんですね。

2000年頃の就職氷河期の底あたりは、特にその「新卒にあらずんば~」の傾向は強かったですね。

当時、大手が説明会などで500人くらい学生を集めると、たいてい中に10人くらいは既卒者がいましたね(前年度に内定がとれないまま卒業した人)。

でどうするかというと、担当者が「既卒者の方、あと4年生大学以外の方はこちらへどうぞ」といって別室に案内し、「本日は大卒予定者向け説明会です。皆様につきましては採用の方針が決まり次第別途連絡差し上げますので、今日のところはこちらにお名前と連絡先をご記入の上お帰りください」

と言って帰宅させるわけです。

連絡ですか?しませんね。でも嘘はついていません。単に彼らに対する採用方針が決まらなかっただけで。

新卒一括採用を辞めるというのはそういう杓子定規な対応を辞めるということで、既卒者やなんだったら短大、専門学校卒もウェルカムで、年齢ごとに一律の処遇に決め打ちするのを辞めますよ、ということなんです。

実際に新卒一括採用を廃止してみると、気持ち既卒者や3年以上寄り道している人、あと文系の大学院生が増えたかな、くらいで傍で見てる分には従来の新卒採用とほとんど違いはわからないでしょう。

処遇についても、おそらくほとんどの人材は横並びに設定され、ごく一部の優秀者のみ(それも恐らく理工系の修士以上)初年度600万円以上からスタートという形になるはずです。


筆者は、むしろ重要な変化は組織の中で起きると考えています。それは一言で言えば、採用権の移譲です。

従来の新卒一括採用というのは、実は企業の側に非常に大きなメリットがあったために長年続けられてきたものです。

そのメリットというのは「どこに誰を配属するのかをいちいち考えずに短期間のうちにまとめてどかっと採れること」です。

一方で「この人物は○○の職に採用できるか否か。また採用できるとして、果たして処遇はどの水準が適切なのか」と一人ずつ判断しなければならないとなると、これはとてもじゃないですけど人事部の手に負える仕事ではないです。

実際に配属される事業部側の責任者に判断してもらうしかありません。そう、人事権の一部を事業部側に譲ることになります。

「採用決定権だけならいいじゃないか」と考える人事の人もいるかもしれませんが、当然ながら入り口で処遇を決められるようになった事業部側は、その後の昇給昇格といった人事権の本丸も要求するでしょう。

従来から外資と比べると日本企業の人事部は中央集権的で強い権限を握っていると言われていましたが、新卒一括採用を廃止すれば中期ではそうした独自色は徐々に失われていくことになるでしょう。





以降、
「新卒にあらずんば人にあらず」だった日本企業が新卒一括採用に限界を感じているわけ
社会はどう変わるか






※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「ジョブ化した後の教育はどこで行われるのでしょうか?」
→A:「個人が鋭意努力することになります」




Q:「中途採用って以前からジョブ型じゃないですか?」
→A:「実は中途採用というのは終身雇用制度とは矛盾するものなんですね」





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高卒と大卒が同じ給料でスタートすると何がどうなるの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。

JR東日本が「大卒と専門学校、高校卒者を同じ処遇で採用する」というニュースが話題となっています。



【参考リンク】JR東日本、高卒・専門卒も総合職に 学歴で差をつけず


「学歴で差をつけるなんて時代遅れだ」と歓迎する人も多いですが、「それじゃ優秀な大卒以上の人材は集まらないだろう」と現実的な目線で見る人も少なくないようです。

確かに筆者の感覚でいうと「経営陣が東大卒ばっかりで東大大好きな会社」と「学歴関係なしの実力主義の会社」があったら、前者に行く東大生は少なくない気がしますね(苦笑)

なぜJR東は学歴ごとの処遇を見直すんでしょうか。そもそも学歴にはどういう意味があるんでしょうか。いい機会なのでまとめておきましょう。


学歴とは、より高賃金で重要な仕事を任されるレールへの乗車チケットのようなもの


従来、一般的な日本企業では、大卒や専門、短大、高校卒といった最終学歴ごとに初任給が設定されていました。

たとえば、

博士課程修了   :27万円
修士卒      :24万円
学卒       :22万円
短大・専門卒学校卒:20万円
高校卒      :18万円

みたいな感じです。

入社後はそれぞれの初任給から、毎年すこしづつ昇給していくことになります。

まあその先は各企業ごとに色々制度も異なりますし、人によってメチャクチャ優秀な高卒者や、ぜんぜんお話にならない大卒者も普通に出てくるので逆転するケースもあるんですが、少なくとも従来は全体で平均すれば賃金カーブの差は歴然とついていましたね。



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【参考リンク】学歴別の月収(2008年)



なんて書くとやっぱり大卒は優秀なんだな!と思う人もいるかもしれませんが、ここで重要になってくるのが「評価制度」と「コース別採用」です。

日本企業で働いている人ならみんなわかると思いますが、賞与や昇給の査定なんてどこのJTCでも結構いい加減なものですよね。

これまでも何度か言及しているように、多くの会社では人事部が設定した分布に基づいて管理職が評価をばらまき、人事部が決めた基準で賞与や昇給額を決めているだけです。

具体的に言えば「30歳大卒なら昇給はこのレンジで、高卒ならそれより低くてこのくらいで」みたいな感じです。

つまり、個人差はあれど、学歴ごとの賃金カーブの差というのは、そのほとんどが人事部があらかじめ敷いたレールということになります。

そしてもう一つの重要な要素であるコース別採用ですが、それにより各人は事前に与えられる仕事が大まかに決定されることになります。

一般的にいうと、付加価値の高い基幹業務を担い、幹部候補として全国転勤や残業もばりばりこなす総合職、現場業務中心で転勤や異動の限定的な地域採用職(企業によっては事務一般をこなす一般職も)などがあります。

これらのコースはほぼそのまま学歴で振り分けられます。大卒以上は総合職、それ以外は地域採用や一般職といった具合ですね。

つまり、学歴によっては入れるコースが異なり、コースによって与えられる仕事が違うということになります。

そう考えると、先の図の印象も随分変わってくるのではないでしょうか。

「学歴はお金を生み出す武器」というよりは「学歴はより高収入の保証されたレールに乗るための乗車券」と言うべきでしょうね。

でそのチケットによって「お前は高卒だから給料はこのくらいで、ピーク時もこんなもんでいいだろう」みたいに決め打ちされるわけですよ。

「そんなステレオタイプで人の人生を限定するな!」と怒る人もいるでしょうが、年功序列制度というのはそういうものなんですね。文句がある人は年功序列制度(とそれに基づいた終身雇用制度)に言いましょう。

余談ですが、最近一部の政治家が「大学の無償化」を看板政策として掲げています。





たぶんそういう政治家って、冒頭で出した賃金カーブをイメージし、大卒者を増やせば高賃金の人が増える→経済成長だ!って短絡的に考えてるんでしょうね。

でも上記のロジックからすれば「高賃金のレールの座席数自体は変わらない中で、単に乗車チケットだけが乱発される」という状況になるだけです。

経済成長どころか、大卒チケットは手に入れたけれども、どこにも座れない人間があぶれるだけでしょう(当然ですが高卒者用の椅子にも今さら座れないはず)。

これと言って何のとりえもない文系事務職希望が増えるだけで、建設業や運輸、介護といった業界の人手不足はさらに悪化するんじゃないでしょうか。





以降、
ジョブ型と学歴別コース別採用は水と油
JRが学生に発しているメッセージは、すべてのビジネスパーソンにとっても肝に銘じるべき








※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「ホワイトカラー>エッセンシャルワーカーの価値観はどうやったら変えられますか?」
→A:「10年以内にガラッと変わる気がしています」



Q:「転勤制度はジョブ型移行でどう変わるんでしょうか?」
→A:「転勤制度とジョブ型は本来両立しないはずですが……」




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財務省解体デモやってる人達ってバカなの?と思ったときに読む話

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先日、SNSで“財務省解体デモ”なるものが話題となりました。

「は?」って思った人が大半でしょうけど、やってる本人達はいたって本気の様子。

はたして財務省をやっつけたとして、それで問題が解決するんでしょうか。というか、そもそも彼らは何を求めてるんでしょうか。

一見するとしょうもないことしてるように見えても、その行動原理をひもとくと意外な事実に気づかされることもあるものです。

いい機会なのでまとめておきましょう。


財務省を目の敵にする人たちの本音


まず彼らのロジックですが「財務省が緊縮財政するもんだから日本がこんなに貧しくなった」というものです。

ちなみに財源については「自国通貨はいくら刷っても大丈夫」とか「バラマキで経済成長するからOK」「まず減税させれば税収増えるから心配ない」とか、MMT、元祖バラマキ派、減税派などごった煮状態ですね。

まあアホという点では大差ないですけど。

まず世界最大の債務残高を抱える日本が緊縮財政の対極にいるという点で異論のある人はまずいないでしょう。

くわえて財務省というのは国の決めた事業を維持できるように歳出歳入をチェックする組織でしかありません。

たくさん税金取られて生きていけない!というのなら、それはそれだけのお金を使い込んでいる国民の側に問題があることになります。

だからまず国民の側で「歳出が多すぎるから○○を減らせ」と合意形成して選挙を通じて政治に反映させるしかありません。

そういうの一切無視していきなり財務省に「おまえが金を使うのを見直させろ」「税金取るのやめろ」というのは、極論すれば炊飯器に向かって「米が値上がりしてるから使う量を減らせ」と説教してるようなもんです。

想像してみてください。近所に毎週末、炊飯器に向かって「最近米が高すぎる!米の使用量を減らせ!」って怒鳴ってる一家がいたらどうします?

「うわこいつらヤバいな」って目が合わないように避けるでしょ?財務省解体デモやってる人は一般人からそういう目で見られてるって自覚した方がいいです。

ちなみに減らすべきなのは社会保障一択で議論の余地はありません。

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ただし。

じゃあ上記デモの参加者が揃いも揃ってみんなバカかというと、筆者はそれも違うと考えています。

というのも、少なくとも上記デモの黒幕の一角と思われるれいわ自身が「税金は不要」なんてまったく考えていないからです。

最近の政策を見ると「自国通貨なんだからいくら刷っても大丈夫」なんて言ってなくて、実は大増税路線に舵を切っているのがよくわかります。

以下、現在のれいわの税制に関する政策の抜粋ですが、消費税廃止を掲げる一方で、増税に関するラインナップはこんなにあります。※

実はれいわ自身が「税は財源ではない」なんて1ミリも信じてないのは明らかでしょう。


・法人税を引き上げ、累進課税を導入する
・所得税の累進を強化する
・金融所得課税は、株の配当や譲渡益を分離課税とする現行制度を見直し、総合課税を検討する
・大企業の自社株買いに課税し、株価ではなく企業の利益を従業員に分配するように動機付ける
・タックスヘイブンを利用した日本の大企業の租税回避を規制し、公平で公正な負担を求める
・財産相続によって格差が固定されないよう、是正方法を検討する
・不況期には高額資産への資産課税を実施することで、富裕層の支出を促す
・国際的な金融取引に対する課税や金融資産課税の導入を検討し、タックスヘイブン、課税逃れへの取り締まりを国際協力のもとで強化する
・炭素などの温室効果ガスや汚染物質の排出に課税し、排出削減を促すことで健康や環境への被害をなくす
・インフレ抑制が必要な場合は、優先度の低い設備投資への課税を検討する
・円安など為替の変動による企業の棚ぼた利益に課税を検討する(ウインド・フォール税)
・雇用を海外移転する企業への税控除廃止と国内回帰する企業への税控除を導入する。日本企業の海外収益への課税を強化する
・将来的に介護保険制度は廃止し、累進性を組み込んだ税方式にすることを検討する






で、ここからが重要なんですが、れいわがいうところの増税というのは、そのほとんどが企業とそこで働く人間に集中してる点です。ちなみに、法人税は実際にはそのほとんどが従業員の賃金に転嫁されるため、法人の課税強化=サラリーマンの負担増と考えて問題ないです。

要するに「消費税は廃止しろ。足りない分は企業とサラリーマンに負担させろ」というのが彼られいわの主張ですね。

そう考えると、上記デモの見方がずいぶんと違ってくるはず。

「自国通貨はいくらでも刷れる」なんて本気で考えているMMT支持者なんて恐らく3割もいないと思いますね。

れいわ支持層以外は、そのほとんどが「全部分かった上で参加している自営業か無職」でしょう。

彼らに共通するのは「とにかく消費税だけは逃げられないので廃止してほしい。足りない分はサラリーマンから天引きしろ。昔はそれでやってたんだから昔に戻せ」ということでしょう。

なんでこのタイミングで盛り上がってるのかというと、やはり所得税減税議論の影響でしょう。

賛否はありますが、あれで所得税の減税が実現してしまうと、消費税を下げる余力はもう日本社会からは完全に消滅してしまいますから。

「税こそが財源であり、消費税を下げるには法人税や所得税等を上げないといけない。逆に言えば先に所得税を下げられてしまえば消費税を下げることはもう不可能」ということは、れいわ界隈の人間はよくわかっていて、だから焦っているんでしょう。

あとは、少なからぬサラリーマンが社会保険料負担の重さに覚醒し、社会保険料の引き下げと消費税による置き換えが選択肢の一つとしてクローズアップされていることも影響しているはず。



年金保険料を消費税に置き換えるのはサラリーマンにとっては負担減ですが、もともと保険料なんて払ってない連中にとっては単なる消費税増ですからね(苦笑)

そうした状況に危機感を持つ人たちが集い、財務省解体を叫んでいると考えれば、バカどころか相当に狡猾でしょう(まあサラリーマンで上記デモに参加してました、という人は真正のバカでしょうけど)。

だって財務省を解体しちゃえば、まあ消費税廃止は厳しいかもしれないですが少なくとも消費税を引き上げようという圧力は消滅するでしょう。

どさくさにまぎれて半分の5%くらいにでも出来れば、彼らはまたあのほとんど税負担無しでほぼすべてのインフラを享受できた夢のような時代に戻れますから。

所得税は自分で確定申告している人は色々調整出来て抑えられるし国民年金は月16,980円の定額です(それすら未納の人も少なくはない)。

消費税さえやっつけられれば界隈の人たちにとっては夢のような美味しい暮らしが待っているのです(サラリーマンには地獄の日々でしょうが)。

そう考えると、ああしたデモは単なるバカの一言では片づけられないですね。


※れいわは一応社会保険料の引き下げも口にしていますが政策集をよく見ると「国民健康保険料や介護保険料などの社会保険料を国庫負担で引き下げる」となっているので高齢者や無職が対象であり、サラリーマンは対象外と思われます。




以降、
財務省を潰したら何が起こるか
減税議論が迷走するワケ







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Q:「中途採用で感じた違和感の正体は?」
→A:「最初に感じた違和感は意外と大事だったりします」



Q:「Z世代は本当にワークライフバランス重視?」
→A:「人によりますが、大切なのは人事制度に見合った人材の採用です」




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