文藝春秋4月号の「“労働界のドン” 連合・古賀会長の連合大改造宣言」が結構面白いのでダイジェストで紹介しておこう。

“連合大改造”という点でははっきりいって大したことは何も言ってないのだが、会長のアベノミクスへの本音がかなり吐露されている。実は大改造宣言よりこっちの方が言いたかったことなのかもしれない。

・連合に傘下労組の交渉にとやかく言うパワーはない

意外と勘違いしている人も多いが、連合本部に傘下の企業別労組に命令する権限はない。彼らはあくまで“代表”であって上位命令者ではないからだ。もっと賃上げしろとか非正規もなんとかしろと呼びかけはするけれども聞く聞かないは企業別労組の自由だし、実際、民主党の派遣規制強化の時には電機連合は明確にNo!と言っていたほど。

一応、産別労組や連合といった企業横断的な労組はあるけれども、実体としては企業別労組の集まりだというのが日本の労働組合である。

・安倍政権はアリバイ作りに連合を利用しようとしている

にもかかわらず、安倍政権はたびたび連合を援護射撃するような賃上げ宣言を出し、政労使会議にも連合を引っ張りだした。なぜか。実体は弱いけど名前だけ売れていて目立つ連合は、これ以上は無いほど便利なアドバルーンだからだ。

アベノミクスが成功すれば、政府はきっと自分達の実績だと喧伝するに違いない。一方で、もしアベノミクスがこけたら「我々は何度も労使に賃上げを求め、出来うる限りのお膳立てをしたのに、彼らがそれに応えようとしなかったからだ」と責任転嫁される恐れがある。これが、古賀会長が安倍政権を警戒している理由である。

ひょっとすると「なぜ連合自身が賃上げに消極的だったのか」という一穴に焦点を当て、終身雇用という本丸に斬り込む絵を描いている人間が背後にいる可能性もある。

・アベノミクスは失敗する

「一部の大企業だけが賃上げしても、今のデフレを脱却するなんてありえません」(188p)

円安で輸出が伸びているならともかく、輸出は横ばい、むしろ原料コストアップで中小企業の業績は悪化し続けているのが実情だ。そんな中、一部の大手だけが交渉力の強さを活かして無理やり賃上げすれば何が起こるか。中小下請けからがっつり絞り取るだけの話だ。

というわけで、会長自身は大手よりむしろ中小企業や非正規雇用の賃上げや組織化に組織としては注力しているのだそうだ。その方向性は正しいと思う。

もっとも、生産が増えていない以上、そして大手の賃下げや解雇が出来ない以上、いくら注力したところで、そうした縁の下の賃上げが実現しないというのもまた現実だろうが。

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