どうしてブラック企業から逃げた先もブラック企業ばかりなの?と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
非常に興味深い質問をいただいたので、今回はこれをテーマに考察したいと思います。

「転職するたびブラック企業ということが続いていて、就職前にブラック企業を見分ける秘訣があれば教えていただけないでしょうか」
(タイトルのみ、質問本文は後述)

確かに「あまりにも職場環境が悪いので転職したらもっとブラックな環境だった」という話はしょっちゅう耳にします。というか、むしろそういうケースの方が多いんじゃないかという気すらします。

なぜ人はブラック企業に引き寄せられてしまうのでしょうか。そしてそれを回避するにはなにをすべきなんでしょうか。いい機会なのでまとめておきましょう。


そもそもブラック企業とはなにか


ブラック企業から逃れるには、そもそもブラック企業が何なのかを知っておく必要があります。

というか筆者の印象だと「そもそも今の会社はブラック企業じゃないのにブラック企業だと思い込んでいる人」「そもそもブラック企業がなんなのかわかってないから結局同じような会社に転職して後悔する人」が半分くらいいるように見えますね。

そういえば数年前。ブラック企業というワードが流行ったときに、某キー局のプロデユーサーがこんなことを言っていましたね。

「いろいろとその手の本を読んだんですけど、うちってどう考えてもブラック企業なんですよね……」

業務を無制限でふられる、徹夜も珍しくないほど長時間残業、有給なんて親族の不幸以外で使った記憶がないetc……

確かにそこだけ見ればブラックな気もします。でも(業界的にだいぶ落ち目とはいえ)そのキー局は社員の平均年収1200万超で、大手広告代理店と並んで就職は難関です。「ブラックだろうがなんだろうが入れてくれ」という人は多いでしょう。

筆者が常々言っているように、残業や(異動・転勤といった)会社の権限の強さというのはすべて終身雇用の副産物です。人を雇うのではなく既存の従業員の残業や転勤で対応しようとするから。

だから、それをブラックというのなら日本企業すべてがブラック企業ということになってしまいます。「労働環境を理由に転職したけど似たようなものだった」という人の多くはこのパターンですね。

さて、以上のような話をするとたまに「でも終身雇用なんて大企業+αにしか存在しませんよ」と知ったようなことを言ってくる人がいます。

そういう人に逆に聞きたいんですけど、日本って企業規模で適用される法律って変わるんですかね(苦笑)

まあ判例は多少変わるんでしょうけど、基本的にはマンモス上場企業も駅前の雑居ビルに入ってる中小企業も労働については同じルールなんですよ。

手続きを踏めば青天井で残業させられるし転勤も命じられるし、会社の都合で有給の取得時期も変えられるわけです。ハナから終身雇用なんて守る気ない会社でも。

あ、ちなみに金銭解雇なんかもそうですね。早期退職では2年分の給料が上乗せされるのが当たり前の大企業労組が反対するもんだからいつまでたっても金銭解雇ルールが定められない→結果、中小企業の中には「きみ今月でクビだから」がわりとよくあります。

たとえば半年分の給与支払いで解雇OKってルールにするだけでも世の中小企業の労働者はずいぶん助かると思うんですけどね。

よく「我々を使ってもらえれば金とれるから解雇は可能。金銭解雇ルールなんて必要ない」みたいなことを言う労働弁護士がいますけど組合不在で個人で法廷闘争する金と時間のある中小企業の従業員ってどんな人なんでしょうね。よっぽど実家が太くて暇な人なんでしょうね(苦笑)

要するに、“終身雇用”という飴を与える代わりにいろいろなデメリットもくれる主に大企業を中心とした企業群と、実際には終身雇用なんてないのに大企業向けルールにただ乗りしてデメリットだけ押し付ける企業群が存在しているわけです。

後者こそ本当の意味のブラック企業だというのが筆者のスタンスです。






以降、
まず「自分は何を手に入れたいのか」を見極めるべし
ブラック企業を見分けるポイント





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Q:「働き方改革は自治体にも波及するでしょうか?」
→「A:「国会対応ばかりで官僚の働き方改革って誰も言及していませんね(苦笑)」






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東大京大生ってどうしてそんなにコンサルになりたがってるの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、こんなニュースがちょっとした話題になりました。

【参考リンク】【3月速報:東大京大 22卒就活人気ランキング】コンサル独占だったTOP10に異変あり?3月以降の「本命」企業はどこだ?


東大・京大生の就職希望ランキングで上位5社に日本企業が3社も食い込んだゾ!というものなんですが、逆に言うとそんな程度の話でニュースになるくらい、近年は優秀層は日本の大手企業には目もくれない状況が続いていたということです。

ちなみに上記記事も、あくまでもエントリーが一巡した中間段階での一時的現象にすぎないと指摘しています。外資コンサル人気は不変といっていいでしょう。

ここから9カ月がたち、もうコンサルはエントリーを終え、一度スコープから外して別の業界を見る段階に入った。それがランクダウンの要因だろう。大学受験に例えるなら「外資コンサル=前期日程」、「日系大手=後期日程」のようなものだ。


ちなみに前期日程のランキングはこちらになります。

【参考リンク】【6月速報:東大京大 22卒就活人気ランキング】コロナ直撃の採用前線、人気企業は変わったのか?

なぜ優秀層は外資系コンサルを目指すのでしょうか。そして、日本企業が外資に負けずに優秀層を取り込むにはなにをすべきなんでしょうか。いい機会なのでまとめておきましょう。


エリートが恐れていること


近年、東大や京大といった優秀層の学生に会うと、彼らが具体的に日本企業内のキャリアパスの課題を驚くほど具体的に理解していることに驚かされます。彼らの多くは日本企業に入社して、以下のような状況に直面することを真剣に危惧していますね。

・まったく専門性のない人材になってしまうこと

メンバーシップ型雇用では配属先は選べません。有望な成長事業の戦力として配属される人もいれば、赤字事業の火消し役を期待されて投入される人材もいます。

当然ながら10年たったら転職市場でウン倍の価値が生じることでしょう。

最悪なのは、会社都合であちこちの事業部を経験させられ、35歳を過ぎるころには「社内政治には詳しいけど転職サイトに登録したら『未経験者歓迎!』みたいな案件しか回ってこない人材」になることですね。

・会社にしがみつくしかない人材になってしまうこと

転職市場での市場価値の低い人材になってしまうと、もはや会社にしがみつくしか生きる道はありません。

そういう人材はある意味、会社にとってはとても好都合です。なり手のいない職を任せたり、田舎の事業所に転勤させたりとやりたい放題ですから。若手なら即転職するような仕事でも、しがみつくしかない中高年は歯を食いしばって勤めてくれます。

実は日本型雇用ってそういう従順なゼネラリストを育成するという狙いもあるんですね。

・非エリートと横並びで買い叩かれるしかない立場になること

そして、昔も今も、エリートにとっては我慢ならないことがあります。それは『横並び一律の初任給』というやつです。

なんで聞いたことない大学のヤツと同じ給料からスタートするの?自分はこれだけ勉強してあんなこともこんなことも出来るし、それは面接でも高評価されたはずなのになにこの給料水準。おかしいでしょ。

と、頭のいい人は腹の底ではみんな思ってますね(苦笑)

で、それに対して日本企業の人事は「みんなそうだったんだから。でも20年30年勤めあげれば優秀者は偉くなってるものだから」と説得するしかないわけです。

20年前ならともかく、今どき優秀層でそんな説明に引っかかる人材はまずいないでしょう。東大出身でありながら専門性を身に着けられず転職もできず、結果的に非エリートと一緒に会社に買い叩かれている先輩はそこら中の大企業にあふれています。

という具合に、もはや経営の安定した大手日本企業に総合職として就職することは、エリート層からすればリスクでしかないんですね。

別にコンサルという職種そのものがエリートを惹きつけているのではなく、上記のようなリスクが相対的に少ないことがエリートに選ばれる理由だと筆者は考えています。

リーマンショック前にエリート層の間で外銀就職が大流行しましたが、あれと同じ構図ですね。

フォローしておくと、筆者は今の東大・京大生が90年代の自分たちの世代とそう大きく違うとは考えていません。筆者は就職氷河期真っただ中の90年代後半に就活しましたが、当時の東大生を突き動かしていたのは「せっかく手にした学歴に見合うリターンを得られるのか」といった焦燥感でした。

処方箋が違うだけで、本質的な部分は良くも悪くも変わってはいないなというのが筆者の印象ですね。

あ、そういえばこの手の話をするときまって「でも新卒一括採用はスキルの無い学生をゼロから育てられる世界に誇るべき優れたシステムだ」みたいな反論が来るんですけど。

はっきり言ってアホですね。こういうルールって金を出す企業と企業の欲しいエリートが決めるものなんです。どっちにも入れない外野なんて知ったこっちゃないんですよ。

文句があるならいっぱい勉強して企業の欲しがるエリートになってくださいね。話はそれからです。






以降、
大企業採用で起きているリアル
企業も学生も発想の転換を!





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Q:「副業はいつから始めるべきでしょうか?」
→A:「大切なのは年齢ではなくその先のビジョンでしょう」



Q:「ジョブ型と縦割りの違いとは?」
→A:「得点を奪い合うか、責任を押し付けあうかの違いです」






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「ジョブ型で上司に評価されるのが怖い」と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。日本企業でのジョブ型シフトが静かに、しかし着実に進んでいます。そんな中、現場からはいくつかの課題も指摘されているようです。


【参考リンク】ジョブ型人事、6割が「上司の評価力」に不安


日本企業がジョブ型にシフトする際に乗り越えるべきハードルとは何か。どうすればそれを克服できるのか。いい機会なのでまとめておきましょう。


出来る出来ないじゃなくてもうとにかくジョブ型にするしかないワケ


というかこういう話をするたびに「そもそもジョブ型にする必要あるんですか」とか「日本企業にジョブ型は合わないと思います」とかいう人がわいてくるんですが、結論から言います。

出来る出来ないじゃなくて、生き残りたかったらやるしかないです。断言しますけど、今ジョブ型にシフトしない会社は10年後には淘汰されていると思います。理由は以下の3つです。


・リモートワークと働き方改革に必須だから

以前から言っているように、リモートワークの実施には事前の業務範囲の明確な切り分けと、それを自分で考えて遂行する裁量の委譲が不可欠です。

そして、それはそのまんま働き方改革の本丸でもあります。個人のミッションが明確になることで、自分の頭で考える、無駄を省くという“当たり前”のアクションが機能するようになるからですね。

一回目の緊急事態宣言ではなし崩し的にリモートワーク突入したけど、やってみたらその大いなる可能性に気づいた、というビジネスパーソンは少なくないと思います。

ちなみに経団連調査では、リモートワークにともない職務の明確化を実施した企業は30.3%、明確化を検討中とした企業は33.6%となっています。6割の企業はその重要性に気付いているということになります。

【参考リンク】職務・時間・場所 長期雇用、消える3つの「無限定」

あ、ちなみにリモートワークで生産性が下がったとかぬかしてる会社はジョブ化すっとばしてzoomとかで社員つないでオンラインタコ部屋やってるだけですから。コロナ完全収束まで何年かかるかわからないのにずっとそんな感じでチンタラやるんですかね(苦笑)


・オッサンに頑張らせるために必須だから

40代以降で幹部候補選抜の終わった(ヒラか係長とかで頭打ちになった)過半数の社員は、その後の長いサラリーマン生活を消化試合モードで過ごすことになります。

「65歳まではなんとかできるが、70歳までそんな連中の面倒なんて見られないよ」と思っている経営者は少なくないでしょう。

ではどうするか。勤続年数ではなく担当する業務で処遇を決めるしかありません。これなら誰にでも何歳からでもチャンスがあるわけで、理論上は消化試合など存在しないことになります。


・優秀者を囲い込むために必須だから

20年位前まではメチャクチャ優秀な人材に対しても「みんな一律の初任給だから。他の会社もみんなそうだし先輩方もそうやってきたんだから」と言えばたいていは納得してくれたもんですね(外国人除く)。

でも最近は日本人であっても「そういうもんだから」は通じません。新人離れした高給や希望部署への配属約束など、優秀であればあるほど脱・新卒一括採用を公然と要求し、受け入れない企業は相手にもしません。

そうそう、つい先日お堅い会社の代表みたいな某銀行も新卒特別枠の設置をリリースしましたが、喉から手が出るほどに欲しい人材から見向きもされない状況に危機感を抱いた結果でしょう。

【参考リンク】三菱UFJ銀行、新卒年収1000万円も デジタル人材を確保

毎年役割に応じて見直しをするということなのでこれも実質的なジョブ型ですね。

というわけで出来る出来ないじゃなく、もう日本企業はジョブ化する以外に生き残る道はないわけです。


「と言われてもぴんとこないよ」という人はちょっと想像してみてください。

テレワークが普及し満員電車から解放される人が続出する一方で、あなたの会社は「始業30分前に出勤する」という暗黙のルールがずっと維持されたまま。

早く仕事を終えてしまうと追加で仕事を振られるので、必ず仕事は納期ぎりぎりまで伸ばすことが社内では常態化しています。

担当範囲があいまいな分、評価は実際の働きぶりを管理職が目で見て判断する以外にありません。「働きぶりを目で見る」ということは残業時間も重要な指標となるということを意味します。あなたの職場では「総合職は20時までは席にいること」「上司が席にいる間は退社してはならない」という暗黙のルールも存在します。

一方、社内の半分以上の社員は、すでに出世の芽がなくなった45歳以上の人達です。彼らのほとんどは年金支給開始まで腰かけているだけなので、言われたことは最低限やりますが、自分から何か挑戦したり新しいことを始めるわけではありません。

そして毎年入社してくる新人はどうにも意欲も元気もなく、飲みに連れて行ってなぜうちに入社したのか聞いてみると平然とこんなことをぬかします。

「色々受けて内定くれた中で一番大きい会社にしました。あ、特にやりたいことはありません」


そういう会社の明るい未来を想像しろという方が無理筋でしょう。「今の自分の会社そのものだ!」という人はせめて個人で出来る備えはしておきましょう。





以降、
ジョブ型の課題はそっくりそのまま“日本型雇用の盲点”である
ざっくり見えてきた日本式ジョブ型






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Q:「週2日だけリモートワークなんですが正直いって微妙です」
→A:「最初に面倒なことにけりをつけておくか、だらだら引きずるのかの差ですね」



Q:「管理職の人事権とはいったい何でしょうか?」
→A:「マネジメントしなくても回るよう制度設計されています」




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朝日新聞を自腹で購読しない朝日新聞社員ってどうなるの?と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。朝日新聞社が、福利厚生の一環としてこれまで負担してきた社員の新聞購読料の見直しを検討中との報道がありました。

【参考リンク】朝日新聞が赤字で「社員の購読を自腹化」の衝撃

新聞業というのはとりわけ構造的な不況業種なのでやれることはなんでもやろうというスタンスも理解できますが、Googleがビュッフェ付き社員食堂を無料で運営している話なんかと比べると斜陽感がハンパないですね。

【参考リンク】【豪華ビュッフェ】Googleの社員食堂で食べ放題無料ランチしてきました!

とはいえ、実はこうしたせこいコストカットというのは日本企業の十八番でもあります。いい機会なのでまとめておきましょう。


せこく削るのが日本型


一般的に、日本企業は大胆な事業見直しや整理縮小が大の苦手です。雇用を守らないといけないし賃下げも高いハードルがあるためですね。

そこで賞与や福利厚生費といった手の付けやすいところからちびちび削っていくことになります。一般的なのはタクシーチケットの廃止、残業、出張制限などですね。変わったところでは「廊下の蛍光灯を間引きする」なんて会社もありましたね。

一本数百円の蛍光灯間引いて何がしたいの?と普通は疑問に思うでしょうけど、とりあえず追い込まれた日本企業の管理部門はあらゆるコストをカットしようとするものなんですね。

ではその効果は?当たり前の話ですが、大胆な事業見直しやリソースの集中と違い、経費削っただけで何か新しい付加価値が生まれることはありません。削った分の金額は余裕ができますが、長期的な業績の下降トレンドそのものは不変のままです。

まあ要するに時間稼ぎですね。朝日新聞社は「有料で購読している一般読者の視点に立って朝日新聞の価値を考えるきっかけに」と苦しい言い訳してますが、筆者はこれまで会社に自腹切らされて覚醒→レベルアップしたオジサンに一度も会ったことがありません。

ただし、個人的に感心した部分もあります。それは「社員に自腹で購読させ、代金は会社が給与から天引きする」という仰天プランです。

一応「いやなら会社に申告すれば断れるので強制ではないし、査定の参考にはしない」というのが会社スタンスです。前半はその通りでしょうけど、後半はどうでしょうね(苦笑)

経営側からすれば「社員のうち、誰がやる気があって誰にやる気がないか」がはっきり把握できるわけです。査定や昇進の指標の一つとして利用するなという方が無理だと思いますね。

これ考えた人、相当人事のことがわかってると思いますね。性格も悪いでしょうけど(苦笑)

というわけで、規模的にはよくあるケチケチ作戦の一種なんですが「出世とかもうどうでもいいっすわ」的な社員をあぶりだせる便利なツールを手にした会社が今後どういう手を打ってくるか、といった視点で見れば同社の今後に要注目でしょう。




以降、
自腹購読は格好の踏み絵
経費をケチる前にゴールポストを作れ







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Q:「午前中だけリモートワークというのはアリでしょうか?」

→A:「現状の枠組みの中で行うならベストでしょう」



Q:「家庭の事情で転勤を断ると人事に影響ってありますか?」
→A:「だいぶ減ってはいるんですが……」







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森会長の発言ってどうしてここまで叩かれてるの?と思った時に読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。東京五輪組織委員会の森会長の女性をめぐる発言が差別的であるとして大バッシングを受け、辞任に追い込まれました。

ちなみに森さんの元発言を読みたいという人はコチラから。

【参考リンク】森氏 3日の発言「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」

筆者はその是非は問いませんけど、あまりにも日本中の氏へのバッシングが滑稽すぎて、途中からゲラゲラ笑いながら見てましたね。

なんて書くと「不謹慎だろ!」と怒られそうな気もしますけど、たぶん筆者と同じ視点に立てばみんな笑いだすと思います。というわけで、今回は筆者が“森バッシング”で笑った理由をまとめておきましょう。


多くの日本人は「森さん以上に無自覚で、森さん以上に性差別を支持」

昨年、世界経済フォーラムが毎年発表している男女格差指数ランキングで日本が過去最低順位を更新したことがちょっとした話題となりました。

【参考リンク】ジェンダーギャップ指数ランキング2020

アラブ首長国連邦とクウェートに挟まれての堂々たる121位です。むろん先進国中ぶっちぎりの最下位です。とりあえず大前提として、日本は世界に冠たる性差別大国なんですね。

指数を構成する要素を詳しく見てみると、経済115位、政治144位が大きく足を引っ張っていることがわかります。

その理由ですが、やはり終身雇用制度が、女性がベースとなるキャリアを積むことを阻み、結果として賃金格差や政治家へのキャリアを閉ざしているというのが大きいです。筆者はずっと以前から言ってきましたが、終身雇用制度というのは強烈な男尊女卑が根底にある仕組みなんですよ(その理由は後述します)。

たとえば多くの大企業ではコース別採用なるものが存在し、幹部候補である総合職と、事務一般で昇給も出世も限られる一般職なるコースが存在しています。

以前はそんなものはなかったんですが「同じ仕事、勤続年数なのに男性従業員よりはるかに低い賃金なのはおかしい」という女性従業員の訴えが認められたため、企業側が予防措置的に導入したものです。

「男女格差ではありません。コースごとに処遇が異なるだけです」という言い訳のためですね。でも総合職はそのほとんどが男性であり、一般職は100%女性というのは社会人なら誰でも知っている事実です。

外資しか知らない人なんかにコース別採用の話をするとたいていびっくりされますね。「それ一発アウトでしょ。ていうかそもそもなんでそんなことする必要あるの?」みたいな。

というか、そういう制度を黙認しつつ組織の一員としてお給料もらってる時点で、もう森さんにどうこう言う資格なんてない気もしますけどね(苦笑)

ちなみに総合職における女性の割合ですが、90年代は新卒100人採ったうちの2,3人くらいでしたね。その2,3人も大口取引先の娘さんみたいな縁故なので実質ほぼゼロと言っていいでしょう。

近年は2割を超えるまでに増えてはいますが(コース別雇用管理制度の実施・指導状況2014)、それも企業が多様化したというよりあまりにも新卒が少なすぎるから仕方なく増やしている印象です。

最終面接で男女で競ったら普通の人事ならまず男子を優先するだろうし、入社後の扱いにも見えない差はあるでしょう。中身変わってないんだから。

そうそう、東京医大が入試で女子を間引きしていたことが波紋を呼びましたけど、同じようなことは日本中の企業が採用でやっているわけです。21世紀の今でも。

さて、そんな終身雇用制度ですが、今回の件で森さんを叩きまくっていたリベラル系のメディアほど、なぜか終身雇用を信奉する傾向があるんですね。社説でその美徳を説くだけではなく、自らの組織でも実践し、きっちり女性をメインストリームから排除して見せてくれています。

はっきり言うと、筆者はIT系や電機なんかよりも、マスコミの方がよっぽど男社会だと感じています。

【参考リンク】「森会長だけの問題じゃない」マスコミで働く女性たちの危機感


筆者は森さんの発言の意図はよくわかりません。全文読んだけどグダグダすぎて理解不能。でも仮に毎日新聞の報じたように「女性は話が長いからダメ」みたいな意図だったとして。

話が長い云々以前に、採用時点で門前払いくらわせている新聞社に石を投げる資格あるんですかね。いや実際は投げまくってたわけですが。ね?もう笑うしかないでしょ?

むしろ森発言を受けて「森さんよくぞ言ってくれました!女に一人前の仕事は任せられない。女は家庭に入って男を支えるべき。男尊女卑は日本の文化!」くらいのエールを社説で書いた方が言行一致でスッキリしたと思うんですけど。

あ、「終身雇用が男尊女卑なんておまえが言ってるだけだろ!」という反論も予想されるので、最後に日本を代表するフェミニストの有名な発言を紹介しておきますね。筆者に文句がある人はまずはこの人にカチコミかけてください。

「専業主婦は社畜の専属家政婦である」
(上野千鶴子 東京大学名誉教授)





以降、
日本企業が女性を排除する論理
男女間格差が大きいということはそれだけ社会が非効率だということ






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Q:「新興企業であっても評価制度は必要では?」
→A:「交渉の土台として、やはりあった方がいいでしょう」






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たった1%の賃下げが99%を幸せにする


3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代


若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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