法人税が消費税に置き換えられたって本当?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
参院選が近づいてきましたね(7.10投票)。

政策議論も盛り上がっているかと思いNHKの日曜討論でも見るかと思ってチャンネルを変えてみると…

議論が完全に明後日の方向に行っちゃってましたね(苦笑)

【参考リンク】自民党・高市早苗政調会長がれいわに猛撃「でたらめを公共の電波で言うのは止めて」


前回もテキストベースで軽く「共産党の主張がいろいろとおかしい点」について言及しましたが、れいわまでそこに便乗してきてもはや議論以前の問題となっている様子。

サラリーマンにとっても実は非常に重要なテーマでもあります。あとインボイスの話などもありますしね。というわけで今回はサラリーマン視点から見た参院選についてまとめておきましょう。


階級闘争という幻想


もともと左翼には階級闘争という考え方があります。すごく大雑把にいうと富裕層や財閥からとって再分配しろ、あるいはやっつけろといった考えですね。

現在ではかなり時代遅れな考えで、欧州ではそういう姿勢と決別した左派政党が普通に活動しています。たとえばスウェーデンで企業に解雇を自由に認めつつ、手厚い社会保障を導入することで経済成長と高福祉を両立させたのは社会党だったりします。

一方、わが国の左翼は相も変わらず階級闘争に固執しています。といっても日本の富裕層なんて数も資産もたかが知れているのでそこはイノベーションが必要です。

そこで共産党が考え出したアイデアが“内部留保”というわけです。「それ現金じゃないから」とか「会社を清算でもする気か?」など散々突っ込まれていますが、懲りることなく今も内部留保財源論を前面に打ち出していますね。




最近だとSNS上では「消費税は法人税を軽減するために導入されたのだ」という主張がプチバズっていますね。

この発想自体は10年以上前から使い古されているチープなロジックですけど、どうやられいわが便乗して若い世代に浸透させようとしているようです。






上記の図の最大のツッコミどころは、30年前の法人税収を唐突に持ってきて現在のそれとバッティングさせている点でしょう。

こういう図を見るときのポイントですが、何か不自然な点を感じたら必ずそこをひっくり返してみるべきです。たいていそこに「作成者の隠したい何か」が隠れているものですから。

というわけで実際の法人税収の推移を見ればあら不思議。ITバブル崩壊(2001年頃)やリーマンショック(2008年)で激しく変動しつつも、3度に及ぶ1%超の引き下げ(98年、99年年、12年)を挟んで下げ止まり、近年はむしろ上向いていることがわかります(以下「税収に関する資料」より)。

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というより、むしろ税収が下がっているのは98年の引き下げまで、法人税率が37.5%とメチャクチャ高かった時代なんですね。

なので、正しくは「法人税が高すぎて産業の空洞化が進んだため、対策として法人税が下げられた(そしてある程度は下げ止まりに成功した)」というべきです。

そういう経緯を無視し、バブル期の法人税収との比較だけで「消費税と置き換えられたのだ!」なんて言うのは確信犯的な詐欺だと思います。ヤクザが「兄ちゃん目が合ったから金払え」と恐喝するのと同じレベルの話でしょう。

まあ40歳以上のビジネスパーソンなら法人税と空洞化をめぐる議論はリアルタイムで目にしているはずなので騙される人はいないでしょうけど、若手はれいわや共産党発のデマに引っかからないよう注意しましょうね。

でも筆者は今回の討論を見ていて、色々と思うところがありましたね。だって、共産党とれいわというリベラルを代表する政党が、公共の電波で競うようにデマを流し情報弱者の囲い込みに精を上げているんですから。はっきりいって彼らがやっていることはただの貧困ビジネスでしょう。

仮に法人税を昔みたく40%台にあげたらどうなるか。企業は黒字事業をどんどん海外に出すので法人税収は激減、国内には介護とコンビニくらいしか仕事が残らないはずです。弱者の生活ははるかに厳しいものとなるでしょう。

消費税引き下げ、あるいは廃止も同じで、それは社会保険料の激増につながって現役世帯の首を絞めるだけでしょう。

「絶対実現しないから問題ない。ガス抜きとしてああいうのも必要なんだ」という人もいるんですけど、そうですかね?

たとえば維新の月6万円のベーシックインカム案みたいに実現可能なたたき台を出したうえであちこち手直ししてブラッシュアップしていくのが本当の政策議論なんじゃないですかね。

消費税ゼロとか法人税引き上げとか(聞こえはいいけど)絶対実現不可能なデマをぶちあげて議論が一歩も進まない状況を作り出して、それって誰が喜ぶんですかね?

筆者には彼ら左翼は弱者を扇動しつつ、どんどん出口の無い迷路に追い立てているようにしか見えませんけどね。



以降、
もともとインボイス推進の旗振り役だった民主党
悪いのはフリーランス?それとも野党?






※詳細はメルマガにて(夜間飛行)











Q: 「従業員意識調査にはどういう意味があるんでしょうか?」
→A:「おそらく社内で改革派と守旧派が争っているんでしょう」



Q: 「早期退職の面談を受けるよう言われているのですが、自分は退職候補ということでしょうか?」
→A:「とりあえず肩の力を抜いて面談に臨んでください」






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国民って政府のATMなの?と思ったときに読む話 

今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、twitterで「#国民は政府のATMなのか」どいう物騒なハッシュタグがトレンド入りしていました。

【参考リンク】#国民は政府のATMなのか


いろんなレスが殺到していますが、大方は政府の対応を批判するものですね。まあ気持ちはわかるんですけど政府批判だけだと底が浅いんですよ。なんの問題解決にもならないわけで。

特に、例によって懲りずに安倍政権批判などにつなげて騒いでいる人たちをみるともはや伝統芸能か何かの一種でも見ているような気分になります。

国民負担はこの数十年、民主党政権時代も含めて一貫して上がり続けていますからね。

さて、本当に国民は政府のATMなんでしょうか。だとすれば、それから身を守る手段はあるんでしょうか。いい機会なのでまとめておきましょう。


国民すべてじゃなくサラリーマンが、そして政府じゃなくて高齢者のATMです


政府が国民をATM代わりに使っているのは事実でしょうが、問題は「何のためにお金を使っているか」です。
以下の図を見れば一目瞭然。国民から引き出したお金は社会保障給付に使っているんですね。社会保障給付の65%は高齢者関係ですから、国民をATMとして使っているのは高齢者ということになります。


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なんてことを言うと「高齢者の社会保障をカットすれば将来自分が困るだけだ」なんてことをいう小学生がいるんですが、日本の社会保障は賦課方式といって現役世代の保険料で高齢者を支える仕組みです。

高齢者の給付を見直せば現役世代の負担も軽減されますけど、増え続ける給付を放置すれば負担はジリジリ上がり続けますよということを上記の図は示しているわけです。将来の心配なんてしてる場合じゃないですね。

ついでに言うと、ATMとして使われているのはすべての国民というわけでもありません。

反社の人は元々消費税くらいしか払っていませんし、無職や高齢者もそうですね。フリーターや自営業の人は消費税に加えて定額の国民年金、それから国保は払うことになっていますけど、まあそれくらいは当然でしょう。

問題なのは、“労使折半”の名のもとに社会保険料約30%(実際には実質本人負担)に所得税等を込みで約4割も天引きされるサラリーマンですね。

【参考リンク】迫る会社員保険料30% 健保連「22年危機」と改革訴え

特にサラリーマンの場合、「所得捕捉率100%で天引き」という点が重要ですね。

自営業やフリーターなら「お金の使われ方に納得できない」と思えば未納という形で逃げることも可能だし、反社の人たちなんて最初から地下に潜ってるから搾り取ろうにも絞れないわけです。

そこいくとサラリーマンは丸裸な上に逃げ場なんてないわけで、文字通り“人間ATM”みたいなもんですね。

というわけで、件のハッシュタグですが、より正確には「#サラリーマンは高齢者のATMなのか」とすべきでしょう。

あと、上記ハッシュタグに集まってるコメントで結構な数が「財務省が諸悪の根源」って言ってるんですが、アホですね。

年貢一杯とっておきながら武士階級が優雅に暮らしてるだけの江戸時代ならわかりますけど、今は令和ですよ令和!

徴集されたお金がどう使われているかくらいちょっと調べればいくらでも出てくるし、実際に使われている原因をスルーしたまま財務省ぶっ潰しても別の組織が第二財務省として同じことするだけです。

それと余談ですけど、れいわ支持者のように「消費税の引き下げ」を主張する人たちというのは上記でいうところの「サラリーマンではない人達」がほとんどです。

彼らの多くは消費税くらいしか払っておらず、それさえなくせば文字通りの無税国家で暮らせるので、あれだけ一生懸命になっているわけです。

そして、彼らは本音では消費税を無くせば、その分の負担がどこへ行くかわかってやっていると思います。そう、それは社会保険料という形で“人間ATM”であるサラリーマンが負担することになるでしょう。

というわけで、サラリーマンでれいわとか消費税引き下げ政策を支持してる人ってだいぶ頭がおかしい人だと思いますね。身近にいたら注意してあげましょう。






以降、
今や貧困ビジネスの雄、日本共産党!
政府が正社員制度に固執するもう一つの理由






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Q: 「GWに社員旅行する職場ってどう思います?」
→A:「別にいいんじゃないですか。社員旅行は死んでも行きませんけど」



Q: 「若手だけ限定でジョブ化というのは可能でしょうか?
→A:「若手だけジョブ化は筋が悪いです」


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男女の賃金格差の開示義務化で何が変わるの?と思ったときに読む話

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政府の「新しい資本主義実現会議」において、企業内の男女間の賃金格差についての情報開示が義務付けられることが決まりました。

【参考リンク】政府、男女賃金格差の開示義務化 今夏の施行目指す


従来の女性活躍推進法では女性の管理職比率や男女別の育休取得率などの開示が義務付けられていましたが、あらたに賃金格差も含めるということです。

管理職比率なら「個人の価値観の問題が~」とか誤魔化せますし、育休取得率は男性社員に2か月くらい短期でとらせれば誤魔化せますけど、給料は長期の格差の積み重ねの結果ですからね。その会社の価値観がはっきりでてしまうはず。

賃金格差はある意味でもっともリアルに企業内のジェンダーギャップを示す指標です。企業の中には正直嫌がるところも多いと思いますね。

日本企業は男女間の格差にどのように取り組んでいるんでしょうか。そしてそれはこれからどこへ向かうんでしょうか。いい機会なので取り上げておきましょう。


女性が活躍できる企業、出来ない企業


女性の活躍という観点から見ると、日本の会社は大きく4パターンに分類できます。賃金格差の大きな順に並べると以下のようになります。

1.今でもバリバリのコース別採用をおこなっている会社

いわゆる幹部候補である総合職と、勤務場所や業務内容が限定される一般職を分けて採用している会社ですね。

もちろんどちらのコースを選ぶかは自由ですが、一般論としてコース別採用を行っている企業は女性をあまり総合職としては採らないですね(だからこそコース別にしているわけで)。

また、一般職として入社後も昇給は30歳くらいで頭打ちになり、結婚や妊娠といった節目ごとに退職する人が多い印象があります。今どき“肩たたき”をやっている会社は少ないとは思いますが、なんとなくそうしたタイミングで離職する空気が出来上がっている感じです。

当然ながら、男女間の賃金格差は大きく出るはずです。


2.コース別採用は廃止したけど見えない天井は健在な会社

コース別採用のように見える格差は廃止してみたものの、ある程度のポジション以上はほとんどが男性で、賃金格差もなかなか是正されていないという企業が最も多い印象があります。要するに“見えない天井”というやつですね。

入り口を見直すだけではダメで、日本型雇用制度そのものに男女間の格差を生み出すものが内包されているのが理由です。

こういう企業ってダイバーシティへの意識は高いんですよね。でもなぜ格差が縮まらないのかまではわかっていない。「経営トップから女性管理職を引き上げろと言われているがどうやったらいいのかわからない」と嘆いている人事の偉い人は少なくないですね。


3.そもそも女性をほとんど採用していない会社

一方で、いまだに昭和のころからほとんど価値観を変えず、ほとんど女性を採っていない会社もまだ一部には存在します。

大手メディアのような有名企業の中にもあります。人気があり何もせずとも若い男子の母集団ができるから、わざわざ多様化の努力なんてする必要ないんですね。

とはいえ、どんな企業にも必ず縁故入社はあるものなので、少数ながら女性も採用はされています。
恐ろしいことに、縁故入社がゆえにそこそこ出世昇給もするし肩を叩かれることもないので、賃金格差がほとんどなかったりします。

たぶん実際に男女の賃金格差が公開されると、ダイバーシティとは無縁なイメージがあったにもかかわらずギャップの少ない企業が出てくると思いますが、間違いなくこのパターンですね。


4.男女間でまったくギャップがないか、むしろ女性の方が活躍している企業

女性社員6割というP&Gは有名ですが、他にも外資や新興企業では男女間の格差はほとんどないという会社は割と多いです。

これはP&Gのようにもともとそういうカルチャーがあったという会社もありますが、他の日本企業があまりにも男性に偏重した採用を行う結果、特に新興企業などではダイバーシティを進めるしか選択肢が無かったということでしょう。

では女性にとっておススメの会社はどれか。1番3番は論外として、4番は文句なくオススメです。

ただ新卒にせよ中途にせよ狭き門が予想されるので、ダークホースとしては2番、そしてその中でも「人事制度そのものの見直しに着手している企業」がオススメとなります。

女性の活躍を阻害しているものと日本型雇用が抱える構造的な課題は、本質的には同じものだからです。





以降、
これからすべての日本企業は女性の活躍が不可欠になる
女性の働きやすい会社が男性にとってもオススメなわけ







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Q: 「デジタル化で余剰人員をクビ!なんてホントに出来るんでしょうか」
→A:「私も出来ないと思いますが……」




Q: 「ヘッドハントを信用して大丈夫?」
→A:「ヘッドハントする側も採用する側も嫌がらせするほど暇じゃないです」





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維新って弱者の味方なの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、ある調査結果が発表され、一部で話題となりました。

【参考リンク】「維新の会は『経済的弱者の味方』」…? 有権者の「政党イメージ」を調査して見えた驚きの結果


要旨:全政党中「経済的弱者の味方」「一般人の感覚に近い」でトップをとったのは維新の会で、自民、立憲民主、国民民主、そしてれいわといった他党の支持者の間でも「維新は経済的弱者の味方である」という認識はしっかり共有されていることがわかった。

なんだ、みんなよくわかってるじゃん(笑) でも、そういう認識の人はまだまだ少数派だろうなと思ってましたから純粋にサプライズでしたね。

なぜ維新は「経済的弱者」の味方たりえるのか。そして日本の本当の課題とはなんなのか。いい機会なのでまとめておきましょう!


持たざる人が維新を支持するのは実は合理的


日本には、色々な分野に業界団体が存在し、官僚が規制を通じて彼らの既得権を保護したり、指導に従わせるという特徴がみられます。行政裁量と言われるものですね。

農協や医師会などが有名ですが、サラリーマンも企業という入れ物を通じて、このシステムにしっかり連結されています。

筆者はこの特定の団体を通じた緩やかなコントロールシステムのことを“日本型システム”と呼んでいます。

メリットとしては、企業に雇用という形で社会保障を丸抱えさせることで、政府としてはずいぶんと安上がりに社会を安定させることができます。

記憶に新しいところでは、コロナ禍に際して、政府は各種の助成金をばらまいて企業に既存の雇用を維持させてましたけど、あれなんてまさに日本型システムを通じたコントロールの典型ですね。

(もともと終身雇用で賃金を低く抑えさせていたことにくわえ)助成金をばらまくことにより、他国の失業率が二桁に跳ね上がる中、日本のそれはずっと3%前後と安定しています。

「給料は上がらないけど、安定しているからこれはこれでいいんじゃないか」と思う人もいるでしょう。でも、この日本型システムでは報われない人も存在します。以下のような人たちが典型です。


・非正規雇用労働者

当たり前の話ですが、みんなを正社員にして終身雇用の枠組みで保護するなんて不可能です。不況時には誰かが身代わりに使い捨てになってくれないと困ります。
「企業は正社員を整理解雇する前にます非正規雇用を解雇すべし」という有名な判例もありますね。

・シングルマザー

終身雇用制度というのは、一言でいえば社会保障機能を民間企業に丸投げすることです。すると、当然ですけど企業はその負担の少なそうな人材だけを選んで採用しようとします。
若くて体力のある男性が理想ですね。シングルマザーはその対極であり、多くの日本企業が採用対象からは意図的に排除しています。

・中小零細企業の正社員

そして同じ正社員でも終身雇用を丸抱えする余裕のない中小・零細企業の正社員はやはり報われません。

残業や転勤させ放題といったメンバーシップ型の働き方はさせられる一方で、会社都合でばんばんクビも切られるし会社も簡単にとびますから。

でもセーフティネットを整備する義務は政府にはありません。悪いのは「終身雇用を提供できない会社」であり、そういう会社に就職した本人の自己責任だからです。

ではこうした経済的弱者はだれに投票すべきなんでしょうか。自民党でしょうか。自民党はまさに日本型システムを作り上げ運用してきた当事者なので期待薄でしょう。

では立憲民主党?勘違いしてる人が多いんですが、立民というのは連合という「日本型システムの恩恵の最大享受者」を支持母体としています。

一応リベラルという立ち位置なので仕方なく“格差是正”とか口にはしますが、既存制度の枠の中にいる人たちのこと以外は基本的に無関心。いざとなれば鬼の形相でえげつないほどの弱者切り捨てを敢行します。

「公務員人件費を2割カットいたします」といって政権取ったら新規採用を5割カットした実績は伊達じゃありません。

【参考リンク】国家公務員採用半減の方針 若者にしわ寄せに怒りの声





では共産党はどうでしょう。「大企業の内部留保に課税しろ」とかそれらしいこと言ってはいますが、彼らは終身雇用も正社員制度も見直しは一切主張していません。

むしろ有期雇用の上限強化などで正規雇用の既得権をガッチガチに強化するスタンスですね(上限が短くなることで付加価値の低い作業だけが非正規雇用に集中するので)。

共産党と日弁連が推進した有期雇用の上限ルール強化がむしろ有期雇用労働者を不安定化させた事実は風化させるべきではないでしょう。

【参考リンク】なぜ理研は600人もの研究職を雇い止めするのか


要するに既存政党のほとんどは程度の違いこそあれ、基本的に終身雇用という日本型システムの枠内で考え、その中でしか行動しない人達なんですね。

現行のシステムから漏れた人が支持するメリットなんてほぼゼロだと思いますね。特に、そうした人たちがリベラル政党を支持するのは「肉屋を支持する豚さん」になるようなものでしょう(むろん与党を支持するメリットもゼロですが)。

ただし、近年は一つだけ、日本型システム自体の見直しをマニフェストに掲げる政党が登場しています。そう、維新の会ですね。

先の衆院選のマニフェストにもきっちりと「解雇規制の緩和による労働市場の流動化と、雇用形態によらないセーフティネットの整備」を明記しています。

わかりやすく言い換えれば「雇用とセーフティネットを切り離したうえで、後者は誰でも使えるようにしますよ」ということです。

実現できるかはともかくとして、いま「正社員の枠に入れていない人」にとって、唯一の解決策だと言えるでしょう。

同様の政策は、かつてみんなの党が取り上げていたこともありましたが、メイン扱いではなかったですね。自民党も第2次安倍政権の出だしのころにちっちゃく取り上げてましたがすぐ消えた記憶があります。

それらに比べると、主要政策の一つとして取り上げているのは立派だと筆者も思いますね。というわけで「維新が経済的弱者の味方だ」という見方には、一定の合理性があるということになります。

確かに一部の人が言うように「維新はアピール上手だからだ」というのもあるでしょう。でも、無党派層と違い明確な支持政党がある(つまり政策内容の違いをある程度は理解しているはずの)人達からも「維新は経済的弱者に優しい」と認識されているという事実は無視すべきではないと思いますね。

特に、リベラルの代表でありながら「弱者の味方になってくれる」「一般人の感覚に近い」でそれぞれ維新にダブルスコアで惨敗している某党は真剣に立ち位置を見直すべきでしょう。

あんたら「公務員と大企業正社員のことしか頭にない」って、完全に有権者に足元見られちゃってますよ(苦笑)





以降、
各政党の大まかな支持層
サラリーマンが注目すべきはここ!







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Q: 「年齢で一律に区切るやり方は中高年のモチベーションにマイナスでは?」
→A:「終身雇用だからこそ、人為的な節目が必要とされるのです」



Q: 「転勤は悪」という風潮に一言いいたい」
→A:「断れる人は断り、断れない人は断れないというだけの話です」







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10年後、日本の雇用環境はどうなってるの?と思ったときに読む話

先日、SNSで10年ぶりに懐かしい声を見かけました。




10年前にピックアップしてあげたんですけど、懲りずに同じこと続けてるんですね(笑)

【参考リンク】日本の正社員をクビにするのは世界で一番難しい


【要約】本丸の「正社員の解雇の難しさ」指標を除外したデータのつまみぐいで日本の雇用規制が低いように見せかけてるだけ。


ちなみに現在このランキングからは問題の「解雇の難しさ」が既に抜けて告知期間とか補償額といった「解雇にかかわる諸手続きの手厚さ」に変わっているので解雇規制とは無関係です。
「解雇の難しさ」とは無関係なデータをわざわざ持ってきて弱者を出口の無い迷路に誘導し続けてるわけで、人間性って10年たっても成長しないもんですね(苦笑)※1


とはいえ、そういう声を信じたい人はどうぞ信じちゃってください。と言うのも個人がどう生きるかはあくまで自己責任だから。社会はもう「ポスト終身雇用」に向けて動き出しています。

「そうじゃない道がいい」と言う人はそっちに行けばいいんじゃないでしょうか。その代わり、この先何が起きても自己責任ですけどね。

というわけで、キャリアをどうデザインしていくか、いや、これからどう生きていくのかについて考えるいい機会だと思うので、今起きている変化や次のステージについてまとめておきましょう。


労働者も企業も、終身雇用・年功序列にNOを突き付けはじめた


「世界でほとんど唯一、日本の賃金だけが30年間ほぼ横ばいである」という事実は大きな反響を呼びましたが、その原因が終身雇用・年功序列制度にあるというコンセンサスはちょっと前から既に社会に織り込まれつつあります。

たとえば、東大・京大生の就職人気ランキングでは、最も選択の幅の広い6月段階ではほぼ毎年外資が上位を独占する状態が続いています。

【参考リンク】6月速報:東大京大23卒就活人気ランキング


(外資の方が選考が早いので)時期が下るにつれ日系大手が増えていくんですが、初期段階では優秀層はみんな外資を向いているということです。

当然ですね。彼らは終身雇用でリスクを低く抑えるよりもリターンを追求する方がトクだからです。

数年前にNTTの研究職の3割がGAFAに流出しているというインタビューが話題となりましたが、これも同じ構図ですね。「クビにしないから!定年まで雇ってあげるから!」というのは優秀層にとって「=低賃金で我慢」ということを意味し、メリットどころかデメリットでしかないわけです。※2

【参考リンク】NTT、対GAFAへ処遇改革


もちろん、それでも終身雇用Love!な人材はいっぱいやってきます。どんな人かと言うとこんな人達です。

「自分は稼げる自信ないんで終身雇用で十分です。やりたいことは特にありません」

はい、こういう人達だけでグローバルにやっていくのはどう考えても無理があります(苦笑)

ではどうするか。年功ではなく現在の働きに応じて処遇を払うわけです。働かない人の年功賃金は引き下げる一方で、出来る人には勤続年数関係なしで相応しい額を払うしかありません。

そう、それがまさにジョブ型というわけです。

経団連もジョブ型の必要性を明言し、既に多くの大手企業がジョブ型への移行を表明しています。

【参考リンク】経団連、ジョブ型雇用「検討必要」 春季交渉方針

今回の報告では、年功型賃金について「転職等の労働移動を抑制」「若年社員の早期離職の要因の1つ」と指摘したのも特徴だ。新卒一括採用、終身雇用など日本型雇用システムの見直しを一層加速させる必要があるとした。



要するに、選択肢のある若い世代と、彼らを取り込もうとする企業は、遅ればせながら終身雇用・年功序列という古い上着を脱ぎ捨てつつあるわけです。

10年前をジョブの時代ステージ1とするなら、筆者からすると今はもうステージ4か5くらいの感覚ですね。終身雇用バンザイ識者ももう完全に絶滅した感あります。

もう議論の中心は新たな世界=ジョブの価値観の中でいかに勝ち上がるか、どうそれを消化吸収していくかという点ですね。古い仕組みもしばらくは残るんでしょうけど、泥船といっていいでしょう。

さて、冒頭の「終身雇用は悪くない」派の人たちは、ちょっと冷静にこの10年間を振り返ってみてください。なにかいいことありました?たぶんいいことなんて何もなく、相対的にどんどん落ちていく一方じゃないでしょうか。

全労連系の主張でいうと、他には「内部留保で賃上げさせろ」とか「輸出還付金は大企業優遇なので召し上げろ」とかですか。はぁ。

まあなんというか、何年続けたところでなんにもいいこと無さそうですね。

この先10年も落ち続けるか。それとも新たな時代で勝負するか。一度しかない人生、そろそろ身の振り方を考える時期なんじゃないでしょうか。




※1「解雇の難しさ」は2008年時点で日本は加盟国中第一位で、ご存じの通りその後わが国で解雇規制緩和なんてされてないので、もしその後も指標があったならトップレベルの解雇困難さなのは変わらないと思われる。


※2 フォローしておくとGAFAの草刈り場になっているNTTは今でも国内トップレベルの新卒採用を維持できていると思われる。「ウチは人材流出なんて起きてないぞ」という会社は単に優秀層が採れてないだけだろう。




以降、
次のステージでは“脱・時間”がテーマに
10年後、日本はステージ10とステージ1の混在する社会へ







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Q: 「事務系は中途採用の方がマッチしているのでは?」
→A:「事務系はいずれ中途採用がメインになる気がします」



Q: 「20代で転職5社目は多すぎますか?」
→A:「多すぎるという会社はスルーしてOKでしょう」






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「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話


若者を殺すのは誰か?


7割は課長にさえなれません


世代間格差ってなんだ


たった1%の賃下げが99%を幸せにする


3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代


若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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