どうして“静かな退職”って流行ってるの?と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。

最近、メディアで「静かな退職」なる言葉を目にする機会が増えました。要するに、在籍は続けるけれども出世や昇給目指してあくせく働くのではなく、最低限のことしかやろうとしない働きかたを選択する人たちのことですね。








なぜ彼らは頑張ることを諦めてしまうんでしょうか。そして、なぜ今、そうした働き方、生き方がクローズアップされているんでしょうか。

いい機会なのでまとめておきましょう。


転職では問題が解決しないわけ


筆者は静かな退職浸透の理由は大きく分けて2点あると考えています。

まずはなんといっても日本企業の人事制度の問題でしょう。

これまで何度か言及してきましたが、日本企業で一般的な年功序列制度においては、多くの人の出世競争は実質的に40歳前後、ポストでいうと課長職あたりで終了します。

もちろんそこからさらに課長→部長→本部長みたいに上がっていく人もいますがごく一部で、大半の人は課長かヒラでキャリアの白黒がついてしまうわけです。

するとそこからは事実上「キャリアの消化試合」となります。まあ頑張れば多少は賞与に色付けてもらえる会社もありますが、大半の人は大なり小なり以下のようなスタンスになりますね。


・チャレンジしてももう昇給も出世もないので新しいことはやらない
・転職やスキルアップにも関心がない
・といってなにもしないわけでもなく、怒られない程度に最低限のことはやる

筆者は“省エネモード”とか“消化試合モード”と呼んでいますが、これが「静かな退職」の本質でしょう。

フォローしておくと、かつてのように定年が55歳で、しかも年々売り上げも組織も右肩上がりで大きくなっていた時代だったらそれでも問題なかったんでしょう。

大卒者ならほぼもれなく課長以上に出世出来たからまだまだ40代以上でもギラギラしていた人が多かったし、省エネモードに突入してしまっても、せいぜい55歳定年までの10年ちょっとで済みますから。

90年代以前にも消化試合モードの人はいるにはいましたけど、ニュースになるほどの規模ではありませんでしたね。

でも、21世紀の現在、日本企業を巡る環境はがらりと変わってしまいました。実質的な定年は65歳に延び、政府は70歳への引き上げも視野に入れ始めています。

にもかかわらずどの業種でも組織のフラット化、効率化がすすめられポストは慢性的に不足、多くの人間が早々に消化試合モードに突入することを余儀なくなれます。

環境の変化に人事制度が対応できていない結果、望まずとも静かな退職を選択せざるをえない人達が増えてしまったということでしょう。

ただ、一つ疑問が残ります。なぜ、彼らは転職という選択肢をとらないんでしょうか。

「ゼネラリストとして育成されてしまったため、転職したくても出来ない」という人もいるんでしょうが、筆者はそこには別の事情があると見ています。

それが2つめの理由で、一言でいうと「社会保険料の過重な負担」です。

筆者は10年以上前から一貫して「サラリーマンの社会保険料ぼったくられすぎ問題」を唱えているので実感としてよくわかるんですが、この5年ほどで急激にサラリーマンのこの問題への認知が高まりましたね。

10年前には「労使折半なんて嘘だから。全部サラリーマン本人の負担だから」といってもほとんどの人は「??」みたいなリアクションでしたけど、今は「会社負担分も合わせれば我々の実質的な社会保険料負担は30%だ」と言っている人は普通にいますから。

そうそう、つい先日衆院で可決された年金改革法案(例のサラリーマンの積み立てている厚生年金保険料を流用して基礎年金全体の底上げをするやつ)に対し、激怒したサラリーマンが(連合の支援を受ける身でありながら法案支持にまわった)立憲民主党に抗議の電話をかけまくっているとのこと。





たぶん議員も年金官僚もビックリしているんじゃないでしょうか。これまで負担をおしつけ放題だった「物言わぬサラリーマン」が急に怒りの声を上げ始めたわけで。

従来は気付かなかった負担が可視化されることで、

→今までは前向きに働いていた層にも「今の仕事は割に合わない」と感じる割合が拡大する

→「どうせこれ以上頑張ったって天引きされる金額が増えるだけだろう。だったら最低限のことだけやってやり過ごそう」と考える層が拡大する

というのが、静かな退職のトレンドが加速している理由だというのが筆者の見立てです。

そう考えると、転職が最初から選択肢に入っていないことも説明がつきますね。転職したって日本で正社員として働く以上、天引きから逃げられるわけではないですから。

要するに「日本という国でマトモに働くことがバカらしくなった人達が増えている」というのが、静かな退職問題の本質だと言えるでしょう。




以降、
一方、若手の間で広がる静かな退職とは
オススメは「静かな退職」よりも「静かなプロフェッショナル化」






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Q:「中途入社ですが入社後に上司と交渉は可能ですか?」
→A:「まずは交渉可能かどうかの確認を。次の転職は慎重を期すべき」



Q:「技能職から総務人事への異動について」
→A:「具体的な役割をイメージしてもらうといいかもしれません」





おすすめ書評
「100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図」






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日本企業ってなぜ人が足りないくらいがちょうどいいの?と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、リストラ計画を発表した際のパナソニック社長の「人は足りないくらいでちょうどいい」という発言が話題となりました。

筆者もそれに関連して以下のような投稿をしたら予想以上の反響がありましたね。





あと別件ですがこっちもバズってます。





実は、「慢性的な人手不足」と「有給がなかなか取れない状態」というのは、終身雇用とは切っても切れない関係で、一種の風物詩みたいなものなんですね。

とはいえ、筆者以外に指摘している人がほとんどいない話なので、まだまだ知らない人も多いんでしょう。というわけで、いい機会なのでまとめておきましょう。

このタイミングなら、キャリア的な次の一手の参考にもなるはずです。


日本企業が雇用調整する方法


採用時に具体的な仕事内容を職務記述書で取り決めるジョブ型では、後から極端に業務量が増えるということは基本ありません。

突発的な繁忙期はありますが、職場のみんなが徹夜や休日出勤しなければならないような状況が続くなら、新規採用で対応するためです。

一方、わが日本国においては、突発的な繁忙期にくわえ、あらかじめ予想される繁忙期に対しても新規採用は控えられ、かわりに今いる従業員が残業で対応することになります。

恐らくほとんどの人が「年に数回の繁忙期があり、その時期は月100時間くらいは残業しないと回らない」という状況に身に覚えがあるはず。

でもあらかじめ繁忙期がわかっていても人員は増やされず、むしろ暇なときにちょうどよいくらいの人数しか配置されていないでしょう。

なぜか。それは終身雇用を維持するためなんですね。繁忙期にいちいち人増やしてたら、暇になったら誰かを解雇しないといけませんから。

人を増やしたり減らしたりする代わりに、残業を増やしたり減らしたりして雇用調整しているわけです。

だから、日本では会社側はもちろん、労組も長時間残業には基本的に寛容でした。国も残業時間に上限を設けず、永く青天井で放置してきたわけです。

さらに言うなら、日本企業で一般的なメンバーシップ制度(ジョブ型と対照的に入社時に具体的な業務内容が決められておらず、仕事量も内容も流動的)も、この仕組みと密接に結びついたものです。

繁忙期にみんなが業務量を青天井で増やせるためには、最初から業務範囲を明確に線引きせず、入ってくる仕事をどんどん手の空いた人間に振れる方が便利ですからね。

たまにXなんかで「同僚が退職した穴をみんなで頑張って埋めたら、翌年に欠員補充されるどころか枠が正式に減らされた」みたいな投稿している人がいますが、あれも同じですね。

別に業務量や範囲を定めているわけではないので、皆が頑張って回せるなら(管理部門的には)「だったら普段からそれでいいじゃん」ってなってしまうわけですよ。

結果、終身雇用を柱とする日本型組織では、長い目で見ると人手不足&長時間残業が慢性化する傾向があります。

余談ですが、「Geisya」「Harakiri」と同様に英語化された日本語に「Karoshi」があります。海外でも高額年俸をもらう金融業なんかで死ぬ人はいますけど、年収600万円くらいの普通のサラリーマンが死ぬのは日本だけなので、日本にしか無い奇妙な現象として、芸者、切腹同様にそのまま英語になっているわけです。


【参考リンク】死ぬまで働く日本の若者 「karoshi」の問題


それでこの過労死ですが、言うまでもなく「残業で雇用調整する終身雇用」の副産物ですね。

まあ一か月くらいの繁忙期なら残業だけでも回るんでしょうが、半年以上、企業によっては1年以上それが続いているケースも往々にしてありますね。個人ごとに業務範囲を定めることなく、入ってくる仕事をばんばん振るうちに気づいたら誰かがぶっ壊れていた、という話です。

一応、筆者自身は15年以上前からこの問題を色んな立場の人たち(経営者、労組の偉い人、政治家、労働弁護士、プロデューサー等)に説明してきましたけど、反応はおしなべて「終身雇用を守るためだから仕方ないよね」みたいな感じですね。

そもそも50年以上前からこの問題が存在しているにも関わらず、一向に解決する気配が見えないことからは、当事者(会社、労組ともに)に本気で解決しようという意欲がないことは明らかでしょう。

そういう意味では、パナソニックトップの発言は昔ながらの日本型経営にのっとったもので、特に過激でも目新しくもありませんね。

それに対して「長時間残業ガー」とか「過労死ガー」とか言ってる人達は、いい加減問題の本質である終身雇用にメスをいれるところまで発想を広げるべきなんじゃないでしょうか。

「大変だー大変だー」って騒ぐのはもう50年やったんだからそろそろ卒業しましょうね。


日本人が有給休暇を取るのが下手くそなワケ


では、もう一つの「なぜ日本人は有給休暇が取れないのか」はどうか。

こちらは終身雇用というより、そのプラットフォームであるメンバーシップ制が理由ですね。
業務範囲があらかじめ明確化されていないと、有給休暇というのはきわめて取りづらいものなんです。

たとえば、夏休みの課題があるとします。学校側が生徒に個別に課題を与えていれば、どう取り組むかは個人の裁量次第。

「自分は最初の2週間に集中して取り組み、後半の2週間は北海道旅行に行きます」なんてことももちろん可能です。

これが、たとえば「体育館の壁一面にクラスみんなで巨大アートを描く」みたいな課題だったらどうでしょう。

基本、完成するまで夏休みの間中みんなで毎日集まってシコシコやるわけですよ。
「オレ北海道行くから後半2週間よろしくな」とか普通言えませんよね。

言うまでもなく、この「担当を割り振らず、みんなで集まってシコシコ」パターンこそ、みんな大好き終身雇用のメンバーシップ型なんです。





以降、
日本人が有給休暇を取るのが下手くそなワケ(後編)
「会社のために死ねる人間」はもう会社も必要としていない






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Q:「社内でも職種によって給与に差をつけるべきでは?」
→A:「全社員をひとくくりにすることに無理があります」



Q:「氷河期世代の“救済”って、なんか宗教っぽくないですか?」
→A:「なんか成仏させようとしてるみたいですね」



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Fラン大と高卒、どっちが幸せなの?と思ったときに読む話

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ここ数年、企業の高校卒業者に対する採用ニーズが高い伸びを示しているという記事が話題となっています。

筆者も関連してつぶやいたところ結構なレスがあって驚きました。皆さん相も変わらず学歴ネタはお好きなようで(笑)






なぜ日本企業は高卒者の採用を増やしているんでしょうか。そして、Fラン大卒業と高校卒業、果たして本当に幸せなのはどちらでしょうか。

いい機会なのでまとめておきましょう。


普通の人がFラン大に進学するメリットはゼロ


まず、企業が高卒採用を増やしている理由ですが、社会全体が緩やかにジョブ化しつつある点が大きいです。

人手不足を理由にあげる企業も多いですが、本当にそれだけが理由ならバブル期みたくFランだろうがEランだろうが、バカスカ採れば済む話。

でもそれはイヤで高卒がいいというのは、要するに現場で早いうちにジョブを叩きこもうというジョブ型の発想であり、従来のポテンシャル型の否定なわけです。

ちょっと前にJR西が高卒、大卒関係なしに同じ処遇で新卒採用をスタートさせるというニュースが話題となりましたが、本質的には同じ流れと言えるでしょう。






社会がそういう方向に進んでしまうと、今後ますますFラン大の存在意義は無くなっていくはずです。

いわばFラン大卒という学歴は「私には良い大学に行けるほどのポテンシャルも、手に職をつけるという意欲もなく、4年間プラプラしてしまいました」という負の証明書みたいなものだからですね。

ちなみに、先述のつぶやきに対してついた反論を見ていくと、以下のようなものがありました。解説がてら紹介しておきますね。

「でも高卒枠の無い企業は大卒じゃないと採用されないだろう」


大企業についてはそうですが、そもそも大手はFランク大を大卒とはみていないため、面接以前に弾かれます。

業種にもよりますけど、MARCH以上希望で、それ以下でも過去に採用実績のある大学でなければ面接までは引っ張らないという企業がほとんどでしょう。


「高専や工業高校は金の卵かもしれないが普通高校はそうでもない」



大手の中でも最も処遇の高い製造業(トヨタや新日鉄等)に採用されるのは高専や工業高校卒であり普通高校はそこまででもない、というのは確かにそうです。

ただ、仮にFラン大卒者と同じようなランクの職場に就職したとしても、普通高校を出て働いてきた人間には以下の強みがあります。

・4年間実務でスキルを磨けている
・4年分の給料(+Fラン大に払わずに済んだ4年分の学費)

それで十分でしょう。

というわけで(家業継承が決まっていて後は箔をつけるだけ、みたいな人を除いて)やはり普通の人がFラン大に行くメリットはゼロだ、というのが筆者のスタンスです。





以降、
バブル世代に無理して入社できてしまった人達はその後どうなったか
これから大卒か高卒かより重要なこと







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Q:「某社のジョブ型による賃下げは制度趣旨と矛盾してませんか?」
→A:「明らかに矛盾していますね」



Q:「すごく回り道している新人について」
→A:「まあジョブ型の影響でしょうね」



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映画「PERFECT DAYS」をキャリア観点から考える

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「PERFECT DAYS」という映画があります。役所広司主演、ヴィム・ヴェンダース監督でカンヌで男優賞も取っているので「見た」という人も多いでしょう。



【公式サイト】「PERFECT DAYS」


筆者も昨年アマプラで視聴したんですが、平凡な主人公の日々の出来事を淡々と描くスタイル(筆者が最も苦手とするタイプ)のため「こりゃ30分持たないだろう」と思ったにもかかわらず、なぜかぐいぐい引き込まれてエンディングまで一気に見終えた記憶があります。

いや、ほんと刺さる人には刺さる映画だと思いますね!

ただ、先日、同じように「見た、そしていい映画だった」という知人と何気なく会話をしていて、あることに気づいたんですね。

本作はキャリアという観点から見ると、おそらく見た人のほとんどが抱いたであろう印象とはだいぶ違った話なのではないか。

(もちろんこういう作品に正解はなく見た人がそれぞれ解釈すればいい話なんですが)そしてエンディングまでに描かれた細かなディティール、設定をたどると、恐らくそれが作り手の置いた作品の本筋なのではないか。

というわけで、今回は本作をキャリアデザイン的に解釈してみたいと思います。視聴済みの人はもう一度記憶を掘り返してチェックしてみてください。未視聴の人には作品に触れるきっかけとなるかもしれません。


「PERFECT DAYS」とは何か


ネタばれして困る種の映画ではないので、おおまかなあらすじを紹介しておきましょう。


主人公の平山は、渋谷区内の公衆トイレの清掃人として働いている。現場に自家用車で直行直帰し、会社とは電話でしか連絡しないことから、おそらくは業務委託なのだろう。

まだ薄暗いうちに起床し、身支度を整えてから車で出勤。身支度の順序から各トイレを回るルートまで、平山の一日は細部まで決められた手順に沿ってきちんと繰り返される。

その丁寧な姿勢は仕事でもいかんなく発揮され、もう一人の若い相棒が呆れるほどに平山の作業内容は丁寧でけして手を抜くことはない。

とはいえ、そんな平山の生活にもささやかな変化は紛れ込んでくる。新たな出会いがあったり、ずっと疎遠になっていた親族と再会したり。

決められた日々を繰り返す平山と違い、周囲はある意味、そうした秩序をはみ出して生きている。行動も予測できないし感情表現も豊かだ。

平山も振り回されるし、時に感情もつられて表に出てしまう。

そして、あるささやかな(だが恐らく本人にとっては重要な)出会いの翌朝。いつものように車で出勤する平山の顔は、なぜか泣いている。その表情は何かを悲しんでいるようにも逆に笑っているようにも見える、というシーンで終幕。

多くの人は、平凡な労働者である主人公が、日々のささやかな出来事に幸せを見出そうと努力し、その日々の中で抱いた喜びと悲しみに対して感情をあらわにするのがラストシーンだ、それも含めて「PERFECT DAYS」なのだ、といった解釈だと思います。

何を隠そう、筆者も最初はそう思っていましたし。

ただ、一部の人は、平山は自身の人生に後悔を感じており、それがラストの涙の意味だと感じるそうです。家庭を作るでもなく、自分の好きなことだけをやって生きているように見えるのが理由のようです。

ところで、筆者が知人と話していてさらに別の3つ目の解釈があるのでは?と思うに至ったきっかけについて。

ラストシーンで、もし主人公がニコニコしながら「よーし今日もがんばるぞ」ってやった瞬間に映画の世界観が崩壊し、なんだかよくわからない2時間ドラマみたいなノリになってしまうだろう、という点で意見が一致したからですね。

その理由ですが、半分仕事柄でしょうけど、あの表情に至る伏線がそれまでの作品中に丁寧に描かれているように思えるからです。それらは以下のようなものです。

・日常をルーチン化することへの強いこだわり
・主人公が唯一声を荒げたシーン
・親族と絶縁状態
・むしろ他人との関係の発展を避ける姿勢
・タカシという対極の存在

これらからは全く別の人物像がうっすら浮かんで見える気がしますね。そしてそれは、ビジネスパーソンにとってもけして珍しいものではありません。






以降、
数々の伏線が意味するもの
「PERFECT DAYS」が中高年に刺さる理由






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Q:「氷河期世代を援助するには何をすべき?」
→A:「はっきり言っちゃうともう最低保障年金くらいしかないですね」



Q:「AIってやばくないですか?」
→A:「小中学生は普通にAI使ってなんぼですね」





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「ジョブ型で君の賃金下げるから」と言われた時に読む話

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オリンパス子会社が全社ジョブ型賃金制度の導入を進める過程で、中高年社員の年功賃金を相当ドラスティックに引き下げているというニュースが波紋を呼んでいます。





これを受けてか「このまま逃げ切る予定だったのにこれからどうなるんだ」みたいな質問をいくつももらいました。

あと(たぶんバブル世代に加え氷河期世代もターゲットにされているため)「氷河期世代が可哀そうすぎるだろ」みたいな声もよく聞きます。

筆者は同社の件は全く存じ上げないので具体的なコメントはできませんが、ジョブ化に伴う年功賃金の引き下げはこれから一つのトレンドになるのは確実でしょう。

なぜ企業は今更逃げ切る気満々だった世代の年功賃金をはぎ取ろうとしているんでしょうか。そして、それに対して個人はいかに対処すべきなんでしょうか。

非常に重要なテーマなので取り上げたいと思います。


ジョブ化による賃下げは避けられないわけ


筆者自身は15年位前から一貫して「日本には解雇規制緩和が必須だ」という話をし続けてきました。

公には言わないだけで、恐らく経営者や経済学者といった識者はほぼ同じ意見だと思いますね。それは先の自民党総裁選で突然、複数候補の口から「解雇規制の緩和」が公約として飛び出した事実からも明らかでしょう。

解雇規制こそが、日本人の賃金の足を引っ張り、経済の新陳代謝を阻害するボトルネックとなっているためです。

ただ、実は解雇規制の緩和は実現できれば素晴らしいことだけれども、絶対に不可欠という状況でもなくなりつつあると、筆者自身は考えています。

ジョブ化が先行することで、もらいすぎの中高年の賃金を企業から見て適正な水準に引き下げられるなら同じことだからです。

よく言われる「働かないオジサン」なる存在は、実際の働き以上にもらっているから問題なわけですよ。

実際の働きに応じた賃金に引き下げ可能ならそれは単なる「給料の安いオジサン」であって、組織にとっては無害ですから。

というわけで、同種の事例はこれから増えることになるはずです(まあいきなり新人並みに落とすのはどうかとは思いますが)。それは解雇規制緩和を選択しなかった日本社会の必然なんですね。

それなりにまとまった金額の手切れ金貰ってクビになるのと、若手並みの給料に落とされるけど雇い続けてもらえるのと、どっちが幸せかは知りませんけど。

で、おそらく世上には「解雇はもちろん年功賃金の見直しもするな、年功序列を維持させろ」みたいな無茶なこと言う人がこれから出てくると思いますが、そりゃ無理ですね。

まず優秀者が採用できません。「うちは『働かないオジサン』が年功賃金を手放さないから、新人は初任給18万のまま、優秀者の賃上げも無しです」じゃあマトモな人材は採れませんから。

「日本の分厚い中間層を守れ」みたいなことを言うアホもまだいるんですけど、平均賃金でも一人当たりGDPでも先進国から脱落しかけている国のどこに“分厚い中間層”なんているんですかね(苦笑)





というより、ことここにいたってもなお終身雇用・年功序列を両方維持すれば、日本の没落は決定的になるでしょう。

良くも悪くも、先進各国は移民無しには経済が成り立たなくなっています。それは日本も同じで、育成就労制度や特定技能制度を通じて既に実質的な移民解禁に舵を切っています。





本来であれば、政府効率化省を通じて政府職員に大ナタを振るう米国のように、常に組織を効率化して余剰人員を労働市場に放流しつつ、それでも足りない働き手を受け入れるべきでしょう。





そんな中、日本だけが600万人ともいわれる社内失業者を囲ったまま移民受け入れを続ければ何が起こるか。

日本人の賃金も経済も停滞し続ける一方、そんな国で相対的にきつい仕事に就くことの予想される移民枠には、他国と比べ相当に質、素行に問題のある労働者が来ることが予想されます。

よくX上では欧州で大暴れする移民の動画が流れてきますけど、あれのもっとパワーアップ版がそこら中でリアルで発生することになるでしょうね。

要するに、泣いても笑っても、我々は前を向いて進む以外にないということです。

とここまで読むと「日本人にそんなハードルが越えられるのか」と悲観する人も多いかもしれません。

でも心配はいりません。実は日本人は、つい100年少し前に、武士の俸禄という超強烈な既得権全廃を実現し、その後に近代化を超速で成し遂げた実績がありますから。

先祖代々受け継いできた既得権を握り、いつ日本刀もって暴れだすかわからない物騒な集団を説得して再就職させることに比べれば。中高年にたかだか20年ほどの既得権を諦めてもらうなんて造作もないでしょう。

社会が前進するには常に新陳代謝が必要であり、特に一定の学歴や職歴のある中高年は、自分たちはその新陳代謝の最前線にいるんだという矜持をもって日々働くべきだ、というのが筆者のスタンスです。




以降、
彼らはいつ、何をどうすべきだったのか
団塊世代以降、終身雇用で元を取れた人はいない説









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Q:「パワハラ上司はいかに対処すべき?」
→A:「偉い人が相手だと難しいですが……」



Q:「介護報酬の引き上げは正しい政策?」
→A:「成長分野に人を移して経済成長、とは明らかに矛盾しますね」




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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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