今週のメルマガの前半部の紹介です。
こんな質問をいただきました。

【キャリアに一貫性は必要ないですか?】

はじめまして。いつもいろいろ勉強させてもらっています。
今回は「キャリアに一貫性は必要か」についてご意見を聞かせてください。

先日、ネットでこういう議論が盛り上がりました。私も人材業界の端に身を置く者として、キャリアの一貫性は何よりも重要だと考えています。城さんも「キャリアチェンジ出来るのは第二新卒まで、それ以降は人事は必ずそれまでのキャリアの延長線で人材を判断しようとする」と言われていたように思います。

こういう考えは古いんでしょうか?それとも、どこかに留意すべきポイントがあるんでしょうか?



要は「いろいろ経験していれば、東南アジアではこんなにチャンスがある!キャリアの一貫性なんてもう古い!」って言うことらしいですが、だったら実際そういう人は東南アジアに行けばいいんじゃないですかね。駐在員置くほどの金が無い日系企業の本社向け窓口として、現地採用プロパー+αくらいの賃金は稼げるかもしれませんね。良かったですね。筆者はぜんぜん興味ないですが。

という話で終わっても芸が無いので、もうちょっと突っ込んだ人事的な解説をしておきましょう。

キャリアに一貫性が必要な理由

日本企業の正社員で一般的な賃金制度は職能給と呼ばれるもので、「担当している仕事内容によって賃金が決まる職務給」とは異なり、個人の能力に対して賃金が支払われる仕組みです。そして、その能力なるものは勤続年数に応じて伸びるものだと考えられているため、基本的に年功序列的に上昇していくことになります。実質的な年功給ですね。

さて、この仕組みの下では、人は誰でも年齢にふさわしい職歴を積んでいる必要があります。年の割に「経験が浅い」とか「寄り道している」という人間はそれだけで悪とみなされます。だって、年齢である程度、お給料の水準が決まるルールですからね。35歳なのに「30歳でジョブチェンジしちゃったから今の職歴は実質5年未満」なんて人は、採用担当から見ればもうそれだけで極悪なわけです。

ついでに言うと、同じロジックは休職経験者や博士課程修了者や35歳オーバー求職者にもあてはまるわけです。女性は出産育児を機に退職するとなかなか退職前のキャリア水準には戻れない→出生率低下、年喰ってるポスドク→高学歴フリーター、35歳転職限界説→中高年は必死に会社にしがみつくorリストラされたら自殺率高い、なんて諸問題も、根っこは同じわけです。

これが、企業人事や転職コンサルが「キャリアには一貫性が必要だ」と口を酸っぱくして言う理由ですね。

フォローすると、すべての日本企業がキャリアに厳密に一貫性を求めているわけではありません。たとえば、ファミレスの前においてあるような無料求人誌を開けば「やりがいのある職場!未経験者歓迎!」「ゼロから懇切丁寧に指導します!」的な文字が躍る暑苦しい求人がいっぱい掲載されているでしょ?

先述のような価値観は、終身雇用がある程度は保証される中堅以上の規模の企業の話。だから中小零細企業や新興企業なら、やる気次第でいくらでも未経験者に門戸を開いてくれるものです。

逆に言うと、そういう会社は“終身雇用”や“定期昇給”なんてものとは無縁です。50歳になっても30代の頃と同じ給与水準かもしれませんし、ある日突然社長に呼び出されて「悪いけど、今週いっぱいで自己都合で退職してくれ」なんてこともあるかもしれません。要するに、出入りの敷居が低い分、チャンスも与えられやすいということですね。

まとめると、中小零細企業や新興企業(それからたぶん東南アジアも)なら「キャリアの一貫性なんてマジ無用」というのは正しいでしょう。特に地方の中小企業なんかに行けばマイルドヤンキーな経営者が「キャリアの一貫性?はぁ?そんなもんええからお前、やれんのか」とばかりに暖かく歓迎してくれるはず。

でも、都市部で中堅以上の企業に就職したいのであれば、良くも悪くもキャリアの一貫性はまだ意識しておいた方がいいというのが筆者の意見です。

フォローしておきますが、筆者自身は終身雇用・年功序列システムが望ましい状態だとは思いません。むしろものすごく副作用が多いシステムだから一日も早くぶち壊してしまえと言うスタンスです。でも、理想と現実は違うものなので、現実的にアドバイスするとすれば、上記のようなスタンスにならざるをえませんね。



以降、
第二新卒市場の使い方
“一貫性”には2つの意味がある
キャリアに一貫性が無い人が逆転するテクニック



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Q:「転職活動のために有休を使うのはアリ?」
→A:「アリですが、正直に理由を言うのは手ごたえがあるまで待ちましょう」



Q:「同性婚についてどう思われますか?」
→A:「興味ないので、別に反対する理由もないですね」







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大阪都構想が敗れたワケ


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